ご飯の上に鶏肉。基本的な構造は同じでも、国が変わると違いが表れる東南アジアのチキンライス。各国のチキンライスに明るい［堀内チキンライス］さんと４種のチキンライスを比較研究。東南アジアのチキンライスを食べられるお店もご紹介します！

＼チキンライス識者／
［堀内チキンライス］堀内浩樹さん、牧子さん

2009年に［堀内チキンライス］をオープンした堀内浩樹さん（右）と、沖縄出身の妻・牧子さん。浩樹さんは漫画家でもあり、店内にはイラストがずらり。

東南アジアでおなじみのチキンライスって？

「約20年前にチキンライスを知ってからとりこになり、各国を食べ歩きました。基本的な定義は、鶏肉をゆでて、その汁でジャスミンライスを炊くことですが、そもそもは中国・海南島出身の華僑が各地に移住して広めた料理。発祥の地とされるシンガポールでは国民食です。タイでは辛い物好きが多いからかソースも辛く、ベトナムではホイアンという地域の郷土料理に。国によって米を炊くときにハーブ類を加えていたり、かけるソースの味が全く違う。味変したり、好みの辛さにカスタマイズできるのも魅力です」

＼ソースはかけて食べる!／

~各国のチキンライスを見てみよう！~

シンガポールのチキンライス
海南鶏飯（はいなんじーふぁん）

大阪・寺田町［堀内チキンライス］の海南鶏飯 850円

シンガポールを代表する国民食

海南鶏飯 850円
鶏もも肉をゆでた汁の味を調え、パンダンリーフ、ニンニクなどを加えて米を炊く。しっとりジューシーな鶏肉とライスに、3種のたれを好みで混ぜ合わせて回しかける。

【研究結果】
別名「シンガポールチキンライス」。ソースは、ペースト状にしたショウガと油をあえたタレ、濃くて甘いしょうゆ、酸味もあるチリソースの3点セットが主流。チキンの上でブレンドして食べる。

「僕が一番好きなチキンライス。まずはそのままで。その後、ショウガ多め、しょうゆ少なめ、トウガラシを混ぜ合わせ、ご飯と鶏にかけてどうぞ! 」

タイのチキンライス
カオマンガイ

大阪・天満［コップン天満］のカオマンガイ 1,080円
タイ人シェフ、テンさんのこだわりは、現地の大豆みそにパクチーの根や薬味をブレンドしたオリジナルのたれ。鶏の油、だし、ショウガをたっぷり入れて炊き込んだ風味豊かなごはんと、しっとりした鶏肉にたれがよく合い、ピリ辛味とうま味に刺激されてするすると食べられる。

【研究結果】
「カオ」はご飯、「ガイ」は鶏。タイではメジャーな、「タオチオ」という瓶入りのみそにトウガラシやショウガを混ぜたソースをかけるのが一般的。パクチーが添えられていることも多い。

「タイの代表的な調味料で、大豆の粒が残るみそがベース。辛いことが多いのですが、うま味も強いのでたっぷりかけてもおいしいですよ! 」

ベトナムのチキンライス
コムガー

神戸・元町［タン★カフェ］のコムガー 900円
薄切りした蒸し鶏に野菜がたっぷりのった華やかな一皿。砂糖をカラメルになるまで煮詰め、パイナップルやトウガラシ、ヌクマム（魚しょう）などを加えたコクのある甘酢たれは、ベトナムならではの味わい！ ［タン★カフェ］オリジナルアレンジの、ライスにのせた鶏の煮込みもレモングラスや黒コショウが香り、アジアへと誘われる。

【研究結果】
「コム」はご飯、「ガー」は鶏。ベトナム・ホイアンの名物料理。ヌクマム、トウガラシ、香草などをブレンドした甘めのたれを回しかけて食べる。サイドには生野菜や香草が盛り盛り!

「タレがかなりあっさりしているので、うちの店では鶏にブラックペッパーを散らして、少しパンチを出しています。」

インドネシア、マレーシアのチキンライス
ナシアヤム

京都・北山［cafe bali gasi］のナシアヤム 1,650円
内臓を抜いた鶏一羽にスパイスや野菜をたっぷり入れてオーブンで蒸し焼きに。焼き上がった後、裂いてバリの天然海塩とスパイスで味付けし、ご飯の上に副菜と共にトッピング。スパイシーながら辛さは控えめで、青コショウのかわりに使った山椒の清涼感を感じる。

【研究結果】
最大の特徴は鶏を丸焼きにしていること。現地で自生するレモングラスやウコン、野菜を詰めて焼き、海塩とスパイスで味付け。サンバルという辛いトウガラシソースを添えて食べる。

「お隣のシンガポールスタイルのナシアヤムもよく見ます。マレーシアには、材料などは同じでご飯がおにぎり状の「チキンライスボール」という料理がありますよ。」

堀内さんとこの、
各国のチキンライスはこちらも!

コクのある辛みそダレで食欲倍増

カオマンガイ 850円
チキンライスは海南鶏飯と同じ。食感を出すため、ライスにフライドオニオンをトッピングしている。刺激的な辛さの中にコクを感じるたれは軟らかな鶏との相性も抜群。

レモンを搾ると味が激変！

コムガー 850円
チキンライスは海南鶏飯と同じ。鶏に黒コショウをちらし、甘酸っぱいなますを添えて変化をつけている。まずはナンプラーソースで。次にレモンを搾ると味の幅が一層広がる。

アジア料理店で働いていた頃、洋書をめくっていて発見したチキンライスのレシピを自分で翻訳しながら作ったことを機に、 “チキンライス道”を極めることとなった堀内さんのお店。牧子さんの故郷・沖縄の料理も人気で、メニューの一部はテイクアウトも可能。

写真／岡本佳樹　竹田俊吾　中部里保
取材・文／天野準子　小林明子　林 真央