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藤丸さんと共に、日本全国のワイナリーを訪れながらワインや土地の魅力を感じる旅へ。今回は連載では初めてとなる都市部のワイナリーを訪問。ブドウ農家と街、店から飲み手までがワインでつながる場所を都心で体感した。

藤丸智史さん/大学卒業後、ソムリエを経て海外でワイン作りを学び、大阪で[ワインショップFUJIMARU]を開業。現在はブドウ作りからレストランまで展開する株式会社パピーユの代表取締役。 Instagram@winefujimaru

Vol.10
東京・御徒町[葡蔵人~BookRoad~]
東京・清澄白河[清澄白河フジマル醸造所]へ

 緑豊かな山々に囲まれた広大な敷地に、手入れされたブドウ畑が整然と並ぶ。その土地にしかない味と魅力も一緒に1本のボトルに封をする。そんな美しい光景を幾度となくこの旅で体感してきた。
 しかし今回、藤丸さんとワイナリー巡りに向かった先は、東京の御徒町。巨大なビルが立ち並ぶ灰色をした街には、もちろんブドウ畑の姿はない。人々が忙しなく行き交う大通りを一つ超えた裏道に、目的のワイナリー[ブックロード]が姿を現す。

「大切なのは飲む人のことを考え、楽しみながら造ること」と、醸造家の須合さん。農家が作ったブドウ本来のフレッシュ感や果実感を表現するステンレスのタンクが小さな空間にずらりと並び、ワインの完成を静かに待っている。

 続いて訪れたのは、清澄白河にある醸造所。閑静な住宅街に馴染むようにあるワイナリーだ。

近隣の産地から集められるブドウは、年によって性格がばらばら。小さなブドウと真摯に向き合うことで、無理なことをせずにその時のブドウからベストな味わいのワインを生み出している。ブドウのおいしさをどうしたら表現できるのか? 都会の真ん中でも山の麓でも、自然に向き合う気持ちは変わらない。
 ブドウ作りから始まり、飲み手に届けられるまでのワインの長い旅路。道中に生まれたさまざまなストーリーは、「いま、会いに行ける」都会のワイナリーが語り部になって、生産者の思いが街に届けられている。

▼東京・御徒町[葡蔵人~BookRoad~]

ブドウと街の人をつなぐ、下町のアーバンワイナリー

ワインをより身近に感じてもらい、ワインがつなぐ縁を大切にしたいと、東京の下町・台東区の路地に開業したわずか10坪のワイナリー。ワインの購入、試飲はもちろん、マイボトルでスパークリングワインをテイクアウトできる「TAPスパークリング」や、角打ち的に飲み比べを楽しめるワインイベント「月1バル」も人気。土日には予約先着でワイナリー見学会を開催(HPから要予約)。

業界未経験からワイン修業を積み、立ち上げに関わった醸造責任者の須合美智子さん。

ビルの入口に並べられた色鮮やかなワインたち。ユニークなラベルデザインもかわいい。


〜今月のワイン〜

アジロン2024


ジャムやキャンディを思わせる甘く華やかな香りに、ドライな飲み口が特徴的な赤ワイン。ジャンクな肉料理と合わせてほしいと、エチケットにはハンバーガーが。3,300円(740㎖)

[葡蔵人~BookRoad~]は、2017年に開業。山手線・御徒町駅から徒歩5分の場所にある都市型ワイナリー。主に山梨県の契約農家や自社農園の国産ブドウを使って、年間およそ2万本のワインを生産。ペアリングを提案するエチケットが特徴的。

店舗情報
東京・御徒町
葡蔵人~BookRoad~ ブックロード
  • 電話番号
    03-5846-8660
  • 住所
    東京都台東区台東3-40-2 
  • 定休日
    12:00~15:00、 17:00〜19:30(土・日・祝12:00~17:00)
  • 定休日
  • カード使用
    不可
  • アクセス
    JR御徒町駅から徒歩5分

立ち寄りスポット BISTRO

鴨料理に一家言ありな、ワイナリー直営レストラン
[鴨一ワイン酒場SUN]

ワイナリーからすぐの場所にある、鴨料理と自社ワインを含む日本ワインに特化した[ブックロード]直営レストラン。鴨肉は一日の出荷数がわずか70羽という希少な愛知県のブランド合鴨・あいち鴨を使う。前菜からメインまでそろった巧みな鴨料理に合わせ、吟味したワインを提案してくれる。右上は、湯引きをしたあいち鴨のささみと肉厚なブリのカルパッチョ1,500円。今年2月よりコースメニューも開始予定。

