写真/竹田俊吾 取材・文/杉田裕路子

約600年の歴史を持つ名湯で王道かつ新しい温泉旅を

山口県北部の谷あいに位置する長門(ながと)湯本温泉は、江戸時代には歴代の藩主も湯治に訪れていたという県内屈指の温泉郷の一つ。2018年より地域・民間・公共連携の温泉街リニューアルプロジェクトが始動。「オソト天国」をテーマに、「川床テラス」や対岸へ渡れる飛び石、川沿いの広い歩道には多くのベンチが設けられ、そぞろ歩きが楽しい街並みに生まれ変わった。清流・音信(おとずれ)川沿いにたたずむ[界 長門]は、温泉街と連携して地域の魅力を発信する温泉旅館として2020年に開業。「藩主の御茶屋屋敷」をコンセプトに地元の伝統工芸で彩られる館内では、地場の山海の幸を生かした食や、「神授の湯」と呼ばれる名湯だけでなく、希少な「赤間硯(すずり)」を用いた文化体験も楽しめる。伝統を大切にしながら、新たな温泉街の楽しみ方を提案する[界 長門]で、特別なひと時を。

「界」とは・・・・・・?

伝統的な湯治をヒントに考案されたさまざまなステイプランを、「ご当地楽」、「ご当地部屋」など地域の伝統文化を取り入れたサービスと共に楽しめる、星野リゾートの温泉旅館ブランド。国内の温泉地に23施設を展開し、温泉大国の恵みを新しい形で提案する。

温泉街の中心を流れる音信川。より街並みの風情を楽しめるようにと新設された「川床テラス」は自由に利用可能。

伝統的な湯治をヒントに考案されたさまざまなステイプランを、「ご当地楽」、「ご当地部屋」など地域の伝統文化を取り入れたサービスと共に楽しめる、星野リゾートの温泉旅館ブランド。国内の温泉地に23施設を展開し、温泉大国の恵みを新しい形で提案する。

日本各地の「界」も要チェックです
長門自慢の美肌の湯 温泉

温泉を楽しみながら
癒やされる現代湯治を体験

湯治(とうじ)とは、温泉地に長期滞在して病気や怪我からの回復を試みる、古くから伝わる温泉療法のこと。「界」ではそんな湯治文化を現代人のライフスタイルにもフィットさせるべく、一泊二日の滞在でも温泉の効果を感じられる「うるはし現代湯治」を提案。温泉の由来や泉質、入浴方法や入浴後のくつろぎ方などを伝え、オリジナルの「お湯印帳」で各地の「界」の湯巡りがより楽しくなるような体験を用意する。

源泉かけ流しの湯に漬かり日々の疲れをリセット。無色透明の、アルカリ性が強めの泉質で、とろりとした化粧水のような肌触りの「美肌の湯」。

王道 神のお告げで発見されたという長門湯本温泉の源泉をかけ流しで
湯守さんに教わる うるはし現代湯治

38℃ほどの源泉かけ流しの「ぬる湯」と、源泉を加温した約40℃の「あつ湯」に分かれた大浴場。まずは体を洗ってから「あつ湯」に漬かって体を温め、「ぬる湯」に漬かる交互浴をすることで、深いリラックス効果を感じられる。

左から右上から時計まわりに、お風呂アイテムを持ち運べるオリジナルの風呂敷。絵本を使い長門湯本温泉の歴史と共に泉質や効果的な入浴法を説明する「温泉いろは」(無料、予約不要)。「界」全施設での旅の記録が残せる「お湯印帳」300円(「温泉いろは」参加者は無料)に、「お湯印」をスタンプ。朝は筆で文字を書く動きを取り入れた「界の現代湯治体操」でストレッチ(参加無料、要予約)。

あたらしい 「温泉いろは」や「お湯印張」などを楽しみながら湯治体験を
お湯印帳
あたらしい 徳地和紙をヘッドボードにするなど、新しい伝統文化との触れ合い

特別室は広々としたリビングスペースに、萩の城下町をイメージした庭と露天風呂を設えたぜいたくな造りに。庭を眺めながら、「美肌の湯」にゆったりと漬かって。ウエルカムティーにはショウガと玄米のオリジナルブレンド茶を。

