banner

風土の個性が現れるのがワイン造りの面白さ。[ワインショップFUJIMARU]の藤丸さんと一緒にワイナリーを巡り、土地とワインの魅力をご紹介。今回は、国内ワイン造り発祥の地、山梨・勝沼にある[MGVsワイナリー]を訪れました。

藤丸智史さん/大学卒業後、ソムリエを経て海外でワイン作りを学び、大阪で[ワインショップFUJIMARU]を開業。現在はブドウ作りからレストランまで展開する株式会社パピーユの代表取締役。 Instagram@winefujimaru

 早朝よりフルーツラインと呼ばれるドライブルートを軽快に車を走らせ向かったのは、[ほったらかし温泉]。名前の通りのワイルドな野湯……ではなく、きれいに整備された天然温泉で、雄大な山と甲府盆地を見渡せる絶景が広がり、雲の晴れ間からは、ときおり富士山も見える。景色を眺めながらしばらく温泉に漬かっていると、温泉と空の境目がなくなっていくようだった。湯上がりには体もすっかりと目覚め、気持ちの良い一日の幕開けだ。登ってきた山道の麓に戻り、立ち寄ったのは[ほうとう蔵 歩成]。きしめんともまた違う平たい太麺でコシが強いほうとうは、山梨の古くからの郷土料理。だしの香るみそ味がおいしく、ボリュームがあるいろり鍋は、あっという間に空になった。

 甲州市勝沼町は、日本のワイン醸造の始まりの地。甲州市にあるワイナリーのうち、ほとんどが勝沼町に集まっていて、訪れた[MGVsワイナリー]もその一つ。「さまざまな土壌に恵まれたこの土地だからこそ、海外のように地域性を大事にしたワインを造りたい」と、オーナーの松坂浩志さん。点在するブドウ畑を見学させてもらいながら、盆地を見渡せる高台の縁を車でぐるりと回る。今朝行った温泉がある山は、もうはるか対角線に見えた。「良いワインは、良いブドウ作りから。私たちはワイン造りで、この土地を未来につなげたいんです」と、畑がある街を眺めながら松坂さんは語ってくれた。この日は8月最終日。もうすぐ、今年の収穫が始まる。

Vol.07
[山梨・甲州]MGVs WINERY(マグヴィス ワイナリー)へ

半導体の加工工場をリノベーションして2017年に開業の新進気鋭のワイナリー。緻密な半導体製造で培った技術と経験を生かし、徹底した品質、衛生管理のもとで行うワイン造りは、国内外から高い注目を集めている。

通常よりかなり低く仕立てたマスカット・ベーリーA。畑の列ごとに特徴を分けて研究中。

日本のワインの始まりの地で、
未来につなぐブドウ畑を見た。

  • 勝沼町のブドウ畑は日川沿いに点在している。
  • スタイリッシュなワイナリー。
  • 土壌ごとに適したブドウの栽培方法を模索する。
  • 松坂さんが研究する栽培方法に藤丸さんも興味津々。
  • 甲府盆地の地形と地質について、微に入り細を穿つように語る松坂さん。
  • 川沿いにある畑。手前に見える色の違う葉っぱはキウイ。

ワイナリーオーナーの松坂浩志さんは、明治時代から続くブドウ農家の4代目でもある。
  • ひと房ずつ傘かけされたマスカット・ベーリーA。
  • 近代的でデザインコンシャスなタンク室。
  • ショップではボトルの購入や試飲(有料)も。
  • 松坂さんの説明を受けながらテイスティング。理論的にワインを知る。
  • 試飲で用意された説明書き。体系的に分かるように整理されている。
  • ワイナリーに来るといつも話が尽きない藤丸さん。


〜今月のワイン〜

B153 勝沼町引前 2018


糖度を限界まで高めたマスカット・ベーリーAを使用し、樽と瓶でゆっくりと熟成した辛口ワイン。繊細なアロマと濃厚な果実味は、芳醇な余韻を感じる味わい。8,800円(750㎖)

土地の恵みと個性を素直に表現するワイン
日本の固有品種である「甲州」と「マスカット・ベーリーA」の2種がメイン。同じ品種でも土地により味わいに違いがあることに注目し、個性に合わせた醸造方法で、テロワール(気候や風土)を最大限に表現したワイン造りを行う。営業日であればワイナリーは自由に見学可能。発酵タンク室や樽貯蔵室などをワイナリーショップからガラス越しに見ることができる。

