このアーティスト、要チェック!
今月のNEWSな人
取材・文/竹内 厚 写真/小檜山貴裕
ザ・トライアングル
『坂本森海:火と土と食べたいもの』
期間:開催中~3月16日(日)
場所:京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル
陶芸にまつわる
プロセスの全てを作品に
学生時代こそ器作家のもとで手伝いをしていたが、卒業制作から「それって器なの!?」という作品をすでに作り始めていたという坂本森海さん。卒業後は、俊英のアーティストが集う共同アトリエ[山中suplex]を拠点として、陶芸と現代美術の境界線で制作を続けている。
「僕がただあまのじゃくなだけかもしれないですけど、陶芸と美術のどちらに対しても距離をとってきたところがあります。工房で職人的に器を作り続けるには自分は飽き性だし、美術としていわゆるホワイトキューブで展示するとなると、手に持って口につけて何かを飲むといった、実際に物を使うことで感じられる陶芸のいろんな側面が削られてしまうなという感覚もあって」
陶芸の原点となる土を求めて、各地に足を運んで粘土を採取。成形した器を焼く窯も自ら制作して、その窯で器だけでなく食べ物を焼いたり、茶の湯をたてたりというところまでパフォーマンスとして示して見せたことも。
「採取した土を焼くだけでも、買ってきた土とは違う現象が起こるので、最初はそれを楽しんでたんですけど、だんだんその土地の成り立ちとか、土を採取するプロセスや経験も見せたいと考え始めたところから、パフォーマンスやインスタレーションといった美術的なフォーマットも用いるようになりました。主題として陶芸を扱っていることは変わらないので、象徴的なオブジェクトとして窯から自分で作ることも多くて、それこそその場で焼成から見せたいけど、火を使ってもいいという展示環境はほとんどなくて……」
陶芸の大きな要素である土、そして火。そのプロセスに含まれる面白さをどう表現に結びつけられるか。当然、記録映像なども組み合わせながら作品を発表してきたが、それだけではこぼれ落ちてしまうものが少なくない。
「記録したものをただ上手に展示して見せてもリサーチャーのようになってしまうという難しさがあります。表現したいのはもっと感覚的なところでもあるから、毎回、思いついたやり方でやっていて大変……けど、素人ぽさとか不安定な状態はむしろ好きだし、それでいいと思ってるんですけどね」
1月からの個展では、そのプロセスの部分をクレイアニメーションにして見せるという。もちろんアニメの制作経験もそれほどあるわけじゃない。
「[山中suplex]にいるという環境もとても大きくて、いろんな人に相談しやすいんです。今回も思いつきで手を出したクレイアニメーションですけど、実は結構、可能性を感じていて。陶芸技法としてのクレイアニメというのをまだまだ追求することはできそうだなと思っています」
2024年は、インド北東部のナガランドに滞在したことから食への意識が高まり、今回の個展では豚のと殺をやってみたいとも考えていたのだそう。
「それを実現するのは全然無理だったんですけど、そういう食肉としての動物との距離も陶芸で乗り越えていけないかなと考えているところです」
坂本森海 さかもとかい
1997年長崎県生まれ。京都と滋賀の県境にある[山中suplex]に在籍。母・坂本由美子は1990年代に紀行本『ナガランドを探しに』(社会評論社)を刊行。
ザ・トライアングル
『坂本森海:火と土と食べたいもの』
期間:開催中~3月16日(日)
場所:京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル
- 電話番号075-771-4334
- 住所京都市左京区岡崎円勝寺町124
- 営業時間10:00~18:00
- 定休日月(祝の場合は開館)
- 観覧料無料
- アクセス地下鉄東山駅から徒歩8分