今月、スパイされる人
田村芽生 さん
テーマは、“小さな気付きをくれる本” 3冊
☑1.『ひとりだと感じたときあなたは探していた言葉に出会う』
著/若松英輔 亜紀書房 1,760円
☑2.『スイマーズ』
著/ジュリー・オオツカ 訳/小竹由美子
新潮社(新潮クレスト・ブックス) 2,035円
☑3.『デザインの仕事』
著/寄藤文平、 木村俊介 筑摩書房(ちくま文庫) 924円
言葉の話、小説、デザインの本……人生のヒントになる本
「少し悩んでいたときに、仕事関係でお世話になっている目上の人から教えてもらった本です」と田村さんが教えてくれたのは、随筆家・評論家の著者がつづる「言葉」にまつわる1冊。
「『人生は深まるものであり言葉を使って深く掘り下げることができる』とか『美しいものには全て悲しみがある』とか、響く文章がいろいろありました。目先の幸せみたいなものも大事だけど、そればかりじゃないんだ、と思えるような……。『人生の支えになるような自分だけの言葉がある』という文章を読んで、“座右の銘”とは少し違うのかもしれませんが、探す楽しみが生まれました」。ちなみに、本の影響もあって、自分の中の気持ちを表現するために詩作にもトライしてみようかなと思案中だそう。
2冊目は日系アメリカ人の作家による小説。舞台はアメリカの公営プール。地下に作られたそのプールには、年齢や職業もさまざまな人が泳ぎに訪れる。地上でいろいろ背負っているものを脱ぎ捨てて、自由に泳げる場所として描かれるプールだが、やがてその底にひびが入り、閉鎖の空気が漂い始める。「通っている女性の一人も認知症が進み、やがて娘や家族との思い出も薄れ始めて、まるでプールの底のように記憶が揺らぎはじめます。限りある日々の悲しい美しさのようなものが伝わってきて、考えさせられました」
3冊目は、書籍の装丁や雑誌広告の制作に携わり、イラストやグラフィックデザインなどの分野でも活躍するアートディレクターによる著書。「私自身は全くデザイン関連の仕事をしているわけではありませんが、アイデアが出ないときの進め方など、“仕事を続けていく”という観点でヒントになることも多かったです。あとは知らない仕事のジャンルの第一線の人の、ちょっぴり泥臭さもあるような取り組み方を垣間見られて、そこも良かった」。異業種や今まで敬遠していた世界からヒントを得ることもいっぱいある、と気付いた田村さんでした。