吉野・大峯、熊野三山、高野山という紀伊山地にある3つの霊場と、それらを結ぶ参詣道は2004年、世界遺産に登録。なかでも、吉野・大峯は、役行者が1300年前に開山した修験道の聖地で、吉野山から熊野へいたる大峯奥駈道は、山々の尾根を歩く厳しい修行の行場として受け継がれる。
「そもそも世界遺産、ユネスコのいう文化的景観とは何なのか、登録されてからの20年間みんなで考えてきました。先人たちが作り残してきた、その象徴的なものとして、例えば蔵王堂や参詣道がありますが、手入れしなければ建物は崩れていくし、人が歩かなくなれば道だってなくなってしまいます。林業をはじめとする吉野の山々での暮らしがあって、その中で人々の祈りの営みが今も脈々と続いていること、これが大事なんですね。そもそも、役行者(えんのぎょうじゃ)が開いた吉野というのは、在家の修行の場。選ばれたお坊さんたちが自分たちの修行をするのではなく、誰もがここで修行や勉強する資格があって、僕らでさえも出家の約束はしていないんです。だから、いつどなたが来られてもいいように常に開いていることが肝要で、コロナ禍の頃も門を閉じることはありませんでした。とにかく常に門戸を開いている。吉野って昔からそうなんです。
吉野を訪れる方には、たとえ3分でもいいから落ち着いて祈るような時間を作っていただきたいですね。蔵王堂でも、それぞれのお寺でも、高台の桜の木の下でもいいんです。いろんなものを見て歩くのもいいですが、どこかで足を止めて拝むような時間を持つ。これこそが吉野千年の歴史を感じる一番の方法だと思います」
管領五條良知さん
1964年生まれ。1996年に大峯百日回峰行を行い、八千枚大護摩供や大峯奥駈修行の先達を30年以上務める。東南院の役僧、金峯山寺執行長、金峯山修験本宗教学部長などを経て、第31世管領に。
金峯山寺
白鳳時代(西暦600年台)に、役行者が蔵王権現を感得し、これを本尊としたことから、修験道の根本道場に。木造古建築としては、東大寺大仏殿に次ぐ大きさで国宝の蔵王堂は、自然木の柱68本が林立する内部空間も壮観なので、じっくりとお参りしたい。毎日正午からの護摩供を欠かさず、同時に複数の場所で「とも祈り」として行うために、Facebookでライブ配信も行っている。
奈良県吉野郡吉野町吉野山
定休日/なし
HP/www.kinpusen.or.jp
アクセス/吉野山ロープウェイ「吉野山駅」から徒歩10分
「祖母から葛菓子作りを受け継いだ母は、よく出来たてを食べさせてくれました」と話す店主の辻村佳則さんは、東京暮らしを経てUターン。葛菓子作りを継承しつつ、カフェ&ショップで奈良の物作りを発信している。注文を聞いてから練る吉野本葛もちと大和ほうじ茶のセット(1100円)は、素朴な風味をまずはそのままでいただいて。次に黒糖入りのきな粉や黒蜜をかけて、葛特有の弾力感を楽しんで。
ツジムラ/カフェキートンTSUJIMURA / Cafe Kiton
奈良県吉野郡吉野町吉野山950
営業時間/10:00〜17:30LO
定休日/火・水&不定 カード/可 席/20
HP/tsujimura-yoshino.com
アクセス/吉野山ロープウェイ「吉野山駅」から徒歩16分
吉野町に1軒しかない豆腐店が営む茶屋。奈良県産をはじめとする国産大豆と吉野大峰山系の軟水で搾る豆乳は「13%以上の高濃度なんです。だからうちの豆腐は味が濃い」と話す店主・林 昌与さん。ユニークな豆腐料理やスイーツを考案。カフェメニューの一番人気は、豆乳ソフトクリームやドーナツ、フルーツたっぷりの豆乳パフェ(980円)。豆腐製品の購入もできる店内からは、吉野山の絶景が一望もかなう。
豆富茶屋 林 中店
奈良県吉野郡吉野町吉野山551
営業時間/9:00〜16:00LO
定休日/火・水(4月・11月無休)
カード/可 席/23
HP/yoshinoyama-tofu.jp
アクセス/吉野山ロープウェイ「吉野山駅」から徒歩12分
駅舎前に店を構えたのは1930年。以来、桜入りようかん、香り高いよもぎのおやきなどの自家製和菓子と土産物を販売。なかでも話題を呼んでいるのは2年前に登場した、もこもこフォルムのオリジナルソフトクリーム。さくらやよもぎなどもあるが、人気はバニラソフトにもちもち食感の吉野本くず餅、黒蜜、きな粉をトッピングしたくず餅ソフト(500円)。吉野山をデザインした特製カップもかわいい。
吉野山桜 近藤
奈良県吉野郡吉野町吉野山63
営業時間/9:00〜17:00
定休日/水(4・11月無休) カード/可
HP/yoshino-kondo.jp
アクセス/近鉄吉野駅から徒歩すぐ
写真/大丸大樹 取材・文/小林明子
2024年3月23日(土)~5月6日(月・祝)
- 営業時間/
- 8:30~16:00
(法要等により一時的に入堂を制限する場合あり) - 拝観料/
- 1,600円
役行者の祈りに応えて現れた釈迦、観音、弥勒の3仏が、憤怒の形相で表された金峯山寺の御本尊。「前に座ったら目が合うんです。全て見透かされているようで、涙ぐむ方も大勢おられます。発露といって、そこでええことも悪いことも全部お伝えすればいい。それでちょっと楽になったら」と、五條管領。
ACCESS
大阪→金峯山寺
電車●近鉄大阪阿部野橋駅→特急・吉野駅。吉野山ロープウェイ千本口駅→吉野山駅下車→徒歩10分。大阪から約1時間30分、片道運賃2,140円〜※ロープウェイは金・土・日・月のみの運行、他の曜日は代替バスが運行。