STAGE_HE_202408-100

今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください

☑『blast ブラスト!』

音も視覚も世界最高峰の舞台が、久々に日本上陸

天を突き上げんばかりにとどろくブラスセクション! 音速か? と思うほどの速さで響くパーカッション! 信じられないような神業でスロー&キャッチされるフラッグやバトン! 世界を驚愕させたライブパフォーマンスの傑作『blastブラスト!』オリジナルバージョンが、コロナ禍を挟んで10年ぶりに日本に帰ってくる。
 本作の最大の特長は、音楽に詳しくなくても分かるほど桁外れの演奏技術と、世界大会優勝レベルのパフォーマーすら「難しい」と言うほどのパフォーマンスを、舞台上で融合させたこと。しかしその技術を一方的に見せつけるのではなく、キャストたちがステージを降りて観客と絡んだり、休憩中にロビーでも演奏&交流するなど、舞台と客席の壁を取っ払っていく工夫も多い。この「超絶技巧」と「おもてなし精神」の二つこそ、『blastブラスト!』のリピーターが多い理由なのだ。「音圧のすごさと、ホームパーティのような雰囲気が一緒になっているのが魅力。2時間のジェットコースターに乗ったような感覚で楽しんでほしいです」とは、20年以上出演し続けている伝説のパーカッション奏者・石川 直の言葉。映像で見るだけでは絶対に伝わりきらない、体中に響く生演奏の迫力と、キャストたちとの触れ合いの楽しさは、体験する価値あり!

『blast ブラスト!』
日程/8/21(水)~25(日)
会場/オリックス劇場
出演/blast ブラスト!来日カンパニー、石川 直(パーカッション)、米所裕夢(トランペット)、渋田華暖(トランペット)、丹澤里穂菜(ヴィジュアル・アンサンブル) ほか 
料金/S席12,500円、A席7,500円、B席5,500円(全席指定) ※チケット発売中 blast-tour.jp/
問い合わせ/キョードーインフォメーション(☎︎0570-200-888)

☑少年王者舘 第40回本公演「それいゆ」

甘く残酷で懐かしい、万華鏡のような異世界へ

今や演劇でもポピュラーとなったプロジェクションマッピングや、「アバンギャルディ」の先駆けとも言えるような集団ダンスなど、様々な異種表現をいち早く演劇に取り入れてきた、名古屋演劇界の奇才・天野天街。彼が主宰する劇団の本公演が、実に7年ぶりに関西でも実施される。「Soleil(太陽)」から連想される昭和の風俗や歴史的な悲劇などを、日本語を遊び倒した台詞&びっくり箱のような仕掛けの数々で、奔放にコラージュしていく。悪夢的だけど妙に愛しく、初めて見るような光景なのに、なぜか胸が詰まるような懐かしさに満ちた世界。この絶対的に唯一無二な舞台、ハマる人には激しくハマるはず!

少年王者舘 第40回本公演「それいゆ」
日程/8/9(金)~11(日)
会場/THEATRE E9 KYOTO
作・演出/天野天街
出演/夕沈、山本亜手子、雪港、小林夢二、宮璃アリ、池田 遼 ほか
料金/前売4,000円、当日4,500円(22歳以下は各2,000円引・全席自由席) 発売中 www.oujakan.jp/soleil.html
※8/10(土)18:00回アフタートークあり、ゲスト/上田 誠(ヨーロッパ企画) 
問い合わせ/少年王者舘(☎︎090-7518-9890)

☑PARCO PRODUCE 2024『オーランド』

全女性必見!? 宮沢りえが演じる女流文学の傑作

映像作品だけでなく、舞台女優としても名だたる巨匠たちに愛されている宮沢りえ。今回は、男性から女性になった貴族・オーランドという、たぐいまれなキャラクターに挑戦する。原作は、文学史に残る女流作家、ヴァージニア・ウルフの代表作。眠りから覚めると、女性に変わっていたオーランドは、30代の姿のままで400年近い時を生きていく。そんな彼(彼女)が経験する数多の出会いと別れを、宮沢+4人の男優だけで描き出す。演劇ならではの演じ分けの表現と、はかなさと強さをあわせ持つ宮沢の存在感を通じて、女性の理想とは? 真の自分とは? を問いかける舞台。特に女性には観ておいてほしい一本だ。

