今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!
文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、割とジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶を嗜むこと。
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。
☑松竹創業百三十周年『流白浪燦星(ルパン三世)』
愛之助がルパン三世に! 痛快な新作歌舞伎が関西初上陸
美女にはめっぽう弱いけれど、狙った獲物は必ず盗み出す。日本人の誰もが知る怪盗・ルパン三世が、なんと歌舞伎作品になって登場!ルパン三世とその仲間たちが、安土桃山時代の日本にいたら……という設定で、2023年に東京で初演された新作歌舞伎が、今回初めて関西で上演される。
国宝級のお宝「卑弥呼の金印」をターゲットにした、流白浪燦星(ルパン三世)と相棒・次元大介。同じお宝を狙うライバル・石川五右衛門(石川五ェ門)と争ったり、流白浪を執念深く追いかける銭形刑部(銭形警部)をかわしながら金印を手に入れようとするが、そのお宝には世界を揺るがす秘密が隠されていた……。流白浪を演じるのは、TVドラマや映画でも活躍する片岡愛之助。初演では、五右衛門と良い仲になる姫君を演じた尾上右近が、今回は五右衛門役を務めるのも見どころだ。「『ルパン三世』は義理人情の世界で、実は歌舞伎にしやすい題材。アニメ版をだいぶ踏襲していますが、すごく歌舞伎作品になっています」と、愛之助は自信を見せる。各キャラクターの衣装やおなじみのテーマソングなどが、見事に歌舞伎調にアレンジされていることに、原作ファンはうなるはず。観客の心も、鮮やかに盗まれてしまうこと間違いなしだ。
松竹創業百三十周年『流白浪燦星(ルパン三世)』
日程/9月2日(火)~8日(月)、10日(水)~15日(月・祝)、17日(水)~26日(金)
場所/南座
原作/モンキー・パンチ著『ルパン三世』
脚本・演出/戸部和久
出演/片岡愛之助、尾上右近、市川笑三郎、市川笑也、市川中車 ほか
料金/1等席15,500円(全席指定) ほか
公式サイト/歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」
問い合わせ/075-561-1155(南座)
☑城崎発演劇列車vol.5
JR西日本観光列車「うみやまむすび」 × 芸術文化観光専門職大学
『うみやまむすび夢十夜 こんなゆめを見た!!の旅』
兵庫県北部の演劇祭、
城崎発の人気演劇列車へ
城崎温泉や神鍋高原などの観光地を有する、兵庫県豊岡市とその周辺一帯が会場となる演劇フェス「豊岡演劇祭2025」。今年も9月11日(木)~23日(火・祝)に開催される演劇祭の見どころは、観光列車「うみやまむすび」を使った名物企画。夏目漱石の短編集『夢十夜』をベースに、漱石が見た夢の風景を列車に乗って、車内やホームで体感するという仕掛け。キュートで切ない物語だけでなく、沿線の美しい景色も楽しめる一石二鳥の作品だ。『山月記』を一人芝居にした小菅紘史×中川裕貴(9月15日)、海岸で音楽劇を上演するスリーピルバーグス(9月19日~21日)、日本・台湾合同制作で奇妙な銭湯の一夜を描く王 嘉明×タニノクロウ(9月21日・22日)の公演などもお薦め。
城崎発演劇列車vol.5
JR西日本観光列車「うみやまむすび」 × 芸術文化観光専門職大学
『うみやまむすび夢十夜 こんなゆめを見た!!の旅』
日程/9月16日(火)~18日(木)
場所/JR山陰本線(城崎温泉駅、佐津駅、香住駅、餘部駅)
作/田上 豊、永井楓華 総合演出/田上 豊
出演/中林 舞、F.O.ペレイラ宏一朗、村井まどか,芸術文化観光専門職大学・学生
料金/5,500円(全席指定)
公式サイト/「豊岡演劇祭2025」
問い合わせ/0796-34-9525(フェスティバルセンター)
☑『STOMP ストンプ』
