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ニューヨークから縁もゆかりもない京都に引っ越した
“よそさん”ライターが見つける、京都の発見あれこれ。

“気”がむんむんな風水スポットへ。

 京都は、最強のパワースポット。そう聞いたのは、10年以上前に某風水師を取材したときだった。ですよねぇ、寺社仏閣が多いし。なんて知ったかぶって話を合わせた私はそのあと、それが風水学的に裏付けされていることを知らされ、目を丸くした。

 当時聞いた話は、ざっとこんな感じだ。風水の世界では、標高1000m近くの山と連なる山脈が、川の流れる平地をぐるりと抱えている地形を山環水抱(さんかんすいほう)と呼ぶ。山環水抱の地には良い気が流れていて(気の流れは龍にたとえられ、龍脈と呼ばれる)、最強のパワーエリアとされる。とてもまれなその地形条件を満たしているのが、ずばり京都。なかでも、とくに気がむんむんな場所が市内にいくつかあって、それらを訪ねると、悩みごとが解消されたり、道が開けたり、人生が好転するという。

 そんな当時の取材を思い出した私は、教えてもらったスポットに出かけてみることにした。まずは二条城近くにある[神泉苑]。かつて貴族が船遊びに興じた雅な苑は、風水では龍の水飲み場と考えられ、良好な気の宝庫。邪気もすっきり流せるとか。苑内をぐるりと巡り、朱色の太鼓橋を渡りながら、空を仰ぎ見、池を覗きこめば、あぁ平和……。

[神泉苑]の橋は願いを叶えてくれるスポットとしても有名。

 心なしか足取りが軽くなったところで、続いて千本丸太町の交差点へ向かった。平安京の大極殿跡である一帯は、風水師いわく龍脈のど真ん中。交差点内で北に向かって両手を広げて立てば、気の洪水をぶわっと浴びられるらしい。って、さすがに路上でひとり仁王立ちは無理……。小心者の私は、体を北側にちらちらっと向けながら、蟹歩きみたいに交差点を渡った。


気の洪水を浴びに千本丸太町の交差点へ。ちなみに風水師は柑橘の匂いなどで気の流れを感じるそう。

 別の日は「めちゃくちゃ気が濃い」と教わった[鞍馬寺]を訪ねた。いまから1200年以上前の奈良時代、霊山である鞍馬山に開創された寺。立派な山門をくぐり、くねくね登り坂の参道をひたすら歩いた先に(途中、ケーブルカーでショートカットしても良し)、どーんと開けた境内と本殿が現れる。ぐるりと見渡せば、美しい山並みの絶景。深呼吸するだけで浄化された気分になるけれど、いやいや、まだまだ。肝心のスポットは、境内の地面にある。三角形の石などを組み合わせ、星曼荼羅を模して作られたという巨大な四角い盤、金剛床(こんごうしょう)だ。風水師いわく、そこは龍脈がこんこんと湧き出す地点。いざ気をチャージするべく勇んで中心に立ってみる。むむむ。なにかを感じるような、感じないような……。


その昔、金星(!)から降り立った護法魔王尊が祀られている、摩訶不思議な[鞍馬寺]。

 とりあえず、壮大な眺めや神聖な空気に癒やされたことは確かなパワースポット巡り。想定外の効き目がでたのは、翌朝のことだった。なんと突然、思いも寄らない嬉しい仕事の依頼が舞い込んだのである。きっと気を充電したからに違いない! 小躍りした私は、定期的にパワースポットに通うことを心に決めた。

著者

Nihei Aya

エッセイスト。9年のN.Y.滞在を経て、2021年にあこがれの京都へ。近著に『ニューヨークおいしいものだけ』(筑摩書房)、『ニューヨークでしたい100のこと』(自由国民社)。7月にエッセイ本『ニューヨーク、雨でも傘をさすのは私の自由』(大和書房)を刊行。

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※この記事は2023年1月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

※最新話(vol.14)は、SAVVY2月号(12/23発売)に掲載予定。過去記事は、ハッシュタグ #仁平綾の京都暮らし をクリック。ぜひチェックしてみてくださいね。

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