PARCO PRODUCE 2024『オーランド』
日程/8/8(木)~11(日)
会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
原作/ヴァージニア・ウルフ
演出/栗山民也
出演/宮沢りえ、ウエンツ瑛士、河内大和、谷田 歩、山崎 一
演奏/越川 歩(ヴァイオリン)
料金/12,000円(全席指定) ※チケット発売中 kyodo-osaka.co.jp/search/detail/8426 
問い合わせ/キョードーインフォメーション(☎︎0570-200-888)

☑能 狂言『鬼滅の刃』

あの人気漫画が、幽玄の世界に生まれ変わる

妹・禰󠄀豆子を人間に戻すため鬼殺隊に入隊し、鬼を狩る少年・竈門炭治郎とその仲間たちが、様々な鬼たちと死闘を繰り広げる姿を描いた大ヒット漫画を、能 狂言として上演。仕掛け人は、日本の伝統芸能と現在演劇を融合させた、数々の舞台で高く評価されている狂言師・野村萬斎。「人も鬼、鬼も人」というテーマのもと、原作の「下弦の伍・累」までのエピソードを、五つの能&狂言に分けて見せる。炭治郎の「水の呼吸」などの描写を、能ならではの技法を用いてどう立体化するのかは、伝統芸能を知らずともわくわくできるだろう。特にラスボス・鬼舞辻󠄀無惨を演じる萬斎の、本気で観客たちをゾッとさせた成り切り度の高さは必見!

能 狂言『鬼滅の刃』
日程/8/21(水)~25(日)
会場/SkyシアターMBS
原作/吾峠呼世晴(集英社ジャンプコミックス刊)
監修・出演/大槻文藏
演出・謡本補綴・出演/野村萬斎
作調/亀井広忠
原案台本/木ノ下裕一
出演/大槻裕一、野村裕基、野村太一郎、福王和幸・福王知登(交互出演) ほか
料金/12,500円(全席指定) 発売中 kimetsu-nohkyogen.com
問い合わせ/キョードーインフォメーション(☎︎0570-200-888)

☑『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』

阿部サダヲや黒木 華らが挑む、松尾スズキの代表作

人間の差別意識やトラウマなどの闇の部分をテーマにしつつも、それらをギリギリの笑いに転化する作風で、カリスマ的な人気を誇る劇作家・演出家・俳優の松尾スズキ。彼が20代の時に発表した代表作の一つが、新たなサブタイトルを付けた上でよみがえる。薬剤被害で障がい者となった少年・フクスケをめぐり、病院関係者や歌舞伎町の裏社会で生きる人々の思惑が描かれていく群像劇。今回は、阿部サダヲ&黒木 華が演じる病院の警備員夫婦の視点から、この狂騒の世界を捉え直すそうだ。一見デタラメな展開の中に、人間の悪も善も厳しいほどまっすぐに描き出していく、異色のヒューマン・ドラマに圧倒されよう。

『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』
日程/8/9(金)~15(木)
会場/ロームシアター京都 メインホール
作・演出/松尾スズキ
出演/阿部サダヲ、黒木 華、荒川良々、岸井ゆきの、皆川猿時、松本穂香、菅原永二、オクイシュージ、松尾スズキ、秋山菜津子 ほか 
ミュージシャン/山中信人(三味線)
料金/S席13,000円、A席9,500円(全席指定) ※チケット発売中 kyodo-osaka.co.jp/search/detail/8276
問い合わせ/キョードーインフォメーション(☎︎0570-200-888)

※チケットの販売状況、当日券については各公式サイトをご確認ください。

※この記事は2024年9月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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SAVVY11月号『神戸』
発売日 2024年9月21日(土)定 価 900円(税込)