宮城・仙台の西部に位置する歴史ある秋保(あきう)温泉。
その歴史はなんと1500年前の古墳時代にまでさかのぼり、欽明天皇が皮膚の病を治したことから「日本三御湯」の一つと称されている。
そんな名湯に加え、名取川の渓流美やご当地の美食、伊達政宗公にちなんだおもてなしなど、この土地ならではの非日常に浸ろう。
写真・動画/大西悠生 取材・文/天野準子 モデル/島野ソラ
衣装協力/ne Quittez pas
仙台の奥座敷、秋保温泉は全国から湯治客を集める名湯の一つ。温泉地は名取川に沿って開け、[界 秋保]もフロントや客室、テラス付きのラウンジなど、敷地内の至るところから名取川と木々が織りなす渓流美を堪能できる。伊達政宗公ゆかりの温泉であることから、宿のコンセプトは「彩りの渓流で伊達なひととき」。政宗公は戦国武将でありながら、文化人の顔も持ち、なかでも仙台みそやずんだ餅など、仙台の食文化に多大な影響を及ぼしたとされている。さらに、もてなし上手だったとも言われており、政宗公が築いた粋な文化に着想を得た食事やサービスが楽しめるのも一興。大名膳で提供される夕食や戦国時代にタイムスリップできる宴など、至れり尽くせりのもてなしに、大名気分を味わえるはず。磊々(らいらい)峡や秋保大滝もほど近く、大自然に囲まれた温泉でありながら、仙台駅前からは路線バス1本で来られる好アクセスの立地で、伊達なもてなしが待っている。
「ご当地楽」「ご当地部屋」など地域の伝統文化を取り入れたサービスと共に、伝統的な湯治をヒントに考案されたさまざまなステイプランを楽しめる、星野リゾートの温泉旅館ブランド。国内の温泉地に23施設を展開し、温泉大国の恵みを新しい形で提案する。
[界]の客室は、その土地の文化や伝統工芸を随所に取り入れ、ご当地部屋と称されている。[界 秋保]では、名取川の渓流沿いという立地を存分に生かし、特別室を除く全室に紺碧色に染まった広い縁側、紺碧の間を設置。新緑や紅葉、雪景色など、四季折々の景色がまるでフレームで切り取った一枚の絵画のように浮かび上がる。ゆったりとしたコの字のソファでお茶を飲んだり、お昼寝したり……空と木立に包まれ、没入感に浸れる。
秋保温泉の湯元付近にある渓谷、磊々峡。この辺りは名取川の川幅が狭くなり、水の色が深く澄んだ青色をしていることからかつては「紺碧の深淵(しんえん)」と表現されていたそうで、壁やソファ、クッションまで紺碧色一色に。渓谷美を一層、引き立てている。
客室の器は宮城の作家、鈴木恵麗子さん作。お着き菓子は、仙台[和菓子まめいち]の干菓子「美人さんのおやつ」。壁には[海馬ガラス工房]が手がける深い緑が印象的な仙台ガラスのオブジェ。ベッドルームの障子には隠れこけしもいるのでチェック!
名取川の渓流に面した開放感いっぱいのテラス・せせらきラウンジは第2の客室として入り浸りたくなるポイントが盛りだくさん! 15〜20時は、季節の上生菓子や仙台駄菓子、地元産のワイン、ウイスキーも用意され、夕食前にアペリティフを楽しんだり、入浴後にはバー遣いもOK。共有スペースのトラベルライブラリーも併設し、宮城や自然、工芸にまつわる書籍も充実する。コーヒーやハーブティーは24時間いつでも自由に飲むことができる。
木立に囲まれ、四季折々の風景が広がるテラス。名取川に面して木製の柵が設けられているように見えるが、実は長いカウンターになっていて、座れば、より自然と一体になれる。
眺めて楽しいビジュアルブックから読み物系までそろうトラベルライブラリー。秋保石のブックエンドや堤焼のマグカップなど、インテリアや器にも宮城ゆかりのものが使用されている。
政宗公が茶の湯文化を普及させたことで、仙台では菓子も盛んに作られ、庶民にも浸透したそう。江戸時代から伝わる素朴な仙台駄菓子や上生菓子の振る舞いがあるほか、近くにある[ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所]のウイスキーやアップルワイン、[秋保ワイナリー]のワインもお代わり自由で、好きなだけいただける。
テラスには源泉を引いた足湯もあり。泉質は塩化物泉で保温効果が高く、ぽかぽかに。ラウンジに用意された温かいドリンクや本をお供にゆっくり楽しむことができる。朝、テラスでは現代湯治体操も行われ、体操後に足湯でひと息つくのもお薦め。
