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土地とワインの魅力を探るべく、藤丸さんとワイナリートリップ。前号に引き続き舞台は山形県。今回は[タケダワイナリー]を訪れ、畑やワイン造りの様子をたっぷりと見学した後に、すてきなワイン酒場に足を運びました。

藤丸智史さん/大学卒業後、ソムリエを経て海外でワイン作りを学び、大阪で[ワインショップFUJIMARU]を開業。現在はブドウ作りからレストランまで展開する株式会社パピーユの代表取締役。 Instagram@winefujimaru

Vol.09
[山形・上山]タケダワイナリーへ

蔵王連峰の麓・上山市に位置する、1920年に開業したワイナリー。「良いワインは良いぶどうから」をモットーに自然農法で手がけたブドウ栽培から瓶詰め、出荷までを一貫して行う。年間の生産数は、およそ17万本。

ブドウ畑から酒場へ、人を紡ぐワインの旅路を辿る

 「今日は山形の中でも歴史の長いワイナリーに向かいます」と藤丸さん。その目的地は[タケダワイナリー]。ワイナリーの目の前にある山の斜面には、ブドウ畑が作られ、下草が自然のままに生えているのが特徴的だ。80年近い樹齢の古木もあり、リスや野ウサギなど小動物も顔を出す農場には除草剤や肥料を使わず、他ならない上山の自然のサイクルの中で大切に育てられている。収穫されたブドウは、ゴオッと音を出しながら動く軒先のコンベアに絶えず流され、スタッフ総出でブドウの粒を選別する。どれくらいの量を作業するのか尋ねると「今日は10トンほど」と、その数ボトルにして1万本。想像と桁違いの答えに驚き、地道な作業の積み重ねがワインの味に直結しているようだ。
 温泉に立ち寄ってから山形市内へと戻り、ワイン酒場[プルピエ]を訪れる。「この店のご挨拶代わりに出してるワインなんです」のひと言と共に店主が用意してくれた『サン・スフル』を見て、「僕がデラウェアを大阪で作るきっかけになったワインでもあるんです。こんなおいワインでもあるんです。こんなおいしいワインが作れるんだ」と、藤丸さんも穏やかに語ってくれた。ワインに埋め尽くされた店内で気持ちの良い接客、こだわりの食材とのペアリング。気が付けば日はとっぷりと暮れている。外から店を見ると、ぼんやり灯る温かな光が大きな窓から通りを照らし、ひと組、またひと組と店に吸い込まれては楽しげに過ごしている。丹精込めて作られたワインが、街も人も紡いでいく。

藤丸さんがワイナリーを始めるきっかけとなった[タケダワイナリー]のサン・スフル。
  • ワイナリーの目の前の斜面は全て自社のブドウ畑。
  • 黙々と作業するスタッフ。収穫期はとにかく多忙。
  • 工場内にある、瓶詰め用の巨大なマシン。
  • ワイン造りの工程を紹介するパネル。

収穫したブドウはベルトコンベアに流され、傷みや病気があるものを手作業で選果する。
  • 秘密基地のような地下貯蔵庫には熟成樽がたくさん。
  • 案内をしてくれたのは取締役の岸平和寛さん。
  • 応接室には、いろんなワインが並ぶ。
  • 長い歴史を感じる外観。外には巨大なタンク。


〜今月のワイン〜

タケダワイナリー
サン・スフル
白(発泡)


発酵中のワインを瓶詰めした、酵母由来の炭酸がフレッシュな微発泡ワイン。完熟したデラウェアを感じるふくよかな果実味と控えめな甘さのバランスが絶妙。2,640円(750㎖)

日本ワインの歴史を刻む、自然と共生するワイナリー
山形県で2番目に長い歴史を持つワイナリーで、欧州系ブドウ品種の栽培を国内でいち早く実践。現在は5代目の岸平典子さんが代表を務める。長い年月をかけて有機的土壌を育て上げ、自然のサイクルを最大限に生かした減農薬・無化学肥料で栽培。山形県産のブドウにこだわったワイン造りを行う。ワイナリー見学会は無料で、予約はHPから。

店舗情報
山形・上山
タケダワイナリー
  • 電話番号
    023-672-0040 
  • 住所
    山形県上山市四ツ谷2-6-1
  • 営業時間
    10:00〜17:00 
  • 定休日
    不定
  • カード使用
  • アクセス
    JRかみのやま温泉駅から車で5分

立ち寄りスポット①

[山形・山形]プルピエ
ナチュラルワインと気まぐれキッチン


食材との縁をもつなぐ、ナチュラルワイン酒場
取り扱うワインや食材は店主とシェフがワインを通じて食材に出合い、感銘を受けたものだけ。セラーだけでは収まりきれないほどの膨大なワインと、「きまぐれキッチン」の名の通り、和洋を問わずジャンルレスな料理が日替わりで提供され、そのどれもがワインと好相性。駅から少し離れた場所でありながら、県外からの客の姿も多い。

  • 農家から直接仕入れた旬菜のクリュディテや自家製ハムなど、豪華なアテが約10種。前菜盛り合わせ2人前2,400円〜。(写真は4人前)
  • じっくりじっくり揚げたポテトは熱々。シンプルながらしみじみとおいしい。
  • 店内にはいたるところにワインが並んでいる。壁際にもびっしりとワインが。
  • 繁華街からは少し外れたところにあるお店。明りに吸い寄せられるように次々とお客さんが入ってくる。
店舗情報
山形・山形
プルピエ
  • 電話番号
    なし
  • 住所
    山形県山形市桜町2-42
  • 営業時間
    18:00~23:00(金・土 ~23:30)共にLO
  • 定休日
    月&不定
  • カード使用
    不可 
  • 席数
    24
  • アクセス
    JR山形駅から徒歩10分

立ち寄りスポット②

[山形・山形市]百目鬼温泉(どめきおんせん)

お湯の濃さは特筆もの!

長湯は危険!? な名泉の露天風呂で極楽に
田畑の中にぽつんとある、インパクト大な名前の天然温泉。開放感抜群の露天風呂では、頭上一面に空が広がり、蔵王連峰の美しい山並みと爽やかな風を感じることができる。塩分と鉄分が豊富に含まれた名湯は、のぼせ防止で3分以上は湯船に漬からないことを推奨。短い時間で半身浴を繰り返せば、体もすぐぽかぽかになる。

  • 農業用水のための井戸を掘ったら温泉が出てきてしまったという逸話も。
店舗情報
山形・山形市
百目鬼温泉どめきおんせん
  • 電話番号
    023-645-9033
  • 住所
    山形県山形市百目鬼42-1
  • 営業時間
    6:00~21:30最終入館
  • 定休日
    第1月 
  • カード使用
    不可 
  • 料金
    400円
  • アクセス
    JR蔵王駅から車で5分

【大阪からのアクセス】

大阪→上山/飛行機 大阪空港→仙台空港、仙台空港からレンタカー→JR奥羽本線かみのやま温泉駅
大阪から約3時間、片道料金42,000円〜※山形県内の移動はレンタカーが便利

合わせて読みたい!

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写真/西島 渚 取材・文/関戸ナオヒロ
協力/パピーユ www.papilles.net

※この記事は2025年3月号の転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
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発売日:2025年1月23日(木)定 価:900円(税込)