時の上皇が都から熊野三山に詣でる「熊野御幸(くまのごこう)」。現在の京都から出発し、大阪、そして和歌山へ。長い道のりをゆくにも関わらず、後世の熊野詣ブームにつながる一大行事に。歴史に思いを馳せつつ、身近な神社・お寺から世界遺産の聖地・熊野へ!
熊野御幸にゆかりある社寺で御朱印をいただきすてきなご縁を結んでみませんか?
「熊野御幸(くまのごこう)」ってなに?
和歌山県南東部に位置し、古代より神々が鎮まる特別な場所とされた熊野。「熊野三千六百峰」と呼ばれるほど深い山々が連なり、自然崇拝に根ざした神道、中国伝来の仏教、それらが結びついた修験道と、多様な信仰が共にある霊場でもあった。京に都があった平安時代後期に世を震かんさせたのが“末法思想”。釈迦の入滅後1500年以降の末法は、世界が退廃するという仏教観を背景に、時の上皇が“現世の浄土”を求めて詣でたのが熊野だった。 往復20日以上を要する難行苦行の旅は「熊野御幸」と言われ、その最終目的地は「熊野三山」と呼ばれる熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、那智山青岸渡寺。長く険しい道を経て詣でることで、生まれ変わって現世に戻ることができる。そんな「よみがえりの聖地」と信じられていた熊野への道中には、今回紹介する11社寺以外にも、熊野九十九王子と言われる多くの王子社がある。そこで神事を重ね、神楽や和歌などを奉納しながら、総勢数百名という壮大な一行を率いて、熊野に詣で、世の平安を祈ったのだった。
〈前編〉〈後編〉で紹介している11社寺で、「熊野御幸ゆかりの御朱印めぐり」専用の御朱印帳を無料で配布中!詳しくは記事をスクロールしてチェック!
京都・大阪・和歌山の社寺へ!
院政の拠点であり、熊野御幸の起点となる神社
☑京都・鳥羽[城南宮(じょうなんぐう)]
794(延暦13)年、平安京の南に国と都の守護神として創建された。平安時代後期、白河上皇や鳥羽上皇が城南宮を中心に鳥羽(城南)離宮を造営し院政の拠点とすると、離宮の鎮守として厚く崇敬された。離宮は熊野御幸に先立ち心身を整える精進屋とされ、出立の儀式を行い、鳥羽の津から舟で淀川をくだり熊野へ向かった。城南宮は今も旅行や引越安全の「方除の大社」と信仰を集めている。
- 電話番号075-623-0846
- 住所京都市伏見区中島鳥羽離宮町7
- 営業時間授与所9:00~17:00※境内参拝自由
- 料金境内参拝無料
- アクセス京都南ICから車ですぐ
\城南宮から徒歩すぐ/立ち寄りグルメ
[おせきもち]
その昔、鳥羽街道沿いの茶屋の娘・おせきにちなみ、店名にもその名を冠する名物おせきもち。丹波大納言の粒あんに、こしのある軟らかな餅を合わせた優しい甘さがクセになる。6個710円
- 電話番号075-611-3078
- 住所京都市伏見区中島御所ノ内町16
- 営業時間8:30~17:30
- 定休日月・火
- カード使用不可
- アクセス市バス「城南宮東口」バス停から徒歩すぐ
往路の奉幣は欠かさず。由緒ある国家鎮護の宮
☑京都・八幡[石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)]
お宮が鎮座する男山は、桂川、宇治川、木津川が合流して淀川となる交通の要衝。熊野御幸では、伏見から船で出発した上皇一行がこちらで奉幣(幣帛=へいはくを奉ること)を行うのが慣例だった。平安中期には朝廷による請願で、八幡大神の神威をもって承平天慶の乱を平定。国家鎮護の宮として厚い崇敬を受け、天皇の行幸や上皇の御幸は240回余りに。伊勢神宮に次ぐ国家第二の宗廟(そうびょう)とされる。
- 電話番号075-981-3001
- 住所八幡市八幡高坊30
- 営業時間授与所9:00~16:00※参拝6:00~18:00
- 料金境内参拝無料
- アクセスケーブル八幡宮山上駅から徒歩5分
