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六甲山の自然を舞台にした
現代アートの祭典へ

六甲山の自然と周辺施設を会場として、8月27日より開催されている「六甲ミーツ・アート芸術散歩 2022」。五感をフルに働かせながらアート鑑賞ができると人気の展覧会で、今年で13回目を迎える。2022年は「むこうで出会う、じぶんを知る」をテーマに掲げ、さまざまな表情を持つ10の会場で全41作品を展示。ハイキング感覚で気軽に楽しんだり、現代アートを前にして、何をどう感じるか、客観的に自分自身を見つめ直すのも楽しみ方の一つ。アートとの“未知との遭遇”から、観光やレジャーだけではない新しい六甲山の魅力を見つけよう。

六甲ガーデンテラスエリアは
海を望む絶景と注目作品が一堂に

最も標高が高く、北に位置する六甲有馬ロープウェー六甲山頂駅~自然体感展望台~六甲ガーデンテラスエリアには、ぜひ見ておきたい今年の注目作品がズラリ。身近な社会問題を考えるきっかけになりそうな作品も。

  • 神戸の街を見下ろす絶景を背にした純白の乳牛は、下半身が牛乳パック。「人間が生きるためには、ほかの生物の命をいただく」という現実を、ポップかつシュールに表現。作品:kammy+OK!《六甲山の乳搾り》(神戸市長賞)
  • ミルクのような液体が永遠にバケツに流れている。kammy+OK!は、絵画・立体創作の神谷利男とエディターでリサーチャー岡本京子のユニット。作品:kammy+OK!《六甲山の乳搾り》(神戸市長賞)
  • 《六甲山ムツコ(ムッティ)、グリボウ、グリグリボウ》と名付けられたイノシシのオブジェは、すべて六甲山で集められた廃棄物。「場所によってゴミもクセがある」と作者が捉えるように、スキー板やジンギスカンの鍋、食品サンプルなど、どれも六甲山の観光産業を作り上げた遺物。作品:淀川テクニック《六甲山ムツコ(ムッティ)、グリボウ、グリグリボウ》(神戸市長賞)
  • 廃棄物を使った立体作品で知られるアーティスト。廃材を3Dスキャンして設計図を描いたのち大まかな骨組みを作り、展示場所に移設してからパーツを肉付けしていくという、繊細かつ大胆な作品。作品:淀川テクニック《六甲山ムツコ(ムッティ)、グリボウ、グリグリボウ》(神戸市長賞)
  • ロープウェーの休止線ホームの天井を覆うのは、手編みで仕上げられたニットの作品。作品名の「Transience」は変移という意味で2008年から徐々に拡張させてきたという有機的なデザイン。屋根はあるものの吹きさらしの環境で力強く表現されている。作品:二ノ宮久里那《Transience》(「六甲ミーツ・アート芸術散歩 2022 公募大賞」グランプリ)
  • 録音用テープやビニール紐など廃材も編み込まれ、破れた箇所はかさぶたや増殖する細胞のように修繕されていく。服飾系の専門学校時代より、ハンドニッティングの作品を発表し、ファッションとアートの垣根を超えたアーティストとして注目されている。作品:二ノ宮久里那《Transience》(「六甲ミーツ・アート芸術散歩 2022 公募大賞」グランプリ)

あの著名なアーティストの作品にも出合える!

「六甲ミーツ・アート芸術散歩 2022」は、公募作品以外にも、国内外で有名なアーティストの作品も楽しめる。その作品の展示場所も見所で、通常は非公開の場所や、六甲山芸術センター(元スカイヴィラ迎賓館)のようにビル一棟を会場として使用することも。想像力をかき立てられる作品に出合い、何を表現しているのかと思いを巡らせるのもアートを楽しむ醍醐味の一つ。

