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それなりにハードでも、
良質の“恐怖”が楽しい

文/春岡勇二

『怪物の木こり』  12月1日(金)公開 PG12

©2023「怪物の木こり」製作委員会

監督/三池崇史 
出演/亀梨和也、菜々緒、吉岡里帆、染谷将太、中村獅童 ほか
上映館/大阪ステーションシティシネマ、MOVIX京都、109シネマズHAT神戸 ほか

『エクソシスト 信じる者』  12月1日(金)公開 PG12

©Universal Studios. All Rights Reserved.

監督/デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演/レスリー・オドム・Jr、アン・ダウド、ジェニファー・ネトルズ、エレン・バースティン ほか
上映館/TOHOシネマズ梅田、T・ジョイ京都、OSシネマズミント神戸 ほか

 がっちりとした体に、異形の仮面を被り、次々と人を殺していく「怪物の木こり」。ただ、その殺す相手は、それこそ人の命を奪ったり苦しめたりすることになんのためらいも持たず、むしろ快感を覚えるようなサイコパスたちだった。クールな見た目そのままに仕事の出来る弁護士の二宮 彰は、実は自身がサイコパスであることを自認する男で、襲われたことをきっかけに、正体不明の「怪物の木こり」との対決を決意。ここに、連続殺人鬼対サイコパスという前代未聞の対決が展開されていく……というエッジの効いたストーリーで、2019年の「このミステリーがすごい!」大賞に輝いた倉井眉介の小説『怪物の木こり』を三池崇史監督が実写映画化。二宮を演じるのは亀梨和也。三池監督は、幅広いジャンルの作品を手掛けてどれも水準以上に仕上げる名工だが、こういったホラー・サスペンスはなかでも得意分野で、亀梨との呼吸も合い、切れのある演出で活劇性豊かな作品としている。亀梨和也の冷酷非情でありながら、妖しさともろさを感じさせるキャラクター造形もうまく機能している。二宮の協力者を演じる染谷将太が、2020年の『初恋』に続いて、軽さのなかにすごみをにじませる演技で三池作品との相性の良さを見せれば、警視庁のプロファイラーに扮した菜々緒のクール・ビューティーぶりも際立っていて、中村獅童、渋川清彦、吉岡里帆らも個性に合った芝居を見せて楽しい。この映画は、通常描かれることの多い、連続殺人犯やサイコパスからどうやって逃れるかとか、あるいは、はからずもサイコパスになってしまった者の悲しみを描くとかではなく、サイコパスがあることをきっかけに良心の呵責を感じる人間になってしまう苦しみを描くという逆ベクトルの物語で、ホラーだけど、怖いよりもわくわくが先に立つ快怪作。

 もう1本は本格ホラー映画。50年前、名匠ウィリアム・フリードキン監督によって発表されたオカルト映画の本家本元『エクソシスト』(1973)の新章で、50年前の作品からの正統な流れを引き継いだ『エクソシスト 信じる者』だ。

 前作では12歳の少女リーガンに悪魔が憑依したという設定だったが、今回は同じ12歳だけれど、アンジェラとキャサリンの二人に憑依するのがミソで、二人の親たちの苦悩と闘いが描かれる。13年前に妻を亡くし、一人でアンジェラを育ててきた父親のヴィクターは、ある女性に助力を頼む。それがなんとリーガンの母親のクリスで、これを50年前の作品と同じエレン・バースティンが演じている! バースティンと言えば『エクソシスト』で2度目のアカデミー主演賞候補となり、翌年『アリスの恋』で同賞を受賞。以降も3本の作品で候補となるなどアカデミー賞常連の大女優。現在90歳のレジェンドだ。監督は2018年以降の『ハロウィン』シリーズ3本を撮ったデヴィッド・ゴードン・グリーン。手堅い演出できっちりと怖がらせてくれる。最後のサプライズもお楽しみ。

※この記事は2024年1月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認下さい。

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SAVVY6月号『花とグリーン』
発売日 2024年4月23日(火)定 価 900円(税込)