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清水の舞台からの実況中継盤

☑『In C – 60th バースデー・フルムーン・セレブレーション・アット・清水寺』/テリー・ライリー


*disc sibasi
発売中 3,000円

2024年7月に清水寺の本堂舞台で開催されたテリー・ライリーと約50名の音楽家の奉納演奏会。その約70分のライブ盤。89歳の御大により指揮されたミニマル・ミュージックの記念碑的名曲「In C」が、ゴーンと鳴る鐘の音から始まる。満月の空に響いた合奏の起伏やうねりに耳を委ねていると自分も演奏者として大きな船に乗っている心地に。場の厳かな空気、加えて演奏に呼応した? セミの鳴き声まで収録された、あるがままで豊潤な実況中継盤だ。

これが好きなあなたには……
☑『Shri Camel』(1980年)/テリー・ライリー

清水寺のライブ盤は京都・岡崎のカフェ[しばし]運営のレーベル第一弾。[しばし]では2024年3月にライリー本人のラーガ教室も開催、ということで本作を。オルガンによるインドのラーガ・スタイル音楽。めくるめく曼荼羅的ミニマル作品。

文/中村悠介
編集者。京都市在住。観に行ったライブがライブ盤になるのは初。ちょうどジャケット写真の位置から観ていたので感動もひとしお。

日常から解放してくれる、革新的なジャズの入り口

☑『The Way Out of Easy』/Jef f Parker, ETA IVtet


*rings
発売中 3,300円

ジャズギタリスト、ジェフ・パーカー率いる実力派メンバーによるカルテット。L.A.のETAというレストランにて2016年に結成されて以来、レストランの閉店となる2023年末まで毎週ライブを行っていた。スタンダードジャズの演奏とは異なるアンビエント、レゲエなどあらゆるジャンルのエッセンスを含んだアプローチは、新感覚な音の扉を次々と開いてゆく。ミニマルな展開からノンストップで繰り広げられるセッションに耳を傾けていると、日常から徐々に解き放たれていくような心地よさがある。

これが好きなあなたには……
☑『The Cheerful Insanity of Giles Giles & Fripp』(1968年)/Giles, Giles and Fripp

ジェフ・パーカーお気に入りのギタリストであり、King Crimsonのリーダーでもあるロバート・フリップがかつて結成していたバンド。クラシックでありながら暴力的な勢いをはらんだギターテクと、緻密な構成で練られた曲たちは息をのむほど素晴らしい。

文/Tokiyo Ooto
大阪を拠点に活動するシンガーソングライター/ギタリスト。一日の過ぎる速さに追いつけなくなっています。初詣行くの忘れそう。

もはや名人芸。極上アレンジ満載の楽曲たち

☑『FIRST LOVE』/んoon


*FLAKE SOUNDS
発売中 3,000円

待望の“んoon”(ふーん)の1stアルバムは、彼らの豊かなアレンジ力が最大限に引き出された作品。特にラッパー・ACE COOLが参加した「Forest」は小気味良く刻むフロウにベースソロをぶつけるなど、バンドアンサンブルとラップが競い合うような駆け引きが絶妙。そして忘れてはならないのが、バンドとしては珍しいハープの存在。前面に立たせすぎず、程よくサウンドに織り込むのは彼らにしかできない技。緻密に構築されたサウンドが連れ出す音楽の旅を堪能しよう。

これが好きなあなたには……
☑『Aja』(1977年)/STEELY DAN

黒人音楽を下地にしたポップスの元祖とも言えるジャンル、AORの金字塔的な作品。甘美なメロディーとは裏腹に意表を突くようなアレンジが多く、『FIRST LOVE』に通じるところがある。展開が変わるうちにどんどん引き込まれる表題曲「Aja」は必聴。

文/北川航成
SAVVY編集部スタッフ。バンド・穴熊のギター担当。寒くなるとそば屋をやっている祖父母の家のそばが恋しくなりますね。

※この記事は2025年2月号からの転載です。記事に掲載の情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認ください。
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SAVVY2月号『関西美術館さんぽ』
発売日:2024年12月21日(土)定 価:900円(税込)