イラストレーターの久保沙絵子が、毎月1冊をピックアップして、勝手にその本の表紙を制作する企画。イラストが描き上がるまでを追いかけます。3冊目は、アニメ化でも話題となった森見登美彦の代表作『四畳半神話体系』です。

久保沙絵子/イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。
連載3作目の『四畳半神話体系』。この小説は、勉学に励まず、不満と後悔を力に変えて大暴れする京都の大学生の話です。キラキラとしたキャンパスライフとは程遠いのに、なぜだか無性に主人公の大学生生活がうらやましくなる1冊です。
著/森見登美彦
KADOKAWA (角川文庫)
『四畳半神話大系』の主人公も例に漏れず、生きていると、大小さまざまな後悔が散らばりがちですが、この小説を読むと、”終わり良ければ全て良し”という言葉を思い出します。言葉として知っていることに加えて、何かの体験(ここでは読書)を通して言葉を自分の中に染み込ませることは、いろんなことに負けない自分になる方法のひとつだと思います。
“終わり良ければすべて良し”の、何を終わりとするかは人それぞれですが、個人的には、こうなりたいと思ったことが実現できた到達点を終わりとしたいです。
小説の中で、主人公は、ちゃんと自分が望む自分の状況を自分の中にしっかりと持っています。偉いなぁと思います。
主人公の毎日は、不満だらけです。
不満を言うことは、ネガティブなことに思えますが、今の自分の状況が望んでいるものと違うということを自覚し、そこに甘んじない意思みたいな、じっとりとした強さを感じます。
今、自分の中にある不満を洗い出してこの小説の主人公のように、ブツブツ言いながらもメチャクチャに動いてみるのも楽しそうです。
そして完成!
こちらも完成!
スケッチの後、小説で主人公が明太子スパゲティを食べたお店のモデルとされる”カフェ・コレクション”に行きました。注文したのはもちろん明太子スパゲティ。
おいしくてリーズナブルで、『四畳半神話大系』の聖地巡礼としてもお薦めです。

久保沙絵子
大阪在住、雑誌やウエブなどで活躍中のイラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチの作風が特徴。線の質感にこだわり、作品はすべて一発書き! 制作は、生命保険の粗品のスヌーピーのコップで白湯を飲みながら。また、街中でスケッチすることも。もし、見かけたらぜひ声をかけてください。
- Instagram@saeco2525
※過去記事は、ハッシュタグ #久保沙絵子の勝手に表紙作ります をクリック