神戸・元町四丁目の本屋[本の栞]を営む、則松栞さんの日々のブックマーク
VOL.8
ちょっと、どうでもいいことを話してもいいですか
text and photo
則松 栞(のりまつ しおり)
神戸で[本の栞]という本屋をやっています。
10/21(土)に『銀河ノコモリウタ』(Musica Otras Canciones また、ある一つの音楽)出版記念朗読フェスを開催予定。
出演は柴田元幸さん、kawoleさん、渡辺 亮さん他。
8.1 tue.
今日の月齢は15日、満月だよと教えてもらったので、晩ごはんの途中でベランダに出て眺めた。朧月(おぼろづき)。猫がミャンと鳴く声がしたので中庭を見回したが姿はみえなかった。
数日前に新幹線のなかでなんとなく『白河夜船』 1 の映画を観たので、大好きな原作を久しぶりにひらく。映画は色がきれいで、井浦 新は吉本ばななの世界からそのままあらわれたみたいだった。
「ねえ、あなたはそういうすべてのことに、ものすごくきちんとかかわりたいと思っているんでしょう?最後まで手を抜かずに、そういう人たちの誰からも頼りにされ続けてあげたいのよね。でも、誰のためでもないの。自分が許せないの。(中略)本当はすごく冷たい人なのよ。あなたは、でもそうなの。わかっているでしょう? 大好きなの。たまらなく好きなの、そのやり方、……」
という安藤サクラの独白がとてもよかった。原作でもいちばんに好きなところ。
映画を観た日の夕方、すこしお酒を飲んでいて、とろとろとまどろんだら夢をみた。光る広場を歩いて、遠くで不意にあがった花火を眺めて、がらんとした暗い地下鉄の駅を抜けて、誰かが隣で眠っている。温度はたしかに感じるのに、どことなく寂しい夢。
8.15 tue.
おおきな台風が来て[大丸 神戸店]までもお店は軒並みお休みしているので、[本の栞]も休みに。定休日や元々予定していた臨時休みとあわさって、意図せず5連休になってしまった。夏休みだ。なにもすることがないので、夕方まで布団の上でのろのろして窓の外の大雨を眺める。この、みんながそろってなんにもできない感じはなんだかいやじゃない。そわそわして、すこし心細くて、人に会いたくなる。そんな話があったような気がするなと思って『つつがない生活』 2 を久しぶりに読んだけど、どうやら記憶ちがいのようだった。
「幸せでも幸せじゃなくても 平凡な日々をそのまま肯定していける様な そんなつつがない生活を生きていければと思います。」
この一文は何度読んでも本当にぐっとくる。生活がわからなくなったときに、取り出したい言葉。
8.20 sun.
「ちょっと、どうでもいいことを話してもいいですか」とレジに来たお客さんに突然言われる。なんだなんだと話を聞いてみると、棚から本を一冊抜き取って、僕、これに、出てくるんです……と手渡された。今日マチ子さんの『From Tokyo』 3 。とある劇場の開場待ちに並んで座っているふたりの男女のイラストの、片割れが自分なのだという。『From Tokyo』は日記形式のイラスト集でそれぞれのページに日付がついており、この日のことはよく覚えているので、これは間違いなく自分だと。おどろいてしまい、咄嗟(とっさ)にどう反応するかがむずかしく、「ええ、すごい、なんか、うれしいですね。教えてくれてありがとう……」などとよくわからない感じのことを口走ってしまった。お客さんは「すみません、このあいだ買って読んでたら見つけて、誰かに言いたくて……でもこの本を知っているひとがまわりにいなくて」と照れくさそうに帰って行った。うまく言えないけれど、共有してくれてとてもうれしかったです。どうもありがとう。
[ボ・タンバリンカフェ] 4 での友部正人さん 5 のライブが18時スタートだったことを突如思い出し、焦りながら店を早じまいして向かう。[ボ・タンバリンカフェ]は満席。友部さんの歌はすばらしく、どんどん気持ちよく飲んでいたら、知り合いもいないのにおそろしくべろべろになってしまった。よく知っているはずの街で迷子になりながら、なんとか家にたどり着いた。明くる日の朝、ケータイには満面の笑みのツーショット、それからサイン入りのCDが。
- 電話番号080-3855-6606
- 住所神戸市中央区元町通4-6-26 元村ビル1F北
- 営業時間12:00~19:00
- 定休日水・木&不定
- カード使用可