旅のお目当ては温泉旅館。伝統文化に触れる[界 加賀]

山代温泉の老舗旅館をリニューアルし、
2012年にオープンした[界 加賀]。
加賀の伝統文化に触れられるコンテンツを加え、
滞在中の楽しみが増えています。
もちろん、冬のお楽しみ“カニ”もぜいたくに味わいたい!

写真/わたなべよしこ 取材・文/天野準子

あたらしい 自分で選んだ皿に盛り付けてもらえる

べんがらラウンジでは、酒器とお皿2種、さらにお盆までチョイスができる。自らコーディネートできるのが楽しい!

温泉入って、カニ食べて……
文化も満喫、おこもりステイ

冬旅といえば、温泉とカニは外せないが、日本海に近い歴史ある山代温泉ならこの欲望にドンピシャ。老舗旅館[白銀屋]からバトンを受け継いだ[界 加賀]は、江戸時代から総湯(共同浴場)を中心ににぎわった“湯の曲輪”と呼ばれる街の中心エリアに位置し、温泉街としての情緒もたっぷり。宿の母屋である伝統建築棟は、国の有形文化財に登録されており、紅殻(べんがら)格子の風情ある外観からも期待が高まるはず。
フロントホールでは、太い大黒柱と大きな丸太の梁を金物を一切使わず組み上げた伝統構法・枠の内が目を引くが、建築のみならず、庭園や館内の調度品を見ても、歴史と伝統が息づいている。そんな[界]らしいご当地の伝統文化に親しめるしつらえやサービス、プログラムも盛りだくさんで、温泉に浸かって、カニを堪能して、また温泉……と、寒さが厳しい今こそ、上質なおこもり旅を満喫してみて!

伝統的な湯治をヒントに考案されたさまざまなステイプランを、「ご当地楽」「ご当地部屋」など地域の伝統文化を取り入れたサービスと共に楽しめる、星野リゾートの温泉旅館ブランド。国内の温泉地に23施設を展開し、温泉大国の恵みを新しい形で提案する。

日本各地の界も要チェックです!

Local 加賀の伝統工芸を知る ご当地

加賀の伝統芸能・工芸を旅館にいながら五感で体感

館内随所に水引や加賀友禅の工芸アートが飾られていたり、食事処や客室では九谷焼や山中塗が使用されていたりと滞在中は、自然と加賀の伝統工芸に触れることができる。さらに2024年に完成したべんがらラウンジでは、“見る”、“使う”だけでなく、“選ぶ”楽しみも。前田利家の入城を祝ったという伝統芸能・加賀獅子は通常、祭りや正月しか見ることができないが、ここでは毎夜披露。間近で見ることができるため大興奮すること間違いなし!

王道 石川県を代表する 伝統工芸品 九谷焼

べんがらラウンジ
登録有形文化財である伝統建築棟の2階。真っ赤な空間に水引飾りが揺れる魅惑的な雰囲気で、紅殻格子越しに温泉街を望める。20:00〜21:30、30分ごと、1日4組限定。ドリンク1杯とおつまみ2品付き。一人3,500円

展示スペースで100種類以上の器から自分好みの皿や酒器を選び、ラウンジ内へ。北陸地方の日本酒をはじめ、ドリンクは好きなものを。おつまみは北陸の食材を使ったピンチョスと、もう一皿は香の物やナッツ、甘味から選べる。

大迫力の円舞を!ご当地楽

地域の文化や芸能を紹介するおもてなし「ご当地楽」。こちらでは、金沢市の無形民俗文化財に指定されている加賀獅子を独自にアレンジした「加賀獅子舞」が披露される。

王道 武家文化を感じる勇壮な獅子舞

加賀獅子舞
加賀獅子を独自にアレンジした演目で、どこから見てもにらまれているように感じる八方睨や口を開閉した時に鳴る歯の鋭い音など客席近くで演じられ迫力満点だ。トラベルライブラリーで毎日21:30〜開催。観覧無料。

Experience 文化も気軽に体感できる!体験

歴史ある建物や作家の器を大切に使い、未来へつなぐ

茶室や魯山人作の屏風など、[白銀屋]時代からの歴史ある建物や美術品がたくさん残されているが、所蔵するだけでなく、宿泊者が実際利用したり、観賞できるのが魅力。また毎日使用するうちにどうしても劣化や破損が生じてしまう九谷焼は金継ぎをして再び使用。工房では宿泊者も金継ぎについて学べ、旅館で使う器の金継ぎ作業を行うことも。金継ぎの大変さを知った後に食事処で金継ぎされた器を見つけると、いとおしさもひとしおだ。