あらゆる日用品を楽器にする、
驚異のパフォーマンス
床を磨くデッキブラシや丸めたゴミ袋などから発せられる音が、いつの間にかリズムを刻み、エネルギッシュなパフォーマンスへと突入していく。1991年にイギリスで誕生して以来、世界中にセンセーションを巻き起こした伝説のステージが2年ぶりに日本に、そして大阪には22年ぶりにやってくる。パフォーマーたちは言葉を使わずにコミュニケーションを交わし、時には笑いを取りながら、ありとあらゆる物を「楽器」へと変貌させていく。100分間ノンストップで、爽快かつダイナミックなリズムの波に乗せられっぱなしとなる舞台。見た後は日常の中で聞こえる音が全て音楽のように感じられるという、楽しい日々を過ごせそう。
『STOMP ストンプ』
日程/9月6日(土)・7日(日)
場所/オリックス劇場
出演/STOMP ストンプ カンパニー
料金/S席10,800円(全席指定) ほか
公式サイト/「ストンプ2025」
問い合わせ/0570-200-888(キョードーインフォメーション)
☑パルコ・プロデュース2025『ヴォイツェック』
殺人犯の心理に迫る名作戯曲に、
森田 剛が登場!
完売注意につき前売券を要CHECK!!
人間の暗部、特に追い詰められた者の内面を舞台上で繊細に表現し、多くの演出家からコラボを望まれる俳優の一人・森田 剛が、心神喪失者の殺人をいち早く題材にした名作戯曲に挑戦する。今回はイギリスで大きな評判を呼んだ、ジャック・ソーンの翻案を使用。物語の舞台を1980年代のベルリンに移し、冷戦当時の緊迫した社会・政治状況を絡めながら、兵士・ヴォイツェックが恋人・マリーを殺すに至った心象を描いていく。ただの異常者ではなく、混沌とした現代を生きる私たちの鏡のような存在となるヴォイツェックの誕生に期待したい。マリー役で、さまざまなジャンルの舞台で存在感を発揮している伊原六花が出演。
パルコ・プロデュース2025『ヴォイツェック』
日程/10月23日(木)~26日(日)
場所/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
原作/ゲオルク・ビューヒナー作『Woyzeck』 翻案/ジャック・ソーン 上演台本・演出/小川絵梨子
出演/森田 剛、伊原六花、伊勢佳世、浜田信也、冨家ノリマサ、栗原英雄 ほか
料金/12,500円(全席指定) ※9月14日(日) 発売
公式サイト/キョードー大阪 オフィシャルサイト
問い合わせ/0570-200-888(キョードーインフォメーション)
☑ミュージカル『ある男』
浦井健治×小池徹平が挑む、
名作小説のミュージカル
「第70回読売文学賞」を受賞した平野啓一郎の同名小説を、世界で初めてミュージカル化。不慮の事故で夫を亡くした女性から「夫だと思っていた人は、夫の名前と人生をかたった別人だった」という相談を受けた城戸。事件を調査するうちに、彼自身の人生にも思わぬ変化が生じていく……。城戸役には浦井健治、Xと呼ばれる「ある男」役には小池徹平など、日本を代表するミュージカル俳優たちが集結。登場人物たちの本音や深層心理を、歌にすることでよりストレートに届けられるのが、ミュージカルの強み。先の読めないストーリーに引きつけられながら、「人間って何?」と考えさせられる世界に入り込むはず。
ミュージカル『ある男』
日程/9月12日(金)~15日(月・祝)
場所/SkyシアターMBS
原作/平野啓一郎『ある男』(文春文庫、コルク)
音楽/ジェイソン・ハウランド 脚本・演出/瀬戸山美咲 出演/浦井健治、小池徹平、濱田めぐみ、ソニン、鹿賀丈史 ほか
料金/一般15,000円(全席指定)※土・日・祝は+500円 ほか
公式サイト/梅田芸術劇場
問い合わせ/0570-077-039(梅田芸術劇場)
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。
※この記事は2025年10月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。