  • 安藤忠雄の建築「風の教会」を使った《そらのあな》は、赤に染まる空間に、鐘が鳴り響く壮大なインスタレーション。約15年間鳴ることがなかった鐘を鳴らすことで「別のものとつながり、生きた場所へと変容させられるのでは」という、作者の思いが込められている。鐘の音で、止まっていた時間がまた動き出す不思議な感覚も。作品:大巻伸嗣《そらのあな》
  • 時間や天候によって影も変わり、鐘の音を聞きながらモチーフを探すだけでも特別な時間に感じる。おすすめの時間は日が差し込む午後2時〜3時。作品:大巻伸嗣《そらのあな》
  • 六甲山に生息する“真夜中の生き物たち”の研究結果を発表する展覧会、というインスタレーション。壁にはクレヨンで描かれた生物の絵や直筆の説明文がランダムに飾られ、一歩部屋に入ると、突然違う場所と時代にタイムスリップしたような錯覚に。作品:園田源二郎《まよなかの博物誌ー六甲夜話ー》
  • 不思議な生き物の絵と観察した文章を読んでいると、クスッと笑えてくるものも。研究者のアトリエとしてつくり込まれた空間は、人の気配まで感じられる。作品:園田源二郎《まよなかの博物誌ー六甲夜話ー》
  • 3つの部屋のドアには、それぞれどこかで見たような形の鉄の塊が挟まっていて、絶対に開けることができない。その中途半端な状態を前にして、胸がザワつき、いろんな想像力を掻き立てられる作品。作品:冨井大裕《半端な彫刻》
  • 彫刻という表現手段と可能性を探り続けるアーティスト。この作品でも、挟まっている造形の形に意味はあるのかないのか、思考を巡らせるのも楽しい。作品:冨井大裕《半端な彫刻》

緑が溢れるエリアで癒やしのアート時間を

六甲高山植物園とROKKO森の音ミュージアムは、豊かな自然を感じられるエリア。池や木々など、周りの環境を生かした作品がそろいます。今年のメインビジュアルとしてポスターになっているあの作品も、このエリアに。

  • 今年のメインビジュアルに採用されたこの作品は、胴体部は古代中国の文官の俑、蛍光色の頭はアニメから抜け出した女の子のようだったりとどこか違和感を感じさせられる。作品:袴田京太朗《闘う女の子と中国の文官 考える女の子と倒れた墓碑》
  • 自然の中を散策していて出合う、異質な要素の組み合わせでできた彫刻作品。鑑賞した人同士でお互いの感じ方を話してみるのも鑑賞方法の一つ。作品:袴田京太朗《闘う女の子と中国の文官 考える女の子と倒れた墓碑》
  • 今にも動き出しそうなモノクロの動物たちが、中央にあるアセビの切り株を囲っている。近づいてよく見ると、動植物は緻密な線画で命が吹き込まれていて、思わず感嘆の声が。作品:村山大明《アセビの切り株と想望》
  • モノクロのペンで動物の毛並みやパーツがリアルに線で描かれている。数万の線によってモチーフが描き出される。作品:村山大明《アセビの切り株と想望》
  • ふとこんな3本の足を持つ大小の集団に出合うと、自分の知らない世界に迷い込んでしまったように感じるかも。一人分のスペースが空いていて並んで座ってみても。作品:浅野暢晴《狭間の森》
  • “トリックスター”と名付けられた陶器の彫刻作品は、切り株や木々の下、岩の上にも。探してみて。作品:浅野暢晴《狭間の森》
  • テーブルの上には食器が並び、それらを覆う半透明のビニール袋が膨らんだり、しぼんだり。呼吸している体の内部のようにも見えるし、終わることがない時の流れも連想できる。天井からぶらさがる袋の中には六甲高山植物園で採取した種も。じっと見続けてしまう作品。作品:大西康明《虚実の距離 六甲》
  • しぼんだときだけ中のものが認識できる。「作品の中に起こる事象や関係性は我々が生きているこの世界や社会の在り方を示唆しています」と作者。今、注目のアーティストの一人。作品:大西康明《虚実の距離 六甲》