王道 器の割れ・欠けを繕う伝統技術

金継ぎコフレ
完成までに1カ月以上を要する金継ぎ。館内の売店では天然漆や純金粉など、金継ぎに必要な道具と材料が入ったコフレの販売もあり、自宅で挑戦する人も! 16,500円

あたらしい ビギナー向けのキットで自宅でも

金継ぎ工房
たくさんの工程と日数を要する金継ぎ。その一工程を体験できる「金継ぎいろは」は15:30〜、16:30〜の1日二回開催。まずは、金継ぎの解説を行い、金継ぎ作業のいずれかを実際に体験。写真の工程は一例のため、当日参加時に確認を。参加費無料、所要時間30分。

あたらしい 中庭の離れでお茶を一服

茶の湯体験
国の登録有形文化財である茶室「思惟庵」で茶をたしなむスタッフが抹茶を点ててもてなしてくれる。茶の湯と言っても作法にとらわれず、朝食後の抹茶と上生菓子を楽しむ感覚で参加OK。9:30〜、10:30〜の1日二回、所要時間45分、参加料一人2,000円。要予約。

中庭ではおはよさーん体操も!

毎朝7時からトラベルライブラリーでは体操を実施。中庭を見ながら、呼吸を意識しつつ全身ストレッチを行えば、朝の目覚めも爽快。

Dish タグ付きの活けカニを満喫料理

加賀の伝統芸能・工芸を旅館にいながら五感で体感

さまざまな会席がそろうが、今の時期のお目当てはやっぱりカニ。[界 加賀]が編み出したしめ縄蒸しは、活けカニを縄でぐるぐる巻きにして蒸し上げ、テーブルに運ばれてきた姿もインパクト大。「一人旅でもズワイガニの会席を食べたい」という声に応え、1名用会席にもぜいたくに登場。北大路魯山人の「器は料理の着物」という名言に倣い、九谷焼の作家に別注した器で提供するなど、料理と器の調和も見事!

王道 日本海の冬の味覚の王様

極み タグ付き活蟹づくし会席
活蟹のしめ縄蒸しをはじめ、甲羅焼き(上)(左)や蟹すき鍋など、全て鮮度抜群の活けカニが登場する。一人あたり1.5杯分のカニを味わい尽くす、これぞ贅沢の極み(〜2025年3月10日)。

縄で巻いた魚介をいろりの灰の余熱で蒸し上げる伝統的な料理からヒントを得た活蟹のしめ縄蒸し。カニを塩水に浸した縄で結わえることで、ふっくらジューシーな蒸し上がりに。

あたらしい バラエティー豊かな6種の味を用意

ひとり蟹会席
一人旅限定。活蟹のしめ縄蒸しを一人でまるごと1杯、満喫できるコース。雲丹太白やアボカドと山葵のソースなど、6種の調味料で味変でき、飽きずに最後までおいしく楽しい。1泊2食付き72,000円〜(〜2025年3月10日)

卵や味噌もぎっしり詰まったメスのズワイガニ、香箱蟹の甲羅盛りもたまらない活蟹と寒鰤のお刺身。花が咲くように身が開いたカニの脚は上を向いて大きく口を開いてぱくり!

石川の地酒が充実し、加賀鳶・極寒純米は最初の一杯にぴったりなキレの良い辛口。やましろ純米酒は、甘みがある山代温泉限定酒。菊姫・山廃純米はカニ酢の甘酸っぱさとカニのうまみに合わせた酸味がしっかり、濃醇タイプ。

Room 加賀の伝統と今を感じる 客室

上質なくつろぎに満ちた 加賀伝統工芸の間

客室は加賀の伝統工芸を随所に取り入れたご当地感あふれるしつらえに。九谷焼のタイルと山中塗のアートワークの壁掛けや加賀友禅パネルのヘッドボードなど、それぞれの伝統工芸をモダンにアップデートし、現代の快適さに包まれつつ、加賀文化に触れることができる。全ての客室にローベッドとソファを配し、4名まで宿泊できる部屋をはじめ、部屋タイプもいろいろ。全48室のうち18室には露天風呂が配され、温泉を満喫!

