間借り営業を経て、実店舗を開いた今でもチーズケーキを作り続ける3人のパティシエ。それぞれが目指しているチーズケーキのこだわりや、背景にあるストーリーをご紹介します。
純白の生地に込められた繊細な技と素材選び
☑[すず菓子店(すずかしてん)]
髙田千紗さんのチーズケーキ

「日常に小さな幸せを」と、きび糖や米粉など優しい素材を使用したお菓子を提供する[すず菓子店]。「世代を超えて愛されるチーズケーキはグルテンフリーに。酸味と甘みのバランスをとり、レアともベイクとも違う食感を追求した、間借り時代からのスペシャリテです」と店主の髙田千紗さん。

米や米ぬかなどの飼料で育てたレモンイエローの黄身が特徴的な平飼い卵を使用し、低温でゆっくり焼き上げることで純白のチーズケーキに。とろっとした滑らかな口溶けと素材の風味が際立った優しい甘さで、一度食べたら忘れられない一品に。
体に優しい味わいをグルテンフリーの土台に



「まずはクッキー作りから」と、熊本県産米粉に北海道産無塩バターときび糖、塩、平飼い卵を滑らかになるまで混ぜ合わせ、風味と食感を良くするためにアーモンドプードル、片栗粉を加えて生地がまとまったら一口大にちぎってオーブンへ。焼き上げたクッキーはたたいて粉状にしてシナモンとバターを混ぜ合わせ、型に敷き詰めればサクサクな土台の完成。
焼き加減&仕上げでより滑らかな舌触りに



北海道産クリームチーズときび糖を混ぜ、溶き卵、ヨーグルト、生クリームを加えた生地を型に流し込み、オーブンへ。「舌触りを良くするこつは、温度と焼き時間。遅過ぎず、早過ぎずの絶妙な火入れがポイントです」と髙田さん。焼き上げて1日冷蔵庫で寝かせてから、表面に生クリームとヨーグルトを混ぜたソースを塗れば、甘すぎないとろっとした食感になる。

- 電話番号なし
- 住所宝塚市末成町28-35
- 営業時間11:00~17:00 (イートイン12:00~16:30LO)
- 定休日日〜火&不定
- カード使用可
- 席数4
- アクセス阪急小林駅から徒歩15分
独自の製法で作り出す端正なビジュアルと味わい
☑[SINTORA(シントラ)]
中野新太郎さんのチーズケーキ

自宅にあったレシピ本がきっかけでチーズケーキ作りを始めた中野新太郎さん。調理師学校を経て就職したスーパーの魚売り場(!)をはじめ、シェアキッチンやイベントなどでの販売を通してレシピのアップデートを繰り返し、念願の専門店を開いた。

ボトムのクランブルはそぼろ状でなくパウダー状まで細かくして、格別のサクサク感を引き出すのが中野さん流。生地を流し込んだらオーブンを開閉しながら温度を調整し、みっちりと濃密でキメの整った焼き上がりに。惜しまない手間と工夫が、ここだけのおいしさをかなえている。
パウダー状のボトムが美しい見た目を作る



薄力粉にアーモンドパウダーとホールのアーモンドも合わせて粉砕してかき混ぜることで風味がアップ。冷やしたバターを加えてさらにかき混ぜて「握ると固まるけどさらさら」なパウダー状に。ボトムを型に敷いたらエスプレッソマシンのタンパーでプレスして固め、オーブンへ。焼き上がったら表面をフォークで削り、できたパウダーで型とボトムの隙間を埋めることで整った土台に仕上がる。
焼き加減を調整して見た目も味も整える


ボトムを用意した型に生地を流し、お好み焼きのコテで表面をきれいにならす。オーブンに入れて5分焼いたら扉を開けて温度を下げ、また5分焼いたら扉を開け……というベンチタイムを繰り返し、約50分近くかけて焼き上げる。緩やかに加熱することで生地が膨らみ過ぎず、冷めた時に中心が沈み込まない。全体にまんべんなく火が入るので食感もムラなく繊細に。

- 電話番号なし
- 住所神戸市須磨区多井畑清水28-2
- 営業時間11:00~17:00(イートイン〜16:00LO)
- 定休日火~木
- カード使用不可
- 席数7
- アクセス市バス「多井畑厄神」バス停から徒歩すぐ
丁寧な作業で追求する至福な滑らかさの一品
☑[sammo(サモ)]
米田琴音さんの濃厚バスクチーズケーキ

中学生の頃からお菓子作りが趣味だった米田琴音さんは、大学時代にカフェのアルバイトでスイーツ担当に。バスクチーズケーキが特に評判を呼び、卒業後にチーズケーキの店を開くことが目標になった。地元・伏見の[MAGURO GARAGE]で間借り営業を続けるうち、向かいに空き店舗が出たのを機に実店舗のオープンへ。

間借り時代からずっと大切にしているのは、生地の滑らかさ。粉の代わりにホワイトチョコレートを生地に加えたり、焼く前にきちんとこすことで、とろける口当たりを表現している。紅茶味や抹茶味も人気。
コクのあるホワイトチョコレートがポイント



小麦粉や薄力粉の代わりに、溶かしたホワイトチョコレートを生地に使用するのがユニーク。凝固のためだが、薄力粉などを使用すると少し硬めに仕上がってしまうと言う。「せっかくなら粉よりも風味に奥行きが出るものがいいなと思って」と、試作を重ねて行き着いた。まろやかさを保ちつつ、持ち帰りやすい硬さに仕上がり、程よいミルキーさとコクも加わった味はここならでは。
丁寧にこすことでより滑らかさをプラス!



クリームチーズや卵、生クリーム、ホワイトチョコレートなどを泡立て器で混ぜ合わせた生地はザルに通してヘラを使ってこす。よりマイルドな食感を目指す上で、欠かせないプロセス。「『食べ比べたら分かるかな?』程度の微妙な違いかもしれないけど、やっぱり丁寧に作りたいから」と米田さん。ふんわり焼き上がったら冷蔵庫で一晩寝かせ、生地がしっかり締まってからカットする。

- 電話番号なし
- 住所京都市伏見区東町206
- 営業時間13:00~19:00 ※売り切れ次第終了
- 定休日月・火
- カード使用可
- 席数8
- アクセス近鉄桃山御陵前駅から徒歩11分
写真/エレファント・タカ 竹田俊吾 取材・文/杉田裕路子 本庄 彩
※この記事は2026年1月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。