夜のアート作品「ひかりの森~夜の芸術散歩~」がスタート

昨年まで「ザ・ナイトミュージアム~夜の芸術散歩~」として開催されていた企画が、名前も新たに期間を早めて開催。ROKKO森の音ミュージアムでは、髙橋匡太による「ひかりの実 in SIKIガーデン」を展示、六甲高山植物園でも同氏の新作が登場。このエリア内の作品もライトアップされ、昼間とは違った表情に。[森のCafé](ROKKO森の音ミュージアム)は夜間営業(〜11/23の土・日・祝)も。六甲山の夜はかなり冷え込むため服装にも気をつけて。10月下旬~11月上旬は紅葉がライトアップされ木々を見上げながら散策するのも楽しい。

  • ROKKO森の音ミュージアムのSIKIガーデンで光るのは、約2500人の笑顔が描かれた果実袋。LED照明が入ったひかりの実はカラフルに浮かび上がり、幻想的な空気感に包み込まれる。作品:髙橋匡太《ひかりの実 in SIKIガーデン》
  • 果実袋には、子どもたちを中心にワークショップで描いた笑顔のイラストが。流れる曲は、ミュージシャン・mica bandoが作曲。ひかりの実がおしゃべりしているようで心地良い。作品:髙橋匡太《ひかりの実 in SIKIガーデン》

アート鑑賞だけではない、
グルメにグッズに楽しみ方もいろいろ!

「六甲ミーツ・アート芸術散歩 2022」は、眺めが気持ちいい六甲ケーブルで行くのがおすすめ。クラシック&レトロな車両に乗って約10分。作品は紹介したエリア以外にも、兵庫県立六甲山ビジターセンター、六甲山サイレンスリゾートにもあり、全10エリア。各エリア間は六甲山上バスで移動できる。スタンプラリーや“六甲味噌”を使ったグルメ、オリジナルグッズなど、アート鑑賞+αの思い出として楽しみたい“こと”や“モノ”もたくさん。

会期は11月23日(水・祝)まで。アートとの出合いが楽しめる六甲山へお出かけしてみませんか?

  • オリジナルグッズは、六甲ガーデンテラスをはじめ、いろいろな場所で購入可能。オフィシャルガイドの表紙にもなっているデザインは、人や建物、ロープウェー、木々など六甲山にあるさまざまな形をモチーフにしたもの。缶バッジ(6種)各250円
  • 展示会期間に合わせて、六甲山麓で醸造された“六甲味噌”を使ったアレンジメニューを展開。[グラニットカフェ](六甲ガーデンテラス内)では、フレンチ出身の料理長が考案した六甲味噌ビーフシチュー2,200円(サラダ、スープ、プチデザート、ドリンク付き)がいただける。ソースや隠し味に使ったパスタからうどん、バーガー、スイーツまで、六甲ミーツ・アート芸術散歩会場内の飲食店7店舗で楽しめる。
  • オフィシャルガイドには会場全体のマップが掲載。必ず手に入れよう(公式HPでダウンロードも可)。各会場ではスタンプラリーが楽しめる。スタンプのイラストは、六甲山小学校の4~6年生の児童が描いたもの。

撮影/森 亮 取材・文/天見真里子 協力/六甲山観光株式会社

店舗情報
神戸・六甲
六甲ミーツ・アート芸術散歩2022
  • 期間
    2022年8月27日(土)~11月23日(水・祝)
  • 時間
    10:00~17:00 ※各会場により異なる 
  • チケット
    大人2,500円(中学生以上)、小人950円(4歳~小学生)他
  • 定休
    会期中無休(六甲山サイレンスリゾートは~10月の月休・祝の場合は翌休)
  • アクセス
    JR六甲道駅・阪急六甲駅から、神戸市バス16系統「六甲ケーブル下駅」行きに乗換、「六甲ケーブル下駅」バス停下車、六甲ケーブルに乗換「六甲山上駅」下車、六甲山上バスか徒歩で各会場へ
※このページに掲載の内容は2022年9月時点での情報です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
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