王道 武士家のような段差や萩焼、大内塗、萩ガラスなど伝統工芸の設え
モダンな和室が心地良い 客室

山口の伝統工芸と
四季の情景を楽しむ「長門五彩の間」

居心地の良さとその土地の個性を追求した「ご当地部屋」。「長門五彩の間」の特別室(左)には、徳地和紙、萩焼、萩ガラス、大内塗といった山口県の伝統工芸を室内に設え、さらに「窓から望む四季の風景」を加えた五彩で客室を演出。一段高くなった寝台は、藩主が休む上段の間をイメージしたもので、カラフルな徳地和紙のヘッドボードが彩りを添える。客室は、和室、露天風呂付き和室、特別室の3タイプ。

王道 武士家のような段差や萩焼、大内塗、萩ガラスなど伝統工芸の設え

夫婦円満の象徴として親しまれる大内塗の大内雛がルームキーに。

海と山の幸がたくさん 料理

地元の食材を生かした
目にも舌にも麗しい料理

三方を海に囲まれ、四季を通じて新鮮な魚介が揚がる山口県は美食の宝庫。夜は肉厚で甘味の強いイカや、爽やかな風味が広がるゆずきちや夏ミカンといった柑橘類など、地元の食材を生かした料理でおもてなし。「特別会席」では、春夏は山口の郷土料理・瓦そばから発想した瓦焼き、秋冬はてっちりをアレンジしたふぐと牛の源平鍋など、伝統に革新を加えた[界 長門]ならではの味が楽しめる。朝食(下)は、自家製豆腐やご飯のお供がずらり。

アカモクのみそ汁、イカ焼売、旬の焼き魚など地域色豊かな料理の数々で、白米が進む「桶盛り朝食」。桶や萩焼など料理を引き立てる器にも注目して。

あたらしい 山口の郷土料理「瓦そば」から着想を得た、牛と鶏と旬彩の瓦焼き
王道 烏賊の二色和えやふくの煮凝りなど地元が誇る食材を先付けに

左下/イカ墨のコクと大葉の爽やかな風味がマッチした烏賊の二色和えは、先八寸の中でも自慢の一品。 中央右上/「特別会席」では、ふく(フグ)の薄造りを提供。ちり酢をはじめ、長門市の釜吹き塩「百姓の塩」や、粒雲丹ダレでいただく。左上/牛と鶏と旬彩の瓦焼きは、ゆずきちコショウやガーリックパウダーなどの5種の調味料でお好みの味付けを。

地元の自然や伝統に触れる ご当地

伝統の工芸に触れ、
特産品を使ったおやつに舌鼓

温泉街では2018年から「川床テラス」などを使った河川空間の利活用がスタート。山口県特産のゆずきちや夏ミカンをあんに練り込んだどら焼きやドリンクを片手に川辺で味わえばおいしさもひとしお。800年以上の歴史がある山口県の伝統工芸・赤間硯で墨を使った「大人の墨あそび」も体験でき、あらゆる角度からご当地の魅力を満喫して。

各地の特徴的な魅力を ご当地楽

赤間硯で墨をすり、扇子型の和紙に旅の思い出を自由に綴る「大人の墨あそび」。墨をする感触と香りに癒やされ、思いのままに筆を遊ばせて。当日ご当地楽ラウンジにて受付。参加無料。

各地の特徴的な魅力を ご当地楽

宿併設の[あけぼのカフェ]は宿泊者以外も利用可能。ゆずきち、夏みかん、あずきの3種のどらやき各300円、スペシャルラテ600円

そぞろ歩き楽しい♪温泉郷

ゆったり散策しながら
情緒あふれる温泉街の景色を堪能

長門湯本温泉街には「竹林の階段」や「音信川の飛び石」など四季折々の表情を見せる美観が点在。夜はライトアップされ昼とはまた違った風情が楽しめるので、暗がりの散歩もお薦め。[界 長門]では宿泊者向けにスタッフと夜の温泉街を巡る「音信あかりみちさんぽ」を金〜日限定で開催している(参加無料、当日19時までにフロントにて要予約)。