朝・夕食共に地元食材や郷土料理を取り入れた内容に。特に夕食は、大名の食事をイメージし、漆塗りの脚付き膳で提供され豪華絢爛(けんらん)。2025年、新伊達会席としてリニューアルし、宮城名物のフカヒレを使った鍋も加わった。牛テールにみそを合わせてリエットにしたり、牛タンを和風シチューのように仕立てたり、趣向を凝らした内容で楽しませてくれる。
右から、新伊達会席の始まりは、牛テールとみそのリエットを仙台麩(ふ)にのせていただく先付けから。敷紙には、政宗公の水玉陣羽織の意匠が取り入れられている。宝楽盛りも脚付きの器を使った高貴なしつらえに。鶏と葡萄の松風や鮭の幽庵焼など、山海の幸を少しずつ取り入れた八寸、お造り、酢の物が盛り込まれている。フカヒレの下に胡麻豆腐を忍ばせたふかひれ利休鍋や牛タン柔らか煮、ずんだを使ったデザートなど、宮城名物を堪能できる。
地域色あふれる[界]のご当地朝食には、サトイモを主役に、みそで仕立てた芋の子汁(イモ煮)があつあつの鍋で登場。政宗公も好んで食していたと伝えられている。ほか、地元で作る三角油揚げや吟醸豆腐など、ご当地感満載。
1500年の歴史ある秋保温泉。6世紀半ば、欽明天皇が皮膚病を治したことから「日本三御湯」に称されていて、現在も、自然治癒効果が高いメタホウ酸が一般的な温泉の基準値の20倍も含まれている。敷地内に2本の源泉があり、源泉掛け流しのあつ湯と心身共にリラックスできるぬる湯を用意。「温泉いろは」の講座で効果的な入浴法を学んでから入浴するのもお薦め。
本館から渡り廊下を進んだ先が湯小屋に。天井の高い広々とした内風呂と木立に囲まれた露天風呂がある。メタホウ酸のほか、メタケイ酸も含み、美肌&保湿効果に期待大。
毎日16時15分から湯上がり処で開催される温泉について学べる「温泉いろは」。宿の湯守りが、秋保温泉の歴史や泉質を紹介。筆まめだった伊達政宗公にちなみ、[界 秋保]の入浴の流儀は巻物を使って解説。源泉に浸したおしぼりが配られ、温かさにホッと癒やされる〜。
酒と食をこよなく愛し、客人に振る舞っていたという政宗公。[界]では、その地域の伝統工芸や芸能、食を満喫できるおもてなし「ご当地楽」を行っているが、[界 秋保]では、政宗公が酒席の心得を重んじていたという史実から着想を得て「伊達な宴」を毎夜開催。伊達の心得に触れながら、ゲスト同士で仙台藩ゆかりの地酒を酌み交わせる。
フロント横の目立たない扉を開くと、「伊達な宴」専用の部屋に続く通路が現れる。ゲストは陣羽織を羽織り、戦国時代にタイムスリップ。勝利を象徴する勝色(濃い藍色)に金の日の丸をあしらった伊達政宗公の軍旗をイメージした室内で、戦に勝つための宴を無料で体験できる。
仙台七夕まつりの七夕飾りに使われる和紙と、秋保地域で採掘される秋保石のなかから好きなものをチョイスし、専用のハサミでカットして製作する。小石や木片が堆積された秋保石は一つずつ表情が異なるので、お気に入りの石を見つけてみて。1日10組限定2,400円
全国の[界]で毎朝行われる「現代湯治体操」。[界 秋保]では、渓流を歩き、釣り竿を川に投げ、ヤマメを釣りあげて……と、渓流釣りにちなんだ動きが取り入れられている。
エントランスの自動ドアが開くと、一面ガラス張りの絶景が広がるロビーがお出迎え。ガラス窓の上部に障子をあしらうことで、まるで絵巻物のように渓谷が横一面でダイナミックに見える。夜には、篠笛をはじめ、和洋楽器の生演奏を鑑賞できる。
客室内に設けてある紺碧の間は壁やソファも紺碧色でそこだけ別世界。見渡す限り名取川沿いの木立ちと空しかなくて、ずーっと見ていられます。関西人には少しなじみの薄い伊達政宗公だけど、夕食や“伊達な宴”などのおもてなしの数々で、少し身近な存在に感じられました!
界 秋保 [宮城・仙台]
050-3134-8092(界予約センター)
界 玉造[島根・松江]
050-3134-8092(界予約センター)
奈良時代から続く玉造温泉にたたずむ宿。島根の地酒を味わう日本酒BARや松江の文化に触れる茶の湯体験など滞在を通して島根の魅力を体感することができる。また、スサノオノミコトが大蛇を日本酒で酔わせて退治する石見神楽の神話「オロチ」も毎晩披露される。
界 出雲[島根・出雲]
050-3134-8092(界予約センター)
出雲神話が根付く日御碕(ひのみさき)は、日本の夜を護る聖地と言われる場所。水平線に沈む夕日、暮れゆく宵闇、昇る朝日など、時間帯ごとの絶景は宿泊者だけのお楽しみ。海を背景にした舞台で出雲大社の起源とされる「国譲り」を題材にした「石見神楽」の鑑賞も。




