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今月のNEWSな人 このアーティスト、要チェック!

取材・文/竹内 厚 写真/原 祥子

『三沢厚彦展』
期間:開催中~12月24日(日)
場所:AMMON KYOTO

協力/西村画廊

動物彫刻で知られる三沢作品が京都の三条通に出現!

 動物をモチーフにした木彫作品でよく知られる三沢厚彦さんが、京都・三条通沿いにあるギャラリーで個展を開催中。特に高さ2mを超える巨大なユニコーン像は、道行く人も思わず二度見するほどの存在感がある。
 「これを作ってるときに、そういえば子どもの頃に[今宮神社]で白馬像を見てたなって思い出しました。その白馬の足が日によって右足が前に出たり、左足が出たりしてるなんて不思議な話もあって。京都ならではのそんな感覚も、これがユニコーン像になったことに通じている気がします」
 京都の[大徳寺]あたりで生まれ育った三沢さんだが、京都での個展は約12年ぶり。といっても、アトリエのある神奈川から京都へ遊びにくる機会は決して少なくないのだそう。
 「街のつくられ方も、中心部をY字に鴨川が流れていることや地形なんかも独特で、京都は好きな街なんです。グリッドになったこの街の感じが、今回の展示にちょっと反映しているかもしれません」
 フロントに置かれたユニコーン像の真後ろ、ちょうどギャラリーの中心部にはネコの像が配され(いわく「隠れた裏・主人」)、入り口付近は夜のイメージでまとめ、右壁には絵画、左壁は彫刻作品が並ぶという展示空間、見れば見るほどに各作品が呼応し合って、配置もびしっと定まっている。
 「普段はわざと違和感を出したりもしますけど、今回はかなりコンサバティブに展示をまとめました。僕の作品は彫刻が中心なので、やっぱり作品同士の関係性や空間性がとても大事で、今回の展示ではホワイトキューブの空間ならではの面白さが出せたかなと思います」
 代名詞ともいえる静かな表情の動物像に、近年は、キメラ(=合成獣)像が増えている。そこには三沢さんならではの同時代感覚があるらしい。 「今の社会状況を見ていると、キメラのことを考えるべき時代じゃないかなって。キメラって生物学的には無理のある存在だし、まったく種も違うし言葉も通じないものが、とりあえずは一緒に存在、同居しているもの。コロナ禍の頃に、ほんの一瞬ですけど、世界中の気持ちが同じになったことがあった感じがして、あ、そういう可能性もあるんだなって。それってちょっとキメラ的なことじゃないですか」
 寡黙な表情でさまざまに語りかけてくるような三沢さんの作品。美術館ではなくギャラリー空間での展示はとても貴重な機会。お見逃しなく。

彫刻と平行して制作している絵画。絵とはいえ絵の具の素材、物質性が伝わってくる。近年の作品は背景もカラフルに。

古くはギリシャ神話に描かれたキメラ。こちらに並ぶ彫刻作品はセラミックに油彩でペインティングしたもの。

三沢厚彦 Misawa Atsuhiko
1961年京都府生まれ。2000年より等身大で動物の姿を表した木彫作品「ANIMALS」のシリーズを制作。各地の美術館での展覧会が続いている。

『三沢厚彦展』
期間:開催中~12月24日(日)
場所:AMMON KYOTO

店舗情報
京都・三条
AMMON KYOTO
  • 電話番号
    075-366-4400
  • 住所
    京都市中京区三条通河原町東入中島町87
  • 営業時間
    11:00~19:00
  • 定休日
    なし
  • 料金
    入場無料
  • アクセス
    京阪三条駅、地下鉄三条京阪駅

※この記事は2024年1月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認下さい。

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