「神授の湯」伝説に関わる大寧護国禅寺と住吉神社にて、御朱印が受けられる限定の御朱印紙1,000円も。

恩湯おんとう

0837-25-4100

住吉大明神のお告げで発見され「神授の湯」と親しまれる温泉施設が2020年3月にリニューアル。全国的にも珍しい、源泉の真上に建物が建てられ湯船の底から源泉が湧き出る造り。約39℃のぬる湯にゆったり漬かった後の湯上がりの一杯もぜひ。366ビール880円、温泉ラムネ300円

山口県長門市深川湯本2265

10:00〜22:00 第3火(祝の場合は変更あり)

入浴料990円

JR新山口駅から車で約60分

[界 長門]の近くには、お昼も楽しいスポットがいっぱい!

瓦で熱されパリパリになり、食感の違いを楽しめるのも醍醐味。瓦そば1人前1,386円(写真は2人前)

瓦そば柳屋 長門湯本店

080-9185-3070

熱した瓦に茶そばと錦糸卵、牛肉などの具をのせ、温かいつゆでいただく山口の郷土料理・瓦そばの専門店。地元産の食材にこだわり、少し甘めであっさりとした後味に仕上げたつゆが自慢。

山口県長門市深川湯本1325-1 1F

11:00〜18:30LO

火&第3水 13、テラス8

JR新山口駅から車で約60分

cafe and shop Treトゥレ

なし

福岡県の人気ベーカリー[IMUSTAN]から届くスイーツを味わいながら、音信川を一望できるカフェ。国内外からセレクトした雑貨も販売し、毎月第3土・日・月限定で南インドカレーのランチを提供する。

山口県長門市深川湯本1325-1 2F

11:00〜16:30(ランチ〜13:30)共にLO

火・水 物販は可 13、テラス9

JR新山口駅から車で約60分

左上、[IMUSTAN]のチーズケーキ770円とコーヒー550円。右上、南インドカレーのランチプレート1,200円

界 長門[山口・長門湯本温泉]

050-3134-8092(界予約センター)

山口県長門市深川湯本2229-1

IN●15:00 OUT●12:00 全40室

1泊32,000円〜(1室2名利用時1名あたり、2食付き、サ・入湯税込み)

JR新山口駅から車で約60分、山口宇部空港から車で約70分

ACCESS

大阪→界 長門/電車&レンタカー●JR大阪駅→山陽新幹線・新山口駅→レンタカー・界 長門。
大阪から約2時間50分。往復運賃39,040円〜(アクセスルートや運賃、所要時間は一例です)

お土産にいかが?

[界 長門]オリジナル
萩 夏みかん菓子

スティック状にした良く熟した夏ミカンの皮と、熟れる前の青い夏ミカンの皮の部分をスライスして作った干菓子がセットに。かごに入ったパッケージはギフトにもぴったり。150g 900円

日本各地の「界」も要チェックです
山口からひと足伸ばして、九州の「界」へ!

界 由布院[大分・由布院温泉]

050-3134-8092(界予約センター)

由布岳の麓、日本の原風景とも言える棚田を見渡すロケーションで四季折々の風景を楽しめる。アナグマなどのジビエや山の幸をふんだんに使った食事、ご当地のわら綯(な)いなど、昔ながらの農村のような体験にも心が緩む。

大分県由布市湯布院川上398

IN●15:00 OUT●12:00 45室

1泊35,000円〜(1室2名利用時1名あたり、2食付き、サ・入湯税込み)

JR由布院駅から車で7分

界 雲仙[長崎・雲仙温泉]

050-3134-8092(界予約センター)

温泉地獄と地続きの立地で、効能豊かな硫黄泉を堪能できる。あご(トビウオ)だしのしゃぶしゃぶといった郷土の味や、部屋と同じ幅の浴槽を持つ「客室付き露天風呂」など、長崎文化も織り込んだ客室にも注目を。

長崎県雲仙市小浜町雲仙321

IN●15:00 OUT●12:00 51室

1泊25,000円~(1室2名利用時1名あたり、2食付き、サ・入湯税込み)

県営バス「雲仙」バス停から徒歩すぐ