SAVVY.jpの竹村です。
クリスマスソングが街中に鳴り響く季節になりました。
いよいよですね(なにが?)。
以前に、春が苦手だと書いたことがありました。
またかい、と思われるかもしれないので大変恐縮なんですが、
クリスマスソングがひたすら流れるこの時期も、落ち着かない気分になります。
それがなんでかはよくわからないのが正直なところです。
ただ、無理矢理分析すると「ハッピーになろうぜ!」っていう空気感に
ついて行けてない、取り残される不安感なのかもしれません。
幸せではない自分の状況にひがんでいる、とかじゃないんです。
今、自分が幸せであるとか充実しているとか、そういうことではなくて。
さて、そんな季節にいくつかの本をご紹介したいです。
まずは、いよいよ地方から発信できる時代だなと感じる2冊。
『とある暮らし』(miyano)と、『松江日乗』(イノハラカズエ)です。
『とある暮らし』は、福井に暮らすmiyanoさんが、
福井で暮らしていくことって何だろう? を初期衝動に福井県に暮らす普通の人のインタビュー集です。
本当に普通に暮らす人の、等身大のインタビューになっていて
それぞれのインタビューの分量が違うのもリアルだな、と感じます。
でも、普通がゆえに福井の現実が伝わってくる気もします。
中央目線から語られてない、まさしくの等身大かと。
編集者を長くやってきて、いわゆる普通の人にするインタビューが一番スリリングだ、
と感じていたので、ヤラレタ!という気分にもなりました。
一方、『松江日乗』は、松江で小さな書店を営むイノハラさんの日記です。
帯にあるように、本が売れるより差し入れの方が多いような日常が淡々と描かれています。
古代から続く日記という強力なフォーマットの強さがあります。
等身大の日常がゆえのスリリングさ。
何も起こらないけど、何かが起こってる。
その小さなさざめきみたいなものを感じられるのは日記の面白さかなと。
しかも、松江という場所で。
いずれも全国の全書店に流通している本ではないけれど、
小さな灯火というか、ささやかな声だけれどとても強いものを感じます。
とてもよいです。
さて次の1冊は、今ちょっと話題になってる土門蘭さんの『死ぬまで生きる日記』。
幼少期からずっと生きづらい、と感じてきた土門さんが、オンラインカウンセリングを受けて、
自分と向き合っていく様と心のゆらぎが描かれます。
なぜ生きづらいのか、どうして死にたいと思うのか。
文字通り心をえぐられるような体験を、赤裸々に吐露されています。
ただ多かれ少なかれ、誰しもがそういう気持ちはあるのではないか、
と個人的には日々感じています。
なぜなら、だいたいの物事はグラデーションになって変化してると思うからです。
ここから先は正常、ここまでは正常じゃない、と決めるのは難しい。
先ほど、普通の生活と書きましたが、
普通という言葉ほど、一番信用ならない言葉はないな、と思ってます。
そもそも普通って何やねん、という。
その「普通」に悩まされていたことがあります。
その気持ちをわりと整理することができた1冊があります。
もう数十年前のことですが。
陽ちゃんという同級生に紹介されたその1冊については、
長くなってきたので、また次回に。
それではどうぞよろしくお願いいたします。
※〈編集日記〉は毎週金曜更新、次回は12/27(金)予定です
過去記事は、ハッシュタグ #編集日記 #編集長日記 をクリック。