あたらしい 工芸品を現代風のアートにアレンジ

ヘッドボードには、水面に映る花や輝きをモチーフにした加賀友禅のパネルを使用。ベッドにも加賀友禅のベッドライナーが掛けられ、伝統工芸がモダンに取り入れられている。

左、客室の鍵のキーホルダーは[界 加賀]のために地元作家が手掛けたオリジナルの九谷焼。右上、障子にあしらわれた水引アートも印象的。茶器も特注品。

Hot Spring 湯あみと工芸を一緒に楽しめる 温泉

美人の湯にちゃぽん 意匠を凝らした装飾も必見

開湯1300年の歴史を誇る山代温泉。硫酸塩泉は、古い角質を落とし、保温・保湿効果も高い美肌泉質と言われていて、湯冷めもしにくい。男湯と女湯合わせて8名の九谷焼の作家が手掛けたアートパネルや金沢箔をあしらったガラス、湯上がり処の加賀提灯と、伝統工芸を取り入れた装飾も目を楽しませてくれる。旅館の目の前には、レトロな雰囲気が楽しめる、明治時代の総湯(温泉の共同浴場)を再現した[古総湯]があり、宿泊者は、何度でも無料で入浴することができる。

王道 レトロなタイルが昔の風情を今に残す

九谷焼のアートパネルで彩られた男湯の内風呂。色絵、青手、赤絵、藍九谷という伝統的な4つの九谷焼様式で、それぞれ春夏秋冬を表現。加賀の風情あふれる湯あみを楽しめる。

全国の[界]を巡って集めるのも楽しい「お湯印帳」。[界 加賀]のスタンプは徽軫灯籠(ことじとうろう)や梅をデザインしたもの。お向かいの[古総湯]へは、客室の風呂敷を持っていくと無料で入浴できる。

あたらしい 工芸品を現代風のアートにアレンジ

フロントがある棟は国の登録有形文化財。ライブラリーでは、北大路魯山人が酔っぱらって書いたとされる「いろは屏風」が展示されている。カラフルな九谷焼のタイルを敷いた中庭。

界 加賀 [石川・加賀]

050-3134-8092(界予約センター)

石川県加賀市山代温泉18-47

IN●15:00 OUT●12:00 全48室

31,000円〜(1室2名利用時1名あたり、2食付き・サ・入湯税込み、極み タグ付き活蟹づくし会席は+26,500円)

加賀温泉駅より車で約10分。

ACCESS●
大阪駅・サンダーバード→敦賀駅・新幹線→加賀温泉駅下車。タクシーで10分。
片道7,750円、約2時間10分。

お土産にいかが?
[界 加賀]オリジナルお土産 しみみ、干菓子、九谷焼の箸置き

左から時計回りに、金沢[落雁 諸江屋]とのコラボ。加賀藩前田家の家紋・梅をかたどった落雁・花うさぎ650円。九谷焼の箸置き各880円。おかきにチョコレートを染み込ませた新感覚の和洋菓子、しみみ・ほうじ茶、きなこ各1,375円

日本各地の界も要チェックです!
絶景な「界」へ!

界 玉造 [島根・松江]

050-3134-8092(界予約センター)

歴史ある玉造温泉にたたずむ宿。日本海の幸、日本酒や茶の湯など、滞在を通して島根の魅力に触れることができる。和紙で包んで蒸すオリジナルの奉書蒸しで味わうタグ付き活松葉蟹会席が人気。客室は全室露天風呂付き。

島根県松江市玉湯町玉造1237

IN●15:00 OUT●12:00 全24室

41,000円〜(1室2名利用時1名あたり、2食付き・サ・入湯税込み、タグ付き活松葉蟹会席は+21,400円)

JR玉造温泉駅より車で5分

界 出雲 [島根・出雲]

050-3134-8092(界予約センター)

出雲神話が根付く日御碕に位置し、水平線に沈む夕日、昇る朝日を望む絶景を楽しめる。日御碕にちなみ、カニのほぐし身を灯台に見立てた宿オリジナルの先付けから始まる八雲立つ蟹会席(タグ付き活松葉蟹)がお目当て。

島根県出雲市大社町日御碕604

IN●15:00 OUT●12:00 全39室

31,000円〜(1室2名利用時1名あたり、2食付き・サ・入湯税込み、八雲立つ蟹会席は+13,200円)

JR出雲市駅から一畑バス「日御碕灯台」バス停下車すぐ