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SAVVY.jpの竹村です。

世間は、夏休みですね。
とある撮影中、スタイリストさんが
「小学生の子どもの読書感想文の本を探しています」と。
なるほど。

とりあえず、職業柄ということにしておきますが
家には大量の本があるので、
「もしよかったら、それっぽい本があったらお渡ししますよ」
ということになりました。
(まあこれでも、最近引っ越しをして半分くらいには減らしたんです)

さて、問題の読書感想文。
苦手とする人が多いですよね。
今となってはプロなので、それなりに書けますが、
小学生の時分は、なにがなにやら。
「あらすじを書くだけではいけません。読んで感じたことを書いてください」と
悪魔の呪いみたいなことを先生は言ってきます。
今となっては、その意味が分かりますが、
評論とか作品紹介文をあまり読んだことのない小学生からすると
まさに五里霧中ではなかろうか。

なにかを読んで、なにも感じない、ってことはないと思うのですが
それでも、感じたことを言語化するのは、それなりに訓練が必要じゃないかい
とも思うのです。
そんな授業ありましたっけ?
ま、「この文を読んで、主人公の心象風景を書きなさい」というのは
あった気がしますが。
心象風景って、今になっても日常で使う場面のない言葉です。
いずれにしても、ある程度の訓練がいるのではないでしょうか。

とはいえ、文章は訓練である程度までは書けるようになるけれど、
実は書ける人は、いきなり書ける気がします。
残念ながら、才能みたいなものはあると思います。
センスと言いますか。

文章とか勉強は、努力すればするだけ伸びる、みたいな風潮もありますが
結局は走るとか飛ぶとか、そういうフィジカルと一緒じゃないかと、
なんとなく実感しています。

例えば、走るのを練習して100mを20秒で走れるようになるかもしれないけれど
100mを10秒で走れるのは、やっぱりそれなりの選ばれし人ではないかと。

急になんでそんなことを言い出したかといいますと、
冒頭のスタイリストさんに渡した本に、
京都の装丁家、矢萩多聞さんの『美しいって何だろう?』があって、
渡す前に読み直した感想でもあります。

この本は、矢萩さんと娘さんの往復書簡のようなエッセイです。
その娘さんが8歳で、スタイリストさんのお子さんと同い年だったから選んだものです。
その矢萩さんの娘さんのつたさんが、書く文章が素晴らしくて。
お父さんの矢萩さんの文章も、率直でいいんですけれど、
つたさんの文章のみずみずしさに、心打たれます。
みずみずしい文章ってこういうことだな、と。

もうちょっと具体的に言うと、
子どもらしさと大人っぽさが、良いバランスで同居しているのです。
あとは、言葉の使い方とリズムがとてもいい。
文章がぎったんばったんしていないんですよねぇ。

つたさんは、たくさん本を読むらしいので、
文章のリズムが自分の中でできているのでしょう。
とある小説家に、「夏目漱石の小説を、書き写して文の練習をした」と
聞きました。
なので、そういう部分でのアドバンテージはあると思いますが、
「こうやってテクニカルに書いてやろう」みたいなあざとさは感じないので
素直に書いているとは思います。

さて、夏休みも中盤戦。
いまさらそんなことを言われても、かもですが。
文章に正解はないので、
とりあえず書いてみるしかないですね。

一つだけ言えるのは、声に出して読んだ時に
ひっかからずに読めるのは、読みやすい文章のひとつの基準かなと思います。

それではどうぞよろしくお願いします。

※〈編集日記〉は毎週金曜更新、次回は8/16(金)予定です
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SAVVY10月号『梅田』
発売日 2024年8月23日(金)定 価 900円(税込)