丁寧な仕事から生まれる、ふんわりと繊細な口溶け。京都で長く愛されるお菓子、飲み物、中国料理といった名品たちの、類いまれな軽やかさの魅力について探りました。
三条堺町[イノダコーヒ 三条店]
1965年頃から続く
イノダコーヒのレモンパイ
“ふわふわ”から始まる
ストーリーのあるケーキ
京都老舗喫茶の愛されケーキは、ボリューミーな4層仕立てのレモンパイ。フォークで軽く触れただけで揺れるメレンゲの白い雲。2層目のスポンジからはシロップがじゅわり、レモン果汁入りのカスタードクリームがぷるんと舌にのり、最後にパイ生地がサクッ。爽やかな味わいが広がります。
祇園[デザートカフェ長楽館(ちょうらくかん)]
1995~2000年頃から続く
長楽館のウィンナーコーヒー
コーヒーに浮かぶ
純白のバラにうっとり
円山公園のほとりにたたずむ、歴史ある洋館内のカフェ。エレガントな空間に合わせて考案されたのは、バラの形に絞り出したホイップクリーム添えのコーヒー。スプーンでそっとコーヒーに浮かべると真っ白なバラがゆっくりとろけていき、はかない美しさを楽しませてくれます。
元田中[中国料理 華祥(かしょう)]
2007年頃から続く
華祥の卵白あんかけ炒飯
緻密な火入れで
ふんわり&クリーミーに
中国料理の名店で定番人気を誇るのが、雪のような白いあんをのせた、卵白あんかけ炒飯。エバミルクなどを加えた4個分の卵白は、まず半量を油通ししてふんわり感を引き出してからとろみをつけ、残り半量を加えてあんに仕上げる。しっかり炒めたパラパラの炒飯にふわとろのあんが絡み、れんげが止まらなくなるおいしさです。
岡崎[スフレ&カフェコーナー 茶庭(さてい)]
1989年から続く
スフレ&カフェコーナー茶庭のスフレ
料亭の美意識を感じる
はかなさの美を味わうスフレ
料亭[京料理 六盛]が手掛けるスフレ専門店。ふかふかと膨張するスフレは、登場20秒を過ぎるとゆっくりとしぼんでいきます。別添えのアングレーズソースを入れるための穴を作るとき、そして口の中でも、繊細な生地は気泡がはじける音を立て、しゅわしゅわとさえずる……。そんなはかなげな美の演出が日本的です。
※この記事は2025年4月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。