現在進行形の和菓子、
ネオ和菓子を知りたい!
洋の素材を合わせたり、新食感を加えたり、体に優しいものを追求したり……。
伝統を生かしつつも、既視感のない滋味。それがネオ和菓子。
SAVVY3月号『おやつ図鑑』からご紹介します。
○京都・壬生[SHUKA]
手を加えすぎない製法で
洋の素材も取り入れた“種”の菓子
種の気持ちを体感する土壁で囲まれた空間
京都で97年続く甘納豆専門店[斗六屋]の新ブランドの直営店がオープン。
コンセプトの「自然の恵みに手を添える」を物語る空間は、床も壁も天井も水でこねて藁をすき込んだ土でできている。はるか上方には天窓があり、自然光がさんさんと降り注ぐ。これは、土中に植えられた種子が空に向かって芽を出す時に見る景色を疑似体験できる仕掛け。入り口の壁にも種子が植え込まれていて、芽吹きの時を待っている。
家業への思いを変えた甘納豆ファンの存在
幼少期から甘党男子を名乗るほどのスイーツ好きだった店主・近藤健史さんは、思春期に「甘い納豆なんて気持ち悪い」とからかわれた経験から甘納豆屋を継ぎたくないと思ってきたそう。
研究者を目指し大学院に進学するも、そのかたくなな気持ちを解きほぐしたのは甘納豆を愛するファンの存在。喜んで食べてくれる人がいることを知り、「素晴らしい仕事だと思い直し、家業を継ぐ決心をしました」と。
砂糖漬けの技術を生かす素材感を残した種の菓子
1926年に甘納豆専門店を開いたのは近藤さんの曾祖母。仕事でインドを訪問した際、商いのヒントを得たのだそう。その後は、卸業を主に、甘納豆作りを続けてきた。
その四代目となった近藤さんは“年配の人が食べる物”とのイメージを一新させたい思いを募らせている。そして、イタリアで食べたチョコレートをヒントに試行錯誤し、ほろほろと軟らかい食感が特徴の甘納豆を、あえて素材の食感を残した新しいおかし”種菓(しゅか)”として完成させた。
原料は黒豆など全6種。ふっくら炊き上げ、斗六豆は和三盆、アズキは原料糖というように種ごとに糖類を使い分けて、蜜に漬け込み、乾燥させる。みそのようなコクのある風味を感じるカカオや弾力感も魅力の丹波黒豆など、どの種菓も風味絶佳。日本茶はもちろん、ワインやコーヒーまで合わせる相手を選ばない。
写真/原 祥子 取材・文/小林明子
- 電話番号075-841-8844
- 住所京都市中京区壬生西大竹町3-1
- 営業時間11:00〜17:00(日〜16:00)
- 定休月
- アクセス各線西院駅から徒歩7分
※この記事は2023年3月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。