今月のブックショップスタッフ
［本は人生のおやつです!!］坂上友紀さん

兵庫・朝来［本は人生のおやつです!!］

『我が愛する詩人の伝記』

著／室生犀星
講談社（講談社文芸文庫）　1,760円

詩人として出発しながら、詩と決別し小説の道を歩もうとした昭和の文豪・室生犀星。しかし彼の詩作は生涯途切れることはなく、また“詩人は骨の髄まで詩人だな！”と感じる人物評も残しています。それが本書。生前交流のあった萩原朔太郎ら11人の詩人について犀星が紡ぐ言葉の一つ一つに、言葉と人とに真摯（しんし）に向き合う犀星の姿が浮かび上がるようで、“評するとはこうあるべきか!”と感動します。詩人って、言葉って、本当にすごいです!

『山椒魚』

著／井伏鱒二　
新潮社（新潮文庫）　539円

Always『山椒魚』!
私たちは生きていく

弟子の太宰治も一読でとりこになった、デビュー作にして“井伏鱒二の文学の全てが詰まっている! ”と言いたい短篇小説『山椒魚』は、ささいなことをきっかけに、山椒魚がとんでもない目に遭う話です。考えるだに悲惨なのですが、そういうことってなくもない。となると“それでも生きていくのが人生であり、そう感じさせてくれるものこそ文学だ!”と私は思います。この本を読めばいつでもそういう気持ちが心と腹に、ずしんと響いてくるのです。