このアーティスト、要チェック!
今月のNEWSな人・六根由里香(ろっこんゆりか)
“なんか気になるモノ”を
自己流の版画スタイルで制作

六根由里香(ろっこんゆりか)1995年大阪生まれ。今回の取材は、普段の制作場所にしている京都・北野白梅町の[京都リトグラフ工房]にて。東山の[HAPSスタジオ]にもシェアアトリエを構える。 Instagram @rokkon_6
昨年、大阪の[POL]で開かれた六根さんの個展は、おばあちゃん家にあった“冷え取り君”(足湯器具)や、廃車が決まった実家のファミリーカーなんかをモチーフにした作品で、思い出や記憶を保存したりよみがえらせたりするというでもなく、ふと気になるイメージを版画のさまざまな技法を使って自在に変換、再提示する興味深い展示だった。車モチーフの作品では、家族総出でタイヤに墨を付けてキャンバスの上を走らせたり、車を養生シートに包んで輪郭線をなぞって線を抽出したり。とりわけ、立体物にシートをかぶせて輪郭線をなぞるやり方は、これまでにもいくつかのモチーフで作品化していて、六根さんならではのトレース方法といえる。
「コロナ禍で家にこもっていた時期に、家のドライヤーとかにサランラップを巻いて輪郭を写し取っていたのが出発点です。リトグラフを制作するその過程でも、それぞれの版に分けるために何度もトレースという行為をやるんですね。ただ、それって間接的だし時間もかかる。だから、3次元の物を直接的にトレースするにはどうすればいいかなって考えて」
そんな自前のトレースだけでなく、最近では物に和紙を貼り付けて、拓本をとるようなことも行っている。古典技法への回帰に見えて、ほとんど凸凹のない物でそれをやっているのが六根さんならでは、なのだが。
「いっちゃんシンプルな版画って何やろう!? って考えてるところもあります。ただ、拓本もトレースでも、やり方次第で何度やっても同じ線にはならなくて。その不確かさやエラーも含めて、自分が思ってもみなかった方向になっていくというのは、制作において必要なことだと思ってます」
ちなみに、冒頭でもう一つのモチーフとして挙げた“冷え取り君”は、子どもの頃から「そこに足入れとき!」と言われてきたという思い出の健康器具。その現在のありかを祖母や母に確認しようとしても、「そんなん知らんわ!」とまったく聞く耳持たず、だったのだそう。
「そのいい加減さ、適当な感じ……やっぱり私の制作面でも二人の血をしっかり受け継いでるんやなってあらためて感じました(笑)。次の個展でもおばあちゃん家にあった餅つき機をモチーフにするつもりです。だいぶ自分寄りの制作が続いていますけど、物を通して見えてくる、人の性格や感情というものに興味が向き始めています」
もう一つ、六根さんといえば、現代美術ギャラリーでも、ストリートな場でも、カフェやギャラリーなどでも作品を発表している印象で、昨秋の[梅田クラブクアトロ]の自主公演ライブのビジュアルも担当していた。
ここでチェック!
企画展:『餅は餠屋』
期間:8月16日(土)~9月6日(土)
会場:hitoto
- 電話番号なし
- 住所大阪市北区天神橋5-7-12 天五共栄ビル301
- 営業時間13:00~19:00
- 定休日火・水
- 入場料無料
- アクセス各線天神橋筋六丁目駅から徒歩3分
取材・文/竹内 厚 写真/桑名晴香