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今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!

文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、ジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶をたしなむこと。

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。

☑舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』

名作宇宙物のオマージュにあふれたSFコメディー

最近は映画でも漫画でもあまり見られなくなった、宇宙が舞台のSF作品。しかもコメディーとなると、手掛ける人はさらに少ないのが現状だ。そんな忘れられた荒野のような世界に、京都の劇団・ヨーロッパ企画を主宰する作家・演出家の上田 誠と、元アイドルからお笑い芸人まで、ジャンルを超えた11人の俳優たちが挑戦する。
 舞台は、二人の航海士らを乗せた宇宙船。そこに宇宙ならではのトラブルの数々が巻き起こり、副操縦士・ユーリはそれらを解決しようと奮闘するが……。普通ならパニック&サスペンスになりそうなシチュエーションを、数々の宇宙物の名作をオマージュにしたネタや、ラップ調の音楽に乗せて、明るい笑いたっぷりに描いていく。ユーリを演じるのは、ドラマ『パーセント』(NHK)などの主演作品が相次ぐ伊藤万理華。相方の「宇宙ガチ勢」の操縦士・キリトは、コメディーの舞台は初となる井之脇 海が演じる。ほかにもミュージシャンのシシド・カフカや、お笑いコンビの男性ブランコ&かもめんたるも登場。近年は映像の脚本も評価される上田だけど、コメディーに振り切った演劇の舞台が、やはり一番の得意技。広大な宇宙に思いをはせながら、思い切り大笑いしよう!

舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』
日程/6月6日(金)~8日(日)
場所/森ノ宮ピロティホール
脚本・演出/上田 誠 出演/伊藤万理華、井之脇 海、シシド・カフカ、浦井のりひろ・平井まさあき(男性ブランコ)、槙尾ユウスケ・岩崎う大(かもめんたる) ほか 
料金/一般9,800円(全席指定)
公式サイト/piloti-hall.jp 
問い合わせ/0570-200-888(キョードーインフォメーション)

☑『坂東玉三郎特別公演 竹久夢二生誕百四十年記念』

最高峰の女方と竹久夢二が出会うスペシャルな舞台

現代の歌舞伎界を代表する女方の一人・坂東玉三郎が、今年で生誕140年を迎えた画家・竹久夢二をテーマにした特別公演を開催。夢二が愛した女性たちの語りを通じて、彼の素顔を浮き彫りにする映像『夢二慕情』のあとに、長崎の風景を描いた連作を基にした舞踊劇『長崎十二景』を上演する。「夢二さんの絵の雰囲気を壊さないよう、舞ったり語ったりするのが大事。女方という虚構の肉体が演じることで、良い誤解が生まれてくれたら」と玉三郎。大正ロマンの美を描いた夢二の世界と、時に女性より「女性らしさ」を体現する玉三郎が一体となった世界は、神々しいほど美しい空間となるはず。他に『口上』、地唄『残月』も上演。

『坂東玉三郎特別公演 竹久夢二生誕百四十年記念』
日程/6月12日(木)~16日(月)、18日(水)~22日(日)
場所/南座
出演/坂東玉三郎、小波津亜廉
料金/一等席15,000円(全席指定) ほか 
公式サイト/www.kabuki-bito.jp
問い合わせ/075-561-1155(南座)

☑ミュージカル『二都物語』

人気俳優二人が続投! 国境を超えた壮大なドラマ

井上芳雄&浦井健治という、日本のミュージカル界を代表する人気俳優が共演した伝説の舞台が、12年の時を経てよみがえる。原作は『クリスマス・キャロル』などで知られるチャールズ・ディケンズの小説。18世紀のイギリスとフランスを舞台とし、二人の男と一人の女が、フランス革命期の動乱に翻弄されながらも、それぞれの生き方を貫いていく姿を描いていく。フランスの亡命貴族・ダーニー役の浦井も、ダーニーと瓜二つの弁護士・カートン役の井上も、初演で好評だった役を続投する。12年分の経験を重ねた演技と歌唱で、原作が持つ「精一杯生きることの尊さ」というメッセージが、より伝わる舞台になるだろう。

ミュージカル『二都物語』
日程/6月7日(土)~12日(木)
場所/梅田芸術劇場メインホール
脚本・作詞・作曲/ジル・サントリエロ 
追加音楽/フランク・ワイルドホーン 原作/チャールズ・ディケンズ 
翻訳・演出/鵜山 仁 出演/井上芳雄、浦井健治、潤 花 ほか 
料金/S席16,000円(全席指定) ほか ※土・日はS・A席+1,000円、B席+500円 
公式サイト/www.umegei.com
問い合わせ/06-6377-3800(梅田芸術劇場)

☑THE ROB CARLTON 19F『ENCOUNTERS with TOO MICHI』

京都の注目劇団が送る、笑える「未知“過ぎ”との遭遇」

古き良きアメリカン・コメディーを思わせる、洒脱だけどほぼ意味のないマシンガントークが大きな笑いを生み出す、京都発の喜劇の劇団・THE ROB CARLTONの新作。異星人との遭遇という思わぬ事態に対して、プレジデント、セクレタリー、ジェネラル、プロフェッサーの4人が対応を考えていく姿を描く。権威的かつ大真面目な人間たちが、人類の命運がかかった大問題に直面したことで、どんどんズレが生じていく……という、いくらでも社会風刺の方向に持っていけそうなシチュエーションを、あえて純粋な喜劇として見せていくのがROBの持ち味。いわゆるボケ・ツッコミとは一味違う、変わった笑いを求めている人は必見!

THE ROB CARLTON 19F『ENCOUNTERS with TOO MICHI』
日程/6月20日(金)~22日(日)
場所/ABCホール
作・演出/村角太洋 
出演/THE ROB CARLTON(村角ダイチ/ボブ・マーサム)、高阪勝之、森下 亮
料金/一般4,000円(全席指定) ほか※当日は+500円
公式サイト/www.rob-carlton.jp
問い合わせ/stage@rob-carlton.jp(THE ROB CARLTON)

☑イキウメ『ずれる』

不思議な現象から日常を見つめ直す群像会話劇

さまざまなオカルト現象をテーマにした人間ドラマで高い人気を誇り、『太陽』『散歩する侵略者』など映画化された作品も多い、東京の劇団・イキウメ。これ以降、不定期開催になるという新作本公演は、劇団員5人だけの濃密な会話劇を見せる。豪雨災害が起こった後の住宅地に集まった、社長や環境活動家や整体師などの男たち。野生動物の出没が増えると同時に、何か得体の知れない物が立ち上がっていく……。わっ! と驚かせるというよりも、自分の足場がいつの間にか崩れていくような恐怖を感じつつ、今生きていることの不思議や感謝が自然と湧き起こる。多くのクリエーターをとりこにする世界を、ぜひこの機会に。

イキウメ『ずれる』
日程/6月12日(木)~15日(日)
場所/ABCホール
作・演出/前川知大 
出演/浜田信也、安井順平、盛 隆二、森下 創、大窪人衛
料金/一般7,500円(全席指定) ほか ※追加公演(6月13日(金)14:00) 
公式サイト/www.ikiume.jp
問い合わせ/0570-200-888(キョードーインフォメーション)

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。

※この記事は2025年7月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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