\石清水八幡宮から徒歩10分/立ち寄りグルメ
[やわた走井餅老舗]
明治期から石清水八幡宮の参拝者をもてなしてきた菓子舗。開運出世の願いから刀身をかたどった走井餅は滋賀産羽二重餅の中に上品な北海道産小豆のこしあんがたっぷり。抹茶付き700円
- 電話番号075-981-0154
- 住所八幡市八幡高坊19
- 営業時間9:00~17:30(喫茶~17:00LO)
- 定休日月(祝日の場合翌 日休)
- カード使用不可
- 席数30
- アクセス京阪石清水八幡宮駅から徒歩3分
極楽浄土の入口と、熊野に通じる南大門へ
☑大阪・天王寺[和宗総本山 四天王寺(わしゅうそうほんざん してんのうじ)]
聖徳太子が建立した、日本仏法最初の官寺。熊野御幸を先駆した花山法皇と縁が深く、19歳で仏門に入った法皇が百石もの米を寄進した記録も。石鳥居がそびえる西門は古来より極楽浄土の東門にあたると信じられ、現世の浄土を求めた熊野御幸でも信仰の対象に。現在も南大門にある熊野権現礼拝石(下)は、熊野詣の道中安全を祈った場所。一方で、拝めば熊野参詣の代わりになるとも。
- 電話番号06-6771-0066
- 住所大阪市天王寺区四天王寺1-11-18
- 営業時間開納経所4~9月は8:30~16:30(毎月21日は8:00~17:00)、10~3月が8:30~16:00(毎月21日は8:00~16:30)※境内参拝自由
- 料金中心伽藍300円(10/1~500円)
- アクセス大阪メトロ四天王寺前夕陽ヶ丘駅から徒歩5分
\四天王寺から徒歩すぐ/立ち寄りグルメ
[総本家釣鐘屋]
四天王寺の梵鐘がモチーフの釣鐘まんじゅう1個180円。シンプルながらも吟味された素材と、伝統の手焼き技術で生み出される味わいで長く愛される。石鳥居の目の前で買えるのもうれしい。
- 電話番号06-6771-0044
- 住所大阪市天王寺区大道1-5-2
- 営業時間9:00~18:00(土・日・祝~17:00)
- 定休日不定
- カード使用不可
- アクセス大阪メトロ四天王寺前夕陽ヶ丘駅から徒歩6分
風光明媚な海辺にあった古代よりの“和歌”の神
☑大阪・住吉[住𠮷大社(すみよしたいしゃ)]
後鳥羽上皇の熊野御幸に伴った藤原定家が、「和歌の神である住吉の社に参拝することは、一身の幸せ」と『熊野御幸記』に綴ったように、古代から歌人の信仰を集めた住𠮷大社。当時は白砂青松のほとりに社が建ち、その風光明媚な景色は御一行の歌心を奮い立たせたはず。境内にある末社の新宮社には、熊野参詣道に沿って設けられた九十九王子の一つ、津守王子社が現在も祭られている。
- 電話番号06-6672-0753
- 住所大阪市住吉区住吉2-9-89
- 営業時間授与所9:00~17:00※参拝6:00~17:00 (10~3月6:30~)
- 料金境内参拝無料
- アクセス南海住吉大社駅から徒歩3分
\住吉大社から徒歩10分/立ち寄りグルメ
[粟玄(あわげん)]
おこし専門店であるこちらの名物はアーモンドをコーヒーと生クリームで包んだおこし「和洋」で、和と洋の合わせ技がお見事。コーヒー、日本茶どちらとも相性抜群! 14個入り袋3本3,240円
- 電話番号06-6671-0246
- 住所大阪市住吉区上住吉1-2-3
- 営業時間9:30~16:30
- 定休日土・日・祝
- カード使用不可
- アクセス南海住吉東駅から徒歩5分
別格の拝礼を捧げた紀伊国きっての古社
☑和歌山[日前神宮・國懸神宮(ひのくまじんぐう・くにかかすじんぐう)]
創建2600余年と伝わる、紀伊国一之宮。全国でも珍しい二社一体の大社で、一つの境内に日前神宮と國懸神宮という二つの大社が鎮座する。共に御祭神は天照大神。各社に御神体として祭られる日像鏡・日矛鏡(ひがたのかがみ・ひぼこのかがみ)は、『日本書紀』によれば天照大神の御鏡であり、三種の神器に次ぐ宝鏡とも。熊野御幸の際は、再拝を二度に分ける最も丁寧な拝礼が行われるなど、その格式は別格。
