急須とお茶愛があふれる
江彦さんのサロン&ショップへ
☑ 京都・北白川[北白川糕糰店(きたしらかわこうだんてん)]
静かな小径に面した1920年築の一軒家は、かつて学生寮だったそう。「ぜいたくな造りではありませんが、庭もあり、風流なたたずまいが気に入っています」と話す店主・江彦(こうげん)さんは、朱泥急須の産地として知られる中国・宜興(ぎこう)の隣町出身。
中国八古窯の一つに数えられる「宜興窯(ぎこうよう)」で、現地で取れる紫砂と呼ばれる土を使って現在も作られている朱泥急須・紫砂壺は、茶の不純物を吸着させてまろやかにしてくれる優れもの。写真はいずれも江さん監修のもと、作家が復刻した宜興紫砂壺。右から、紅衛村の上部で採れた土で作られた紅衛香山朱泥・甕型、趙荘村の土を使った趙荘朱泥・甕型、黃竜山の土を使った黃竜山老朱泥。各18,500円
11年前に来日し、東京の大学で東洋史学を学んだ後、京都大学大学院でお茶の歴史的交流を研究。修士号を取得した。「子どもの頃からお茶が好き。日本でもそのお茶に合う伝統的なお菓子を作ったところ、知り合いの茶人をはじめ多くの人が喜んでくれて、[北白川糕糰店]の屋号で販売を始めました」。「糕」はケーキのようなスポンジ生地の(またはようかんのような角張った)菓子、「糰」はもち米を使う蒸し菓子などの意味で、「糕糰店」は江南地域の菓子店の屋号によく使われる言葉だ。間借り営業などを経て2024年夏に妻の柳一菲(りゅういちひ)さんと開いた実店舗では、定期的に「喫茶の日」を設け、お茶とお菓子を提供する。
ウエルカムティーのジャスミン茶を入れながら、江さんは宜興の名産である紫砂壺(しさこ、急須の一種)への思いを披歴。「同じように見えて色や細部の形が違い、お茶によって使い分ける楽しさもあります」。奥深いお茶ワールドに満たされる数時間が過ごせる。
取材日にいただいた、“試茶セット”。湿度や温度を調整しながら、もっとも強く香る咲きかけの花と茶葉を重ね、9回も香りづけしたジャスミンティーでウエルカム(写真は3人分)。
お茶3種を選べる試茶セット3,700円を。右から、ハーブの香りを再現した鳳凰単叢・南姜香、栽培後に放置された老樹の茶葉で作る野放老樹梅占、花の香りを吸わせた蝋梅小種。
曲線が美しいパイナップルケーキ用の木型は、彫刻家の高山 瑞さんに特注。実は入り口の表札も高山さんの作品。
こだわりが詰まったパイナップルケーキは、放牧ジャージー牛のバターや山形産チェダーチーズを加えて焼く、さくさくほろほろ食感の生地の中には、台湾産パイナップルのあん。冬瓜の千切りを加えてアクセントに。
漳州や泉州発祥の甘いスープ・四果湯(スーゴータン)は、ハトムギ、白キクラゲ、緑豆、龍眼、ピーチパイン入りの冷菓。
どのお茶も10煎前後入れられ、中には2時間ほど滞在する人も!
店舗情報
北白川糕糰店きたしらかわこうだんてん
- 電話番号なし
- 住所京都市左京区北白川久保田町64-24
- 営業時間14:00~17:00※要予約
- 定休日不定
- カード使用可
- 席数7
- アクセス京都バス「北白川」バス停から徒歩すぐ
※この記事は2025年8月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。