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ニューヨークから縁もゆかりもない京都に引っ越した
“よそさん”ライターが見つける、京都の発見あれこれ。

かす汁は京都の食べもの?

 酒かすをだしに溶いた香り高き汁もの、かす汁。千葉の我が実家では、冬の食卓に上る定番で、具はサケと根菜。祖父が岩手県出身だったため、東北地方の郷土料理だと信じきっていた。だからある日、京都の友人から「かす汁は京都の食べものだけど」と言われ仰天。そうなの!?
 
 調べてみると、たしかにかす汁の発祥は近畿地方説が濃厚。京都の伏見や兵庫の灘といった酒どころがあり、酒かすが入手しやすかったとの理由らしい。ならばと伏見の酒蔵[玉乃光酒造]に真偽のほどを尋ねてみると、京都発の食べ物だと断言はできないけれど、少なくとも伏見では「家庭料理として定着している」という。蒸した米、米こうじ、水を発酵させ、液体(つまり日本酒)を搾った残りである酒かすは、酒蔵ならではの副産物。酒粕事業部(そんな部があるのか!)の山川 結さんいわく、「おそらく昔は蔵の人が甘酒やかす汁にして消費しつつ、酒かすをご近所にも配っていたのだと思います」。なるほど。そこからじわじわと関西圏に普及したのかもしれない。

自社で精米した米を蒸し、こうじ菌を振って米こうじを育てる。箱の中ですやすや眠る米こうじ、なんだか愛おしい。

タンクに酒母、水、米こうじ、蒸米を入れ、醪(もろみ)を仕込む。

発酵を終えた醪を搾る機械。ろ過板をプレスすると板状の酒かすができあがる。

板にならず崩れた酒かす、バラかす。

 気になるのは、かす汁のレシピ。京都風やもっと地域ごとに伏見風など、作り方や具に決まりはあるだろうか? たしか友人は白みそを入れていたような……。山川さんによると「家によってレシピはさまざま」。具は豚肉派、鮭派に分かれ、みそを入れる派、入れない派もあり、特に決まりはないのだとか。フリースタイルなのですねえ。とつぶやいた私に、「酒かすを焼いて食べるのはご存知ですか?」と山川さん。や、焼く? 知らないです! 「板状の酒かすに砂糖をまぶして、そのままストーブやトースターで焼くんです。伏見の酒蔵周辺の人にとっては、おばあちゃんがよく作ってくれたおやつだそうですよ」。へぇ! なんて粋なおやつなんだ!

[玉乃光酒造]は純米酒(醸造アルコール無添加)を作り続ける酒蔵。純米酒由来の酒かすは芳じゅんでまろやかな味わい。

板粕650円

使いやすいねり粕650円

 
 ちなみに[玉乃光酒造]は、〝酒粕を日常に〟とのテーマを掲げ、レストラン[純米酒粕 玉乃光]を運営。粕汁のほか、酒粕おでん、酒粕ピザ、酒粕カレーなど、めくるめく酒かすメニューを提供。酒かすを購入しても持て余してしまう私としては、応用術を知りたいところ。鼻息荒く料理長に迫ったら、惜しみなくレシピを授けてくださった。ランチで好評の「なめろう丼」は、鯛のお刺し身を酒かす、濃口しょうゆ、白みそ、おろししょうがであえ、白飯にのせるだけ。ゆで卵やゆで野菜に幅広く使えるのは、酒かすマヨ。マヨネーズ2、酒かす1、みそ1の割合で混ぜたら完成。酒かすは味にうま味や深さを増す〝調味料〟ととらえるといいそうで、和食のほかシチューやグラタンにもちょい足しするのがお薦めらしい。ほお! メモメモ。
 

レストランで提供する酒かす料理の数々。鯛のあらでだしをとり、酒かすを加えた粕汁480円。

昆布締めした鯛の刺し身と酒かすでうま味倍増、酒粕なめろう丼(粕汁付き、ランチのみ)1,300円。

酒粕おでん5種盛り550円と、

豚ロース酒粕味噌柚庵焼き2,280円は白みそが隠し味。店内では酒かす商品も販売。

 さらに酒かすは「食用だけではなく美容にも」と山川さん。さっとおみそ汁やスープに振って使える〝酒粕パウダー〟なる商品があり、湯船に入れて入浴剤代わりにしたり(酒粕風呂!)、お湯を少量混ぜ顔に塗ったり(酒粕パック!)できるそう。ビタミン、アミノ酸、コウジ酸などを含み、おいしいだけじゃなく、美容効果も期待できちゃう酒かす。尊過ぎる……。さっそく酒かす生活、始めます!

私の推しは、つまみにぴったりの酒粕レーズンバター810円と、

手がぷるんと潤う酒粕ハンドクリーム1,650円
店舗情報
京都・四条
純米酒粕 玉乃光じゅんまいさけかす たまのひかり
  • 電話番号
    075-352-1673
  • 住所
    京都市下京区因幡堂町658-1
  • 営業時間
    11:30〜14:30、17:30〜21:30共にLO(販売11:30〜15:00、17:30〜21:30)
  • 定休日
    不定&12/31〜1/3
  • 席数
    スタンディング約20(1Fテイスティングバー)、32(2Fレストラン)
  • カード使用
  • アクセス
    地下鉄四条駅、阪急烏丸駅から徒歩すぐ
著者

Nihei Aya

エッセイスト。9年のニューヨーク滞在を経て、2021年に京都へ。著書に『ニューヨークおいしいものだけ』(筑摩書房)、『ニューヨークでしたい100のこと』(自由国民社)、『ニューヨーク、雨でも傘をさすのは私の自由』(だいわ文庫)、京都のエッセイ&ガイド本『京都はこわくない』(大和書房)など。2025年8月にカフェ&グローサリー[ROBYN](P60)を京都にオープン。

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    @nipeko55
※この記事は2026年2月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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