アイヌ民族の文化継承の地として知られる北海道・白老に
2022年
誕生した温泉旅館[界 ポロト]。
アイヌ民族のように
自然の恵みに感謝しながら、
この場所でしかできない体験を。
写真/島田勇子 取材・文/天見真里子
ポロト湖を眺めながら
アイヌ文化に思いをはせる旅
北海道の南西部、白老(しらおい)町に建つ[界 ポロト]は「ポロト湖の懐にひたる、とんがり湯小屋の宿」がコンセプト。敷地内に湖を引き込んだような印象的な設計は、三角形状の湯小屋はクチャ(仮小屋)、客室はチセ(家)、とアイヌ民族の暮らしがモチーフになっており、アイヌ文様の刺しゅうや木彫りアートなど、館内の随所で手仕事の温かみを感じることができる。アイヌ文化の要素は「ご当地」にちなんだプログラムや料理の演出にも表れる。「自然界全てのものに魂が宿る」という精神性のもと、いつもとは少し違った心持ちでお酒を飲んだり、温泉に入ったりするのもここならでは。さらに、とろりとした肌触りのモール温泉がまた良いお湯! 温泉のカムイ(アイヌ語で「神様」)に感謝しながら、北の大地に身を委ねてみて。
伝統的な湯治をヒントに考案されたさまざまなステイプランを、「ご当地楽」「ご当地部屋」など地域の伝統文化を取り入れたサービスと共に楽しめる、星野リゾートの温泉旅館ブランド。国内の温泉地に23施設を展開し、温泉大国の恵みを新しい形で提案する。
湖の南に面する4階建ての建物は、全ての客室がポロト湖ビュー。部屋に入ると「これぞ北海道!」な大自然の絶景が出迎えてくれる。地域文化を取り入れた「ご当地部屋」の「□(しかく)の間」には、アイヌ民族の家「チセ」から着想を得たディテールがあちこちに。アイヌ文様をモチーフにしたテキスタイルや、炉を模したテーブルは、洗練されつつも、窓の外の天然林や樽前山の景色と調和。テラスと露天風呂付きの特別室では、大自然に溶け込むようなぜいたくな時間を過ごせる。
左から、左上/直線と曲線で構成されたアイヌ文様が壁紙に。下/クッションのアイヌ文様の刺しゅうは、アイヌ服飾文様研究家の第一人者、津田命子(のぶこ)のデザイン。右上/タペストリーやオール(櫂)など、各部屋で異なるデザインのウォールアートは、阿寒湖在住の木彫作家、岡田 実のもの。
造りが異なる2種の湯屋で楽しめる温泉は、北海道遺産にも指定された植物由来のモール温泉。これが浸かって即・実感できる“美肌の湯”! 茶褐色のお湯はとろとろの肌触りで、まるで美容液のよう。その正体は、フルボ酸やフミン酸といった腐植質の有機物。実際に化粧品にも採用される成分で、ずっと肌を触っていたくなる気持ちよさ。アイヌ民族の建築様式から着想を得たとんがり屋根の△湯、地中に抱かれるような空間の◯湯、二つの温泉で特別な癒やし時間を。
温泉いろは
温泉の管理人“湯守り”が、白老と温泉、アイヌ民族の関係性などを交えながら、効果的な入浴法を伝授。湯上がり処で毎日16時から。
現代湯治体操
朝7時からロビーで開催される体操は、深い呼吸法がポイント。タンチョウヅルをイメージした「羽ばたき体操」で、肩や首のこわばりをリセット!(共に参加無料、予約不要)
1泊2日で湯治体験ができる「うるはし現代湯治」。[界]の温泉記録は「温泉いろは」に参加するともらえる「お湯印帳」のスタンプで。
○湯 瞑想するようにゆっくりと「浸かる」ことに特化した大浴場。神秘的な空間は、もともとこの地にあった“おにぎり山”を再現したドームの真ん中に天窓があり、柔らかな光が差し込む造りに。
[界 ポロト]には体験を通してアイヌ民族の精神性や自然観に触れられるコンテンツがたくさん。アイヌ語で「神の足」を意味するイケマという植物を使って魔除けを作る「ご当地楽」では、「天から役目なしに降ろされたものは一つもない」というアイヌ民族の自然観をレクチャー。“火のカムイ(神)”を囲むラウンジで夜に開催する「コタンの宵の集い」は、お酒を楽しむ有料のプログラム。語り部の話を聞きながら「自然の恵み、造り手の思いをいただく」特別な一杯は、いつもと違う味わいに。
コタンの宵の集い
アイヌ民族の精神性につながる話を聞きながら、ご当地ならではのお酒を楽しむ、プライベートなバーのような集い。1階のアペオイ(いろり)付近で、予約制にて開催。ドリンク1,500円~
「ご当地楽」は、伝統工芸、芸能、食など、その土地の文化に触れる「界」オリジナルのおもてなし。[界 ポロト]では、楽しみながらアイヌ文化の精神性や自然観を知ることができる。
食料自給率トップの北海道だけに、魚介に牛肉、野菜、乳製品など、ほぼ地元の食材でおもてなし。ジャガイモをすり流しにした先付けから始まり、豪華な宝楽盛り、そして北海道では一年中水揚げされる毛ガニがブイヤベース仕立ての洋風鍋で登場。いずれも魚介や野菜のうま味を生かした優しい味付けがうれしい。すっきりした辛みの山ワサビやほんのり甘い昆布じょうゆなど、薬味や調味料まで北海道ならでは。(仕入れ状況によって内容の変更あり)
「ご当地朝食」には、北海道の高級魚と言われるメヌキのしょうゆこうじ漬けや牛肉の時雨煮など、白ご飯が進む小鉢がずらり。鮭とじゃがいものすり流し鍋はバターでコクをプラス。
界 ポロト[北海道・白老]
050-3134-8092(界予約センター)
北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
IN●15:00 OUT●12:00 全42室 可
31,000円~(1室2名利用時1名あたり、2食付き、サ・入湯税込み)
新千歳空港からJR白老駅まで電車で約50分、
JR白老駅からホテルまで徒歩10分
地元の製菓会社が手掛けるハスカップベリーのバターサンド、イヨマンテ1,200円(左)は[界 ポロト]のオリジナル。アイヌの人々が日常的に飲んでいたと言われる焙煎薬草茶のエント茶ティーバッグ16個入1,296円(右)
界 霧島 [鹿児島・霧島]
050-3134-8092(界予約センター)
神話が息づく高千穂峰の中腹に建つ温泉宿は、全ての客室から桜島を見下ろす開放的なビューが自慢。温泉は、スロープカーで草原にたたずむ湯浴み小屋へ。目の前を遮るものがない霧島高原のパノラマビューは圧巻。
鹿児島県霧島市霧島田口字霧島山2583-21
IN●15:00 OUT●12:00 全49室 可
31,000円~(1室2名利用時1名あたり、2食付き、サ・入湯税込み)
JR霧島神宮駅から車で15分
界 別府 [大分・別府]
050-3134-8092(界予約センター)
日本一の源泉数と湧出量を誇る別府温泉に位置する温泉宿。にぎやかな温泉街をイメージした館内や、まるで絵画のような景色が望める全室オーシャンビューの客室など、ドラマチックに新しい別府の魅力を楽しめる。
大分県別府市北浜2-14-29
IN●15:00 OUT●12:00 全70室 可
32,000円~(1室2名利用時1名あたり、2食付き、サ・入湯税込み)
JR別府駅から徒歩10分