日本海らしい冷たく澄んだ冬の空気に、思わず背筋がピンと伸びる。出雲大社が鎮座する神話の地。実は島根県は、活蟹会席が楽しめる温泉旅館ブランド[界]3施設のうち、二つが存在する格好の冬旅スポットでもある。旅初日は精神面からお参り支度をサポートしてくれる絶景の宿[界 出雲]の禊ぎ湯でけがれを払い、大社参拝の後に二日目は美肌の湯宿[界 玉造]でのさまざまな体験を通して土地を深く知る。内と外、アプローチが異なる2施設を巡ることで、今も神々と共にある島根の解像度は飛躍的に高まる。今だけの景色、今だけの味覚。それもまた、出雲が結ぶ〝ご縁〟だ。
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灯台側と海側の客室の意匠は、窓からの景色とリンクする仕掛け。
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蟹身を宿のそばにたつ日御碕(ひのみさき)灯台のように高く盛り付けた夕食の先付け。信頼の証、赤タグ付きの蟹、この日は鳥取・境港から。
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地元の工房に特注した練り物や、寝起きの体に染みるシジミ汁。早起きしたくなる、ご当地朝食を。
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みずみずしさもキープ。松葉蟹を奉書で包み、ふっくらと蒸しあげたメインの「奉書蒸し」。
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ここから先は非日常の時間。ロビーから1938年築の朱塗りの太鼓橋を渡り、客室へと進む。
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神殿をモチーフにした湯口。3面を窓に囲まれた内湯で、神々しい朝の光に包まれながら。
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ヘッドボードは伝統工芸の藍染による作品。伝統と現代の感性を融合させた和モダンな客室。
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枠にとらわれない蟹会席を提案する「八雲立つ蟹会席」。ウニやキャビア、蟹みそで味変にも心躍る灯台盛りを筆頭に、エディブルフラワーで彩られた湯引き刺しなど全8品が登場する。蟹身はすべて殻を外した状態で提供されるため、味に全集中! 豊かな松葉蟹の甘みとうま味に没入できる。
炊きたてごはんに、蟹身がたっぷりと。松葉蟹と三つ葉の土鍋ごはん。
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
活蟹をさまざまな調理法でダイナミックに表現した「極み タグ付き活松葉づくし会席」。ユニークなのが、名産品である石州瓦の土鍋で提供する松葉蟹と大粒の宍道湖シジミの鍋だ。シジミと蟹の共演はこの時期だけ(〜3月)。専用に考案された日本酒ペアリング2,200円で重層的なうま味を受け止めて。
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
清めの塩の代わりとして参拝前に利用したい「禊ぎ湯」。[界]でもここだけの塩化物強塩泉で、海水に近い塩分濃度から肌のクレンジング効果が期待でき、湯上がりも保温効果が持続。大浴場では昼は出雲松島と称される半島美、夜は星空と日本海に浮かぶいさり火の幻想的な風景を楽しめる。
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内湯には源泉だけで満たした浴槽も。強めの泉質のため、湯上がりにはシャワーを。
湯口から勢いよく流れ出る温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム・硫酸塩・塩化物泉。奈良時代に編さんされた「出雲風土記」にも登場する名湯で、古来より“美人の湯”と伝わる。肌にぴったりと吸い付くようなテクスチャーで、湯上がりもしっとり。天然の化粧水効果で玉のような肌に。
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高濃度の潤い成分を含有。内湯には源泉を染み込ませて使用するフェイスパックも用意。
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石見神楽にも使用する伝統工芸品、石州和紙を紅殻色に染色。ヘッドボードは水平線をイメージ。
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染色に織物、陶芸。出雲の職人による手仕事が散りばめられたご当地部屋。海側の客室は部屋から見える朝日をイメージした淡い紅殻色、西側にあたる日御碕灯台側は沈む夕陽を鮮やかに見せる効果がある藍色がテーマカラーに。移ろう景色をぼんやりと眺めながら、ただただリラックス。
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全24室の客室はすべてヒノキ、もしくは信楽焼の露天風呂付きで、いつでもプライベートな湯あみが可能に。麹室をイメージした白木の空間や目を引く酒樽テーブルは、日本酒を大蛇に飲ませ成敗した八岐大蛇神話から島根発祥とされる日本酒にちなんだもの。
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アップテンポなお囃子と共に繰り広げられる出雲地方の伝統芸能「石見神楽」。演目は出雲大社誕生前、稲佐の浜を舞台に高天原からの使いと大国主神の力自慢の息子が国をかけて戦うさまざまを描いた神話「国譲り」。鮮やかな衣装を身にまとった演者による勇壮な演技、早着替えもお見逃しなく!
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朝食には島根でよく食べられる海藻のアラメやアナゴを卵でとじた、アラメ磯鍋がセットに。神様の食事と同じものをいただくことで神様とのご縁を結ぶ専用プラン限定の神饌朝食(写真左)(写真左下)も。
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出雲松島に開かれたテラス。日の出の時刻「かわたれどき」には神秘的な情景が。
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演目は「古事記」や「日本書紀」に登場する八岐大蛇神話を題材にした「大蛇」。演者の息遣いが聞こえてきそうな距離で繰り広げられる、素戔嗚尊と大蛇による激しい戦い。クライマックスでは全長16mの大蛇の巨体を生かした大技も披露。熱気に満ちた演舞に引き込まれる。
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館内にはスタッフが紹介する島根の地酒を少量から味わえるバーも。ショップで販売のオリジナル手帳「後酒飲帳」300円に感想をメモ。
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茶室では松江の茶の歴史に造詣の深い亭主が、軽妙なトークを交えながらお点前を披露。立礼式なので初心者も気軽に体験できる(無料)。
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玉造温泉同様、美人の湯と称される温泉。宿泊者はステンドグラスと九谷焼タイルに彩られた公衆浴場「古総湯」の入浴が無料に。
文人墨客に愛された老舗旅館[白銀屋]の歴史に新時代の感性を吹き込んだ温泉旅館。塩水に浸した縄で蟹を巻いてじっくりと蒸しあげた「活蟹のしめ縄蒸し」は、今では宿を代表する名物に。2023年春には金継ぎ工房がオープン。人気の宿に新たな魅力が加わった。
界 加賀[石川・加賀]
050-3134-8092
石川県加賀市山代温泉18-47
全48室 IN●15:00 OUT●12:00 可
31,000円〜
(1室2名利用時1名あたり、2食付き、サ・入湯税込み)
JR加賀温泉駅から車で約10分
「王道なのに、あたらしい。」をテーマに掲げ、全国の温泉地22カ所に展開する温泉旅館ブランド。温泉以外にもくつろぎを追求した客室や料理、文化体験プランでその土地だけの旅を提案する。精鋭スタッフによるきめ細やかなサービスも界ブランドならでは。