チャールズ・ジーン・スイート
/南アフリカ
文/吉本秀純
南ア発のネオソウル・コレクティヴ!
アフリカ大陸の南端に位置する南アフリカ共和国は、1930年代からスウィング・ジャズが盛んに奏でられ、近年もハウスやヒップホップなどを消化してクワイトやアマピアノといった独自のジャンルを生み出してきた音楽大国。当然ながらソウル、ファンク、R&Bといった音楽も欧米圏とほぼタイムラグなく根付いてきた歴史を持ち、ミリアム・マケバやレッタ・ンブールといった世界的に活躍した名シンガーも数多く輩出してきました。
今回に紹介するチャールズ・ジーン・スイートは、そんな南アの豊かで先進的な音楽的土壌から頭角を現してきたネオソウル系の新鋭で、グループというよりは曲ごとにさまざまなジャンルのプレイヤーやラッパーなどが加わるコレクティヴ的な存在。“スイート”と名付けられた中心メンバーのベッドルーム・スタジオに気心の知れた仲間が集まって週末にセッションを重ねるうちに本格的なユニットへと発展していったようで、関西ならSoulflexあたりに近いスタンスの人達と言えるかもしれません。
そんな彼らのデビュー作『スイート・ナイツ』は、総勢20名近くの音楽家たちが参加し、南アの中心都市であるヨハネスブルグに息づく多彩なサウンドを封じ込めたような好作品。スキルの高いシンガーやラッパーがフロントを務めるメロウなネオソウル調の楽曲を中心に、ブロークン・ビーツ調のリズムの上でサックス奏者が巧みなブロウを響かせるジャズ色の強いインストや、アフリカらしい打楽器や跳ねたビート、南アならではのクリック音をアクセントに利かせたものまで。生演奏とエレクトロニクスを巧みに融合させながら、メロウ・ソウル、ヒップホップ、ジャズ、自国の伝統的な音楽などをカラフルかつスムースに融合させた楽曲の数々は、近年に世界的に注目されてきたアフロビーツとはまた違った角度から、新世代のアフリカ発の音楽の今を伝えてくれるはずです。
アフリカ回帰志向な欧米圏のネオソウルともまた違う、親しみやすくも独特な彼らの音をジャンルや国籍に捕らわれずに楽しんでみてください。
『SUITE NITES』
CHARLES GENE SUITE
*Paraphernalia Records
発売中 2,530円
※この記事は2023年3月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認下さい。