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わたしの“カフェ”の話。

店主たちの“好き”を知れば、カフェがもっと好きになれる。
いま、一番行きたいお店の店主たちに、深くお話を聞いてみました。
『すてきなカフェを作ってくれてありがとう!』、そう言いたくなります。

chapter.04

[喫茶 月森]と岡上清香さん

「ここで過ごす時間を求める人のために」

待つ時間を店の個性に変えた、ホットケーキの存在

今春、自身の転居を機に六甲で15年続けた店を移した岡上清香さん。「長く続けるなら自分が暮らす街が良いと思って。場所が違ってもやることは一緒」と、おなじみのバイエルの調べが響く店内は、淡々と、でも穏やかな空気に満たされている。[月森]といえば名物のホットケーキ。

ホットケーキ1枚500円、2枚900円。サクッと香ばしい表面と弾むような生地の食感のコントラストは“月森オリジナル”。しっとりと溶ける奥ゆかしい甘みが染み入る逸品。

ムラのない焼き目とふっくらした厚みは、生地を作り置きせず、注文のたびに作るからこそ。移転後も変わらぬ人気ぶりだが、「実は、ホットケーキをやめようと思ったこともあって」と岡上さん。改良を重ねた今でも、できがりまでは大体60分。一時は2、3時間待ちになることもあり心苦しく思ったことも。それでも、いつしかこの時間さえも受け入れてくれるお客さんが増えたこともあって、前向きに捉えるようになったとか。「待っていただく分、ここで過ごす時間を必要とする人にゆっくりしてもらおう」。期せずして、店の在り方を気付かせてくれたホットケーキ。移転後は席の予約制を始め、自分のペースで楽しめるようにもなった。

「この鉄板はこのお店になくてはならないものです」と、岡上さん。

喫茶店で過ごす時間は、日常を楽しむすてきな寄り道

「絶対必要ではないけど、ないと寂しい。喫茶店の存在は生活の支えになると思います。少なくとも自分がそうだったから」。学生時代、方々の喫茶店を訪ねるうち、日常に欠かせないものになったという岡上さん。中でも、一見で入って初めて居心地が良いと思った一軒が、今はなき神戸のタンゴ喫茶[Cotton]でした。「店主夫妻が前に出るわけではなく、店と一体になっていて。まだおこがましいですが、目指す理想のお店」と、たった一度、訪れた記憶は今も鮮明に残っています。

六甲時代と趣を変えた店内は、スキッと清新な印象に。

 「自分が行くだけでなく、迎える側になれれば」。大学卒業後、カフェでアルバイトを始め、自らが店の影になり、背景になるのが心地良いという感覚を実感。求める時間が変わらずそこにあることのありがたみを、だれより感じてきた岡上さんの経験こそが、[月森]を支える確かな土台となっている。「日々の寄り道の大切さを感じられるのが喫茶店の良いところ。おばあちゃんになるまで、この仕事を続けたいですね」。迷路のような路地奥で、今日もだれかの"寄り道"を待っています。

マイルドとダークが選べるコーヒー550円は、神戸の名ロースター[樽珈屋]のオリジナルブレンド。粉の風味を生かした、甘さ控えめのプレーンドーナツ200円。「ご縁があって」と[Cotton]の常連さんからもらったというカップソーサーが棚の上に。

右のカップ&ソーサはお店のおまもり的な存在。
※この記事は2022年1月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
写真/わたなべよしこ 取材・文/田中 慶一
店舗情報
大阪・松屋町
喫茶 月森
  • 電話番号
    070-8337-3557
  • 住所
    大阪市中央区瓦屋町1-6-10
  • 営業時間
    11:00〜20:00
  • 定休日
    不定
  • アクセス
    大阪メトロ松屋町駅から徒歩5分
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