- 電話番号073-471-3730
- 住所和歌山市秋月365
- 営業時間授与所8:00~17:00※参拝5:00~16:40
- 料金境内参拝無料
- アクセス和歌山電鉄日前宮駅から徒歩すぐ
\日前神宮・國懸神宮から車で6分/立ち寄りグルメ
[小さなスコーン屋さん ゆいぐくる]
店主の大城あゆりさんいわく、「目指すのは高級食パンのようなスコーン」。リッチな風味にして、老若問わず愛されるしっとりとした食感が格別! プレーンのほか、チョコチップ、紅茶など各290円~
- 電話番号070-9168-2669
- 住所和歌山市南休賀町38 岩辰金属ビル1F
- 営業時間10:00~17:00
- 定休日日・月
- カード使用不可
- アクセスJR和歌山駅から徒歩18分
難所の藤白坂を目前に心身を休めた寝泊の社
☑和歌山・海南[藤白神社(ふじしろじんじゃ)]
熊野へ続く道々に、熊野権現の分身を祭った九十九王子。なかでも格式高い五つの王子の一つ、藤白王子がこの地にあった。熊野御幸の際は上皇方が必ず宿泊し、神楽や経供養、歌会、相撲など特別な催しも行われた。時を同じくして、熊野から移り住んだ鈴木氏が熊野信仰を全国に普及する拠点に。境内の権現堂には、平安後期作と伝わる熊野三山の本地仏(上)が現存し、熊野との深い繋がりを伝える。
- 電話番号073-482-1123
- 住所海南市藤白466
- 営業時間授与所10:00~16:00※境内参拝自由
- 料金境内参拝無料
- アクセス海南ICから車ですぐ
\藤白神社から車で10分/立ち寄りグルメ
[KAMOGO(カモゴ)]
元JAの建物を利用した居心地のいいカフェ。[栢木豆腐店]の豆乳で作るドーナツや[THE ROASTERS]のコーヒーなど選り抜きのメニューも魅力。ドーナツ&プレーンユズミルクアイス480円、コーヒーM450円
- 電話場号073-488-6925
- 住所海南市下津町方372-1
- 営業時間10:00~18:00
- 定休日火・水
- カード使用不可
- 席数50
- アクセスJR加茂郷駅から車で2分
参拝の方法とマナーを知ろう
神社
①鳥居をくぐる前に一礼
②神様が通る参道の真ん中を避けて歩く
③手水舎で手を清め本殿へ
④お賽銭を供え鈴を鳴らして神様にお知らせ
⑤二礼二拍手一礼
⑥御朱印やお守りを授かるお寺
①山門をくぐる前に一礼
②敷居は踏まずにまたぐ
③お寺によって鐘をついたり手を清めたりする
④お賽銭を供えたり献灯・献香を行い、本堂へ
⑤合掌し、一礼
⑥御朱印やお守りを授かる
オリジナルの御朱印帳をチェック!
今回、紹介している11社寺で御朱印帳を配布中!
今回、〈前編〉〈後編〉で紹介している11社寺で、「熊野御幸ゆかりの御朱印めぐり」専用の御朱印帳を無料で配布中!さらに城南宮、熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、那智山青岸渡寺の5社寺ではそれそれ異なるステッカー(下)も配布。
下記期間に各社寺を巡って、御朱印を授かりながら、貴重なご縁を結んでみよう。
※御朱印授与は、年末年始等、書き置きでの対応となる場合があります。
※御朱印授与の際は、御朱印料をお納め下さい。◎御朱印帳とステッカーの配布期間 2024年9月21日〜なくなり次第終了
◎詳しくは和歌山県観光連盟 ☎073-422-4631
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※記事は2024年11月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
写真/白井孝明 米田真也
取材/村田恵里佳
イラスト/杉本 月
協力/和歌山県観光連盟