レトロで未来的な、ラテンポップの最新型
☑『Cosa Nuestra』/Rauw Alejandro
*輸入盤
発売中 2,690円
2020年代のラテンポップの先端を走り続けるプエルトリコ出身の若きスターの新作は、古き良きサルサやメレンゲとレゲトン~ラテントラップ以降の最新サウンドの大胆な融合を試みたものに。ウィリー・コローンらの先人への敬愛に満ちたビンテージな生音と、Bad BunnyやPharrell Williamsら豪華客演陣を迎えてのダンサブルなビートが時空を超えて同居した境地は、ゴージャスにしてスリリング。次世代スター勢の中でも、やはり格が違います。
これが好きなあなたには……
☑『The Hustler』(1968年)/Willie Colon
サルサ黎明期を支えた偉人による、ハードボイルドかつルードな魅力にあふれた1968年発表の名作。Rauw Alejandroの新作のオープニング曲は、このアルバムに収録された「Que Lio」からの大きな影響を感じさせる。ぜひ聴き比べてみて!
文/吉本秀純
大阪市在住の音楽ライター。大阪・関西万博の開催に伴い、世界各国からさまざまなミュージシャンがやって来るのを楽しみにしています!
北海道・苫小牧拠点のバンドの、「今」の音
☑『Bout Foreverness』/NOT WONK
*Bigfish Sounds
2月5日(水)発売 3,300円
北海道・苫小牧にて活動を続けるバンドの、4年ぶりのアルバムとなる本作。“NOT WONK流BOSSA”としてシングルリリースされた「Embrace Me」、エスノなフレーバーが香る「Same Corner」のほか、時折日本語詞も混ざる楽曲群は、ジャンルレスな広がりを帯びながらもNOT WONKのサウンドに帰していく。それはプリミティブな感覚に根を下ろしたバンドにしかなし得ないことであり、アルバム全体から音楽を超えた人間的親しみを感じるゆえんだろう。
これが好きなあなたには……
☑『Bewitched』(2023年)/Laufey
上記アルバムの有機的な音像から想起した一枚。ジャズやクラシックを正統に踏襲し、ビンテージに限りなく肉薄しながらも、洗練された歌の輪郭と穏やかな歌声でその多彩さを包み、今日的なポップスの風格を確かなものにしている。
文/原田美桜
バンド・猫戦の作詞曲とボーカルを担当する、猫とワインを愛する日韓ミックスルーツ。2月に新曲が出ますよ、チェックプリーズ!
死生観を情景に宿す言葉たち
☑『Bittersweetness』/イルリメ
*Spotifyほかデジタルリリース
2月12日配信
死との向き合い、死者への弔い、そして現世に残された者の中にある喪失と意識の変化をビートに刻む。イルリメ名義ではなんと15年ぶりとなったフルアルバムは、彼のそうした体験と実感があけすけに紡がれるリリックと、メロウで浮遊感のあるトラックがしなやかに交わり合う心地よさがある。2023年に発表されたミックステープ『鴨田潤』から受け継がれたそのありようは私小説的だが、情景の切り取り方は繊細かつ巧みで、リスナーの人生や物語にも寄り添えるエネルギーにあふれる。
これが好きなあなたには……
☑『片想インダハウス』(2013年)/片想い
イルリメ「The Reason To Dance」(新作に収録)の原曲である「踊る理由」を含む片想いのデビュー作。男女ツインボーカルとホーンセクションを擁する8人組のにぎやかなソウル~ダンスポップは、寒い心を温かく包みこんでくれる優しさがある。
文/森 樹
編集者・ライター。年末は[味園ユニバース]で君島大空を観て、[銭ゲバ]で飲んで、[NOON+CAFE]でEGO-WRAPPIN’とGOMA。大阪を堪能!