今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!
文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、割とジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶を嗜むこと。
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。
☑『VS.(ヴァーサス)』
朝ドラから生まれた名コンビが、
コメディーでW主演
笹置シヅ子をモデルにした歌手・福来スズ子(趣里)の、笑いと涙の半生を描き出した、2023年後期の連続テレビ小説『ブギウギ』。そこで注目を集めたのが、スズ子と当初は対立しつつも後に良き理解者となった坂口役の黒田たもつ、スズ子のマネージャーとして公私共に彼女を支えた山下役の近藤芳正だ。スズ子を巡る絶妙なコンビネーションが評判になった二人が、なんと演劇の舞台でW主演を果たす。
作・演出を務めるのは、近年「松竹新喜劇」の舞台を相次いで担当し、『ブギウギ』にも露天商役でちらりと出演していた、京都の劇団・THE ROB CARLTONの村角太洋(役者の時はボブ・マーサム名義)。今回彼が描くのは、一人の女性歌手のデビューを巡る小競り合いという、ちょっと『ブギウギ』ともかぶる世界だ。彼女の芸名やデビュー曲を巡って、エグゼクティブ・ディレクターに芸能事務所社長、音楽プロデューサー、そして女性歌手本人も交えて、激しい対立を繰り広げていく。スタイリッシュな雰囲気を保ちつつ、人間のばかばかしさを極限まで引き出していく会話を持ち味とする村角の作風によって、『ブギウギ』の時とはまた違う黒田&近藤のケミストリーと、すかっとした笑いを同時に楽しめるはず!
『VS.(ヴァーサス)』
日程/7月26日(土)~28日(月)
場所/ABCホール
作・演出/村角太洋 出演/黒田たもつ、近藤芳正、川奈美弥生、和海、ボブ・マーサム
料金/一般5,000円(全席指定) 発売中
公式サイト/https://ticket.fany.lol/
問い合わせ/☎︎0570-550-100(FANYチケット問合せダイヤル)
☑こどもコブホ2025『めにみえない みみにしたい』
気鋭のクリエーターによる、
ピクニック感覚の舞台
ジャンルを超えて幅広い支持を集める劇団・マームとジプシーの藤田貴大が、子どもも大人も同じように楽しめる世界を目指して創作した舞台。おねしょの悩みを抱える女の子が、飼い猫から聞いた言い伝えをかなえるために、夜の森を訪れる。そこで女の子が出合うかわいいものや、怖いもの、大切なものが、まるで立体紙芝居のように提示されていく。ミュージカル風のシーンや、観客が参加することで進行するシーンなど、出演者と観客が一体となって舞台を楽しめるのが魅力。ピクニックのようにくつろぎつつ、キュートでどこか懐かしい光景に心を踊らせるうちに、忘れていた子ども心を思い出す時間を過ごせそうだ。
こどもコブホ2025『めにみえない みみにしたい』
日程/8月2日(土)・3日(日)
場所/新開地アートひろば 2F ホール
作・演出/藤田貴大
音楽/原田郁子 衣装/suzuki takayuki
出演/青柳いづみ、小泉まき、仲宗根 葵、成田亜佑美
料金/大人3,000円(全席自由) ほか 発売中
公式サイト/https://www.kobe-bunka.jp/
問い合わせ/☎︎078-351-3349(神戸文化ホールプレイガイド)
☑第十回あべの歌舞伎「晴の会」『夏祭浪花鑑』
人間国宝が監修・指導、
大阪が舞台の名作歌舞伎
関西在住の歌舞伎俳優たちが、人間国宝・15代目片岡仁左衛門の監修・指導の下で公演を行う「晴(そら)の会」。今回は祭りの時期の大阪の町を舞台に、さまざまな男女の運命が激しく動いていく傑作『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』を上演する。仕えていた主人に忠節を尽くす男・団七が、その息子を守るために行動していく中で、熱い友情を築いたり、思わぬ罪を犯す姿が描かれる。とりわけ団七があくどい義父と泥田でもみ合う「泥場(どろば)」と呼ばれる大立ち回りは、最大の見どころ。映画『国宝』で歌舞伎に興味を持った人も、歌舞伎小屋より敷居がぐっと低い公演なので、初めての一本にお薦めだ。
第十回あべの歌舞伎「晴の会」『夏祭浪花鑑』
日程/8月1日(金)~4日(月)
場所/近鉄アート館
作/並木千柳、三好松洛、竹田小出雲
監修・指導/片岡仁左衛門 演出/山村友五郎 改訂/亀屋東斎
出演/片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎、坂東竹之助 ほか
料金/一般8,500円(全席指定) ほか ※当日は+500円 発売中
公式サイト/https://kintetsuartkan.jp/
問い合わせ/☎︎06-6622-8802(近鉄アート館)
☑『「新 画狂人 北斎」-2025-』
新たに寺西拓人も登場!
天才絵師の生きざまを描く
『富嶽三十六景』などで知られる天才浮世絵師・葛飾北斎の壮絶な人生を、宮本亞門の演出で描き出した名作が、脚本を一新して帰ってくる! 北斎に尊敬の念を抱きながらも、幕府の改革によって追い詰めることになる奉行・鳥居耀蔵など、新たなキャラクターが多数登場。北斎の絵画への情熱と、人間の本当の幸せとは?という問いを、より浮かび上がらせる世界にするという。北斎は2023年度版に続いて西岡德馬が演じ、耀蔵は近年舞台での評価をメキメキと上げているtimeleszの寺西拓人が務める。絵画の道に、狂おしいほど人生をささげた北斎の生きざまを、宮本とキャストたちがどのように描き出すかに注目したい。
『「新 画狂人 北斎」-2025-』※完売注意・前売券をCHECK!
日程/10月31日(金)~11月3日(月・祝)
場所/サンケイホールブリーゼ
演出/宮本亞門 脚本/池谷雅生
出演/西岡德馬、雛形あきこ、寺西拓人、廣瀬智紀、水谷あつし ほか
料金/一般11,000円(全席指定) ※8月9日(土)発売
公式サイト/https://sankeihallbreeze.com/
問い合わせ/☎︎06-6341-8888(ブリーゼチケットセンター)
☑『「りすん 2025 edition」リ・クリエイションツアー』
物語と現実の境を見失う、
異色の小説を舞台に
「文学的テロ」と評された、芥川賞作家・諏訪哲史の小説を、名古屋から数々の驚愕の舞台を送り出し、昨年逝去した天野天街が舞台化した作品。2023年に再演したバージョンを、関西で初めて上演する。白血病で入院中の妹と、血のつながらない兄が病室で交わすたわいない会話。それを同室の患者が書き起こし、小説にしようとしていることを知った兄妹は、作家と読者(観客)に対抗し始める。原作が最も描こうとした「フィクションの功罪」を、演劇ならではのメタフィクショナルな手法を駆使して、見事に変換した傑作。何が現実で何が虚構だったのか? を思わず見失う奇妙な浮遊感は、間違いなく唯一無二の体験だ。
『「りすん 2025 edition」リ・クリエイションツアー』
日程/8月2日(土)・3日(日)
場所/AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)
原作/諏訪哲史(『りすん』講談社文庫刊)
脚色/天野天街 演出/小熊ヒデジ、天野天街 出演/加藤玲那、菅沼翔也、宮璃アリ
料金/一般3,800円(全席自由) ほか 発売中
公式サイト/https://www.aihall.com/
問い合わせ/☎︎072-782-2000(アイホール)
※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。
※この記事は2025年9月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。