炭火でじっくり時間をかけて火入れする鴨ロースは、皮はパリッと、噛むほどにうま味あふれる逸品。ハーフサイズ150g2,800円
  • 鴨のささみとブリのカルパッチョ。不思議に思える組み合わせが絶妙!
  • 通りに面した大きな窓から気持ちいい光のカウンター。
  • 奥は、しっとりと落ち着いたテーブル席。駅前の喧噪が嘘のような静かな空間。
  • クラフト感あふれるポップなワインのエチケット。ちょっとアートみたい。
  • ワイン作りとメニューが混在するカウンター上の黒板。楽しい!
店舗情報
東京・御徒町
鴨一ワイン酒場SUN
  • 電話番号
    03-6803-2493
  • 住所
    東京都台東区東上野1-18-4
  • 営業時間
    17:00~22:00(土・日11:00〜14:00、17:00〜21:00)全てLO
  • 定休日
  • カード使用
  • 席数
    48
  • アクセス
    JR御徒町駅から徒歩5分

▼東京・清澄白河[清澄白河フジマル醸造所]へ

ブドウの本来の味わいを街で表現するワイン

[島之内フジマル醸造所]に続き、東京の清澄白河にあった鉄工所で藤丸さんが2015年に立ち上げたアーバンワイナリー。ブドウは契約農家から買い付けたデラウェアをメインに、酵母の使用や補糖をせず、ブドウ本来のポテンシャルを最大限に表現したフレッシュなワイン造りを行う。2階にあるレストランを利用すれば醸造所の見学も可能(時期により不可な場合あり)。

フランスのロワールやサヴォアなど各地でワイン造りを学んだ醸造責任者の佐久間 遥さん。

コンパクトな倉庫に所狭しと並ぶワインたち。木樽仕込みのワインも静かに発酵中。


〜今月のワイン〜

清澄白河フジマル醸造所
テーブルトップ デラウェア


完熟と熟す前の山形県産デラウェアをブレンド。トロピカルな香りとドライな飲み口と酸味、味に心地よい立体感を感じる、食卓に優しく寄り添う白ワイン。3,070円(750㎖)

[清澄白河フジマル醸造所]は、大都市ならではの交通網を生かして、周辺産地の契約農家から集めた新鮮で良質なブドウを使用する都市型ワイナリー。2階には直営のレストランもあり、ワインを通じたストーリーが建物全体で楽しめる。

店舗情報
東京・清澄白河
清澄白河フジマル醸造所
  • 電話番号
    03-3641-7115 
  • 住所
    東京都江東区三好2-5-3 
  • 営業時間
    11:30〜21:30
  • 定休日
    月・火(祝の場合営業、翌日休)
  • カード使用
  • アクセス
    東京メトロ清澄白河駅から徒歩5分

立ち寄りスポット RESTAURANT

全国で出会った厳選食材と、ワインを調和するレストラン
[清澄白河フジマル醸造所 レストラン]

ワイナリーのワンフロア上にある直営レストラン。サーバーからビールのように注がれる「ドラフトワイン」などフレッシュな自社ワインの他、国内外からおよそ200種のワインがそろう。料理はイタリアンをベースにしながら、藤丸さんが全国を巡るなかで出合った生産者の食材を使い、産地との距離を超えた至福のマリアージュ。写真右上は、コンフィした大粒のカキがごろごろ入ったプッタネスカ2,200円。

大阪・富田林の特産品である大ぶりなエビイモをフリット。パルミジャーノソースと、仕上げの黒トリュフも香ばしい。2,200円
  • 冬ならでは!大粒のカキが入ったプッタネスカ。
  • 階段を上がった先にあるレストランは、ちょっと秘密めいた雰囲気もいい。
  • 各地方のおいしい素材が集まりメニューに。山形のマッシュルームをサラダに。
  • ワインは、楽しい。ワインは、おもしろい。みんなで集まりたいと思えるお店。
  • 料理はワインに合うものばかり。合わせることで広がる世界もある。
店舗情報
東京・清澄白河
清澄白河フジマル醸造所 レストラン
  • 電話番号
    03-3641-7115
  • 住所
    東京都江東区三好2-5-3
  • 営業時間
    11:30〜14:00、17:00〜21:30共にLO 
  • 定休日
    月・火(祝の場合営業、翌日休) 
  • カード使用
    可 
  • 席数
    48
  • アクセス
    東京メトロ清澄白河駅から徒歩5分

【大阪からのアクセス】
大阪→東京/電車●JR新大阪駅→東海道新幹線・東京駅→山手線・御徒町駅。大阪から約3時間、片道料金13,870円〜

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写真/西島 渚 取材・文/関戸ナオヒロ
協力/パピーユ www.papilles.net

※この記事は2025年4月号の転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
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発売日:2025年2月21日(金)定 価:900円(税込)