イラストレーターの久保沙絵子が、毎月1冊をピックアップして、勝手にその本の表紙を制作するこの企画。イラストが描き上がるまでを追いかけます。12冊目は、星 新一の短編『ボッコちゃん』。酒場のロボットと人間の会話から、欲望と愚かさを浮かび上がらせる。軽さの裏に不気味さが潜む物語です。

久保沙絵子/イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。
この連載もラスト1冊。
いろんな本をたくさん読んできた後に、1周回って戻ってくるような1冊を選びたいと思いました。
ユーモア満載な、星 新一さんの『ボッコちゃん』です。
短編なので、一つひとつの話はとても短いのですが、教訓も織り込まれていて、読んだ後の心に後味が濃く残り、星さんの発想と文章で、ページが進む1冊です。

著/星 新一
新潮文庫
眠れない夜は長ーーく感じます。
眠れないなりに布団に入って目をつむっていると、3:30ごろに新聞配達のバイクの音が聞こえてきます。その音が感覚をあけて止まり、合わせてポストに新聞が投函されるポスっ。という音が聞こえてきます。
そして、うつらうつらし始めた頃にカラスが鳴き始めて、”あぁ眠れなかった、もう起きよう。”と、なります。
そんな辛い不眠症の話があります。
ある男性が頭を打ってからひどい不眠症になり、どうせ起きているなら働こう!と、昼は会社員として働き、夜はそのまま同じ会社の警備員として働き始めました。
そうしているうちに、帰らないなら家は必要でないと思いつき、自分の家は人に貸すことにしました。
不眠症になったことで収入は2倍以上になり、お金もたくさん貯まっていきました。
しかし、眠りたいという思いがだんだんと強くなり、男性はついに病院に行きます。
すると、医者はある薬を使えば治るが、それはとても高価な薬だと言いました。
その薬は確かに高価で、今まで貯めた全てのお金に匹敵するくらいの金額でした。
意を決してその薬を使った主人公は、だんだんと頭がぼんやりとしてきます。
目を開けると、医師が主人公の顔を覗き込んでいました。
あらゆる手段を尽くしても目覚めない主人公を医者が高価な薬を使用して目覚めさせたのです。
主人公は、最初に頭を打ってからずっと眠り続けていたのです。
夢の中で不眠症になりたくさんのお金を貯めた主人公は、目覚めた世界で高額な薬の代金を支払うため、眠らずに働かなくてはいけなくなりました。寝るも地獄起きるも地獄という感じで、かわいそうな主人公の物語です。

左側と対象になるように線の角度に気をつけながら進めていきます。

ゴルフや写真など、趣味の本が並んでいます。

表紙が若干重なり合っているおおらかさがいい味を出しています。

サイズと高さの違う四角を丁寧に描いていきます。

私は本に埃がかぶるのがなんとなく嫌なので引戸付きの食器棚を本棚にしていますが、こういう、ザ・本棚。な、本棚もいいなと思いました。
私は、100年ほど前に製造されたねじまき時計を使っています。
朝起きてネジを巻く時に”おはよ〜”と話しかけたりしています。
私の宝物のひとつです。
時計を大切にする者として共感できる”愛用の時計”という物語があります。
ある男性が大切にしていた腕時計がありました。
その時計は、男性に寸分違わず時間を知らせ続けていました。
しかし、男性が旅行へ行こうとしたある日、時報が知らせる時間と時計の時間にずれがあり、男性は乗る予定だったバスに間に合わなくなりました。
男性が不思議に思って時間が合わなくなったお気に入りの腕時計を時計店に持って行くと、ポッケのラジオが鳴りました。
男性が乗るはずだったバスが事故で谷に落ちたという知らせでした。
物を大切にすることで、物に守られたという話でした。
これはなんだか、気づかないだけでありそうな話です。
逆もまた然りな気がしてしまうのは、星 新一ワールドに浸っているからなのかもしれません。そういうモードで見てみると、世界はもっとゾクゾクして愉快なのだろうなぁと、星さんのユーモアがうらやましくなるのでした。

久保沙絵子
大阪在住、雑誌やウエブなどで活躍中のイラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチの作風が特徴。線の質感にこだわり、作品はすべて一発書き! 制作は、生命保険の粗品のスヌーピーのコップで白湯を飲みながら。また、街中でスケッチすることも。もし、見かけたらぜひ声をかけてください。
- Instagram@saeco2525
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