店舗情報
山梨・甲州
MGVs WINERYマグヴィス ワイナリー
  • 電話番号
    0553-44-6030
  • 住所
    山梨県甲州市勝沼町等々力601-17
  • 営業時間
    10:00~12:00、 13:00〜16:00(土・日・祝10:00〜16:00) 
  • 定休日
    火(12〜3月は火・水
  • カード使用
  • アクセス
    JR勝沼ぶどう郷駅から車で10分

立ち寄りスポット①
エリア・エリア名[ほうとう蔵 歩成 (ふなり)フルーツライン店]

まずはカボチャを溶かし、次に自家製の特製辛みそを加えて、二度楽しめる味変も醍醐味。黄金ほうとう1,650円

黄金色に輝く、山梨県のソウルフード
古くは武田信玄が陣中食にしていたともされる、山梨の郷土料理・ほうとうの専門店。麺はコシが強くもちもちとした特注の平太麺。厳選した地元産の食材にこだわり、米こうじの赤みそと白みそのベースに特産品の煮アワビの肝やだしを加え、カボチャのペーストが溶け込んだ黄金色に輝くスープは、コク深く全身に染みわたる。

  • お座敷の店内。ほうとう以外にも、メニューはいろいろと。
  • 店の外にあった外灯に、ブドウを発見! ブドウ王国・山梨を実感。
店舗情報
山梨・山梨市
ほうとう蔵 歩成 フルーツライン店ほうとうくら ふなり フルーツラインてん
  • 電話番号
    0553-23-1567
  • 住所
    山梨県山梨市万力1091
  • 営業時間
    11:00~21:00(8〜11月の土・日・祝〜22:00)共にLO
  • 定休日
    なし
  • カード使用
  • 席数
    100
  • アクセス
    JR山梨駅から車で8分

立ち寄りスポット②
山梨・山梨市[ほったらかし温泉]

圧倒的開放感に浸る、絶景の天然温泉
標高700mの高さで、自然のままの景色のなかに作り上げた天然温泉。眼下には甲府盆地が広がり、天気が良ければ富士山も望める絶景が。オープンは日の出の1時間前からで、夜には満天の星空を天井に、美しい街の夜景が輝く。開放感ある抜群のロケーションで自然の美しさを感じながら、ゆったりと特別な時間を。

  • 「あっちの湯」と「こっちの湯」の2種類の温泉があり、どちらも眺望は抜群。
  • 軽食処もあり、絶景と共に楽しめる。
  • こんなワイルドな湯船も。甲府盆地を見渡せる高台にあるからこその景色。
店舗情報
山梨・山梨市
ほったらかし温泉
  • 電話番号
    055-23-1526
  • 住所
    山梨県山梨市矢坪1669-18
  • 営業時間
    日の出1時間前~21:30最終入館
  • 定休日
    なし
  • カード使用
    不可
  • 料金
    900円
  • アクセス
    JR山梨駅から車で10分

【大阪からのアクセス】
大阪→甲府/電車●JR新大阪駅→JR東海道新幹線・静岡駅→JR東海道本線・特急ふじかわ・甲府駅 大阪から約4時間20分、片道料金14,400円〜 ※山梨県内の移動はレンタカーが便利

合わせて読みたい!

FUJIMARU SIDEWAYS 藤丸さんと “おいしい”ワイナリー巡り vol.5
長野・東御[Rue de Vin]

FUJIMARU SIDEWAYS 藤丸さんと “おいしい”ワイナリー巡り vol.4
長野・東御[VILLA D’EST GARDENFARM AND WINERY]

FUJIMARU SIDEWAYS 藤丸さんと “おいしい”ワイナリー巡り vol.3
宮崎・都農[都農ワイン]

FUJIMARU SIDEWAYS 藤丸さんと “おいしい”ワイナリー巡り vol.2
宮崎・綾町[香月ワインズ]

FUJIMARU SIDEWAYS 藤丸さんと “おいしい”ワイナリー巡り vol.1
富山・氷見[SAYS FARM]

写真/西島 渚 取材・文/関戸ナオヒロ
協力/パピーユ www.papilles.net

※この記事は2025年1月号の転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
Share
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
SAVVY1月号『よしもと漫才劇場となんば』
発売日 2024年11月22日(金)定 価 900円(税込)