_TAK6796実画像_he

わたしの“カフェ”の話。

店主たちの“好き”を知れば、カフェがもっと好きになれる。
いま、一番行きたいお店の店主たちに、深くお話を聞いてみました。
『すてきなカフェを作ってくれてありがとう!』、そう言いたくなります。

chapter.02

[Nova珈琲と焼菓子]と瀬戸家潤一さん

「主役のお客さんがくつろげる美しい余白を演出したいんです」

サンプリングで追求した、理想のカフェ空間

ざっと1000軒以上。「無類のカフェ好き」を自認する店主の瀬戸家(せとけ)純一さんが全国で巡ったカフェの数だ。コーヒーの味わい、器、空間、サービス……。店ごとの個性を楽しみながら、自身が理想とするカフェを思い描いた。独立するにあたって1年半かけて物件を探し、たどり着いたのは35年間愛されていた喫茶店の跡地。扉や棚などはあえてそのまま生かしてリノベーション。

窓辺にある大テーブルは、お寺の床板だったという木材を脚に乗せたもの。磨き抜かれたつやが、凛とした空気感をもたらす。大江憲一のコーヒーカップをはじめ、器はすべて作家もので、空間と同じく上質でシンプル。「ほど良く余白があった方が、写真を撮ってもらうときにきれいに映えるから」と、お客さん目線の計算もカフェ好きな瀬戸家さんらしい。コーヒーを淹れ、ときには抹茶を点てるカウンターまわりの道具まで隙なく洗練されていて、ギャラリーのような美しさにハッと目を奪われる。

エントランスには、折り鶴のマークが入れられた白い暖簾。海外のゲストももてなしたいと、和のテイストをほんのり香らせている。

「いい味なのでこの棚は前の店のままです」と、あえて残された棚や扉もすてき。

非日常を演出する、二人のプロフェッショナル

店名にもあるコーヒーと焼き菓子。[Nova]を作っているのは、もちろん設えだけではない。瀬戸家さんは老舗コーヒー店で焙煎を学び、さらにイタリアに渡り、国際焙煎士の資格を取得。店内で毎日コーヒーの焙煎を手掛ける。

「コーヒーが得意じゃない人でも飲みやすい、酸味を抑えた味わいです」と瀬戸家さん。優美なシルエットのドリッパーは千葉鉄工所のもの。抽出後1日寝かせて味を締めるアイスコーヒー580円、まろやかなプリン460円。

そしてもう一人、スイーツ担当の宮本みゆきさん。瀬戸家さんが独立を考えたとき、迷わず「自分の店でお菓子を作ってほしい」と声をかけたという。「以前同じカフェで働いていたころから、彼女のセンスと技術にほれ込んでいました。作り手が店にいることで、しっかり思いを伝えられます」。宮本さんも、瀬戸家さんのコーヒーのファン。「コーヒーに寄り添う、甘さに深みのあるお菓子を作りたいですね」。二人のプロフェッショナルが互いをリスペクトし、高め合うから実現するレベルの高さ。でも、瀬戸家さんたちに気取りはない。「気軽に足を運んで、非日常なひと時を過ごしてもらえたら」。その思いに共鳴したゲストが、今日もレトロなドアを開く。

モーニング限定、あんバタートースト680円(ドリンク付き)。カリッ、もっちり食感の[ブランジュリータカギ]製食パンで。

「川の近くでお店をやるのが夢でした」と、瀬戸家さん。
※この記事は2021年9月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
写真/エレファント・タカ 取材・文/本庄 彩
店舗情報
大阪・天満橋
Nova珈琲と焼菓子ノヴァ
  • 電話番号
    06-4792-7796
  • 住所
    大阪市北区天満3-1-5 南天満ビル1F
  • 営業時間
    8:00〜17:00(モーニング〜11:00)共にLO
  • 定休日
    水・木
  • アクセス
    各線天満橋駅から徒歩5分
Share
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
SAVVY6月号『花とグリーン』
発売日 2024年4月23日(火)定 価 900円(税込)