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このアーティスト、要チェック!
今月のNEWSな人

取材・文/竹内 厚 写真/小檜山貴裕

『ダイヤモンドから夢を放つペルセウス』

期間:1月11日(土)~2月11日(火)
場所:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

生活のリアリティを
絵画制作と展示にも反映させて


 京都の町家で暮らしながら制作している西原彩香さん。アトリエにしているすぐ隣りのリビング空間には、自身の作品だけでなく、友人の作品や作家ものの洋服や雑貨、推しグッズまでが混在。よく見れば、照明器具や机にドローイングが直接描かれていたりもして、生活と制作がとても近い。
 「ここはリフォームOKな物件なのであれこれ自由にできるというのもあります。絵をきれいに並べていくのは苦痛なタイプな自覚はあって。安心できる巣作りのようなものかもしれません。作品、生活の道具、インテリア、服やアクセサリーが混在し、それらをお客さんが泊まりにきたりして片付ける。ものが移動していく行為と変わっていく空間の変化を展示方法としてアウトプットしたこともあります」
 そんな西原さんの作品は「軽さ」を主題とした絵画。キャンバスに描く作品だけでなく、インスタレーションを含めたさまざまな形での発表が続いているが、その中心にあるのはやっぱり“絵画”だという。
 「絵画より軽くて、画像より質量がある状態を目指していると言ってきました。多くの絵描きたちのように1枚の画面で魅せるような作品を作るのが難しいと思ったこともスタートにはあります。絵画の長い歴史の重さ、鉛などを含んだ絵具自体の重さにも違和感も感じていました」
 いわゆる絵画と画像の間くらい。インターネットで得た画像をモチーフにしたり、制作の前段となるドローイングを手元のスマートフォン上で描くなど、制作環境にデジタルツールを使うのが当たり前のことになっているのも、彼女が追求する主題の大きな理由にもなっているよう。
 「家で寝転がってスマホに指でドローイングを描いてた時期もあります(笑)。スマホだとどこでも描けるという利点があるし、紙に描くときに感じる摩擦が耐えられなくて。それも今は許容できるようになりましたけど」
 キャンバスに描くときも筆を介さず、チューブから絞るようにしてダイレクトに絵具を乗せて、スマホ操作の滑らかさをそのまま絵画制作の方法につなげてきた。と同時に、スマホの画面、自宅の磨りガラスの奥に見えるものといった「透過光を通して見た景色」をモチーフにしてきた。最近では、そのような媒介性の象徴として「ブルーライトの天使」というキーワードを得て、それを題材に描いている。
 「ここ2〜3年のY2Kなどのファッション文脈でも天使モチーフは見受けられるし、自分の好きなマンガやアニメにもあふれています。どこでもどんな時も形を変えて存在している天使を横目に見ながら、私は手を動かしていくことで、自分なりの像を探しています」
 そして、著名な美術史家による美学書にも触発を受けた1月のグループ展では、油絵具に回帰した新作へ挑戦するという。
 「絵画の作家として、次世代のリアリティのもとでできる絵画を軽やかに描きたい。モダニズム絵画に落書きしてる感覚かもしれません」

キッチンの窓に描かれていたドローイング。普段の生活でも「ブルーライトの天使」を追い求めている。

アクリル絵具によるボーダーラインと白く残した地の部分にイメージが浮かび上がる《The light images》シリーズの1作。

西原彩香 にしはらあやか
1992年、愛知県生まれ。本展は美術史家・岡田温司の著作『半透明の美学』(岩波書店)から着想を得て、美術批評家・飯盛 希が企画したもので、出品は阪本結、下村悠天、橘葉 月、西原彩香、峰松沙矢の5名。

『ダイヤモンドから夢を放つペルセウス』
期間:1月11日(土)~2月11日(火)
場所:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA

店舗情報
京都・京都駅
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
  • 電話番号
    075-585-2010
  • 住所
    京都市下京区下之町57-1 京都市立芸術大学C棟1F
  • 開館時間
    10:00~18:00
  • 休館日
    月曜、1/14、1/24~26※1/13、2/10は開館
  • 入場料
    なし
※この記事は2025年2月号からの転載です。記事に掲載されている情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
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