このアーティスト、要チェック！木葉絢子展覧会『天使 ZURA 展』12月7日～

24.12.04

このアーティスト、要チェック！今月のNEWSな人

取材・文／竹内厚　写真／西島渚

『天使 ZURA 展』

期間：12月7日（土）～12月22日（日）
場所：ギャラリー佑英／gallery milu

ただの石ころが好き、から
水石を“自分ナイズ”しての制作へ

“愛石家”なる肩書きで活動する木葉絢子さん。そのキッカケはこっとう市で水石（すいせき）に出会ったこと。水石とは、台座などに自然の石を置いて鑑賞するものだが、その世界は盆栽ファンよりもなお高齢の男性が集っている印象がある。
　「そうなんです。３０代でたまたま水石を知って、それから水石展に足を運んだりいろいろ調べたりしていると、ちゃんとルールがあって、長年築かれてきた日本文化なんだと分かってきたけど、どれも同じに見えてしまっていて……そういう見せ方とか含めてもったいないなと思うようになりました」
　石好きだからこそ感じた、どこかで時間が止まってしまったような水石界わいの可能性。このことをよく通っていた大阪のギャラリー［アシタノシカク］で話したところ、じゃあ自分のやり方で作ってみたらいいやん、で、うちで展示したら、と促されたところから、木葉さんなりの制作活動が始まったという。
　「よく展覧会を見に来るだけのサラリーマンの自分に、展示まで勧めてくれたのがめっちゃうれしくて。で、何も考えずにやります！って（笑）」
　初個展こそいわゆる水石マナーにものっとった木葉さんだったが、制作と展示を重ねるうちに水石の枠を大きくはみ出した独自の世界へ踏み出していく。
　「オーソドックスな水石って、作るのが大変だし面倒だし性に合わなくて（笑）。これでは続けられないと思って、石に木や古物を組み合わせはじめました。自分が好きな物を使うことでやっと“自分ナイズ”できるかなって」
　もはや石＋αでさえなく、石の代わりに化石や骨も使いながら、古物に羽、木の実、コルクに文房具、ボール……とあたかも森羅万象を組み合わせて新世界を創造しているかのような、“エキセントリック水石”が誕生した。
　「最初は私が拾った石ころも使ってたけど、もともと自分が好きで拾った石を使ってたからそれが売れていくのが悲しくて、鉱物を買って使うようになりました。結局、拾った石ころはそのまま愛でるのが一番で。人間が何をやってもそれには勝てないというのも分かってきたので、私のやってることは水石文化への入口になっていればいいなというくらいの気持ちです」
　まさしく愛石家。石へのこのリスペクトの姿勢は一貫して変わらない。一方で、立体コラージュともいえる制作スタイルにたどり着いたこともあって、紙のコラージュ作品や、最近の個展では陶芸作品まで披露している。
　「水石のことに入れ込み過ぎていたので、一度石から離れるほうがいいかと思って。紙のコラージュも陶芸も箸休めくらいの気持ち。もともと美術の勉強は何もしてないし、そういうのは気にせず何でもやってみようという潔さというのかな、誰とも競合してるわけじゃないからやれてるのかもですね」
　１２月は、自身もアトリエを置く新坂ビルの二つのギャラリーでの合同展に参加。同じくビル内にアトリエを持ち、ときに企画展なども一緒に行っている画家の岩瀬ゆかと考えた空間構成で作品を展示する。