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大通りの喧噪から少し離れた路地裏に、川沿いに……。
ちょっとミステリアスで、とびきり幸せな空間が広がっていました。
京都へ小さな旅にでかけませんか?

人、食、自然……
さまざまなものがつながる場所

鴨川と高瀬川に挟まれた五条楽園。高瀬川伝いに歩いていくと、窓に[ki:]とだけ書かれたミステリアスな店が姿を現す。「ここは祖母の家だったんです。小さいころ、私も住んでいたんですよ」と、店主の長野浩丈さん。なるほど、リノベーションされてはいるが、京町家らしい奥に長い造り、手つかずの柱や梁にかつての暮らしぶりが見える。その空間の核をなすのが、店のアイコンとも言える大テーブル。

あえて照明は点けず、光を味わう。

オープンキッチンから聞こえる、小気味良いリズム。

「食のスタイルや信仰が異なる人同士が食卓を囲み、共に時間を過ごせる場所にしたかったんです。コロナ禍で食卓を囲むなんて、とずいぶん反対されましたが、そこだけは譲れなくて。店を開いてから、気持ちが揺らいではいけないと、テーブルは動かせない石造りにしました」。決意の証である灰色のテーブル。そのモノクロの世界に彩りを与えるのが料理だ。「健康的で、さまざまな人が食べられるものをと考えてたどり着いた」というレバノン料理は、香辛料の香りが心地良く、ほお張ればたちまち心を異郷に連れ去ってしまう。

存在感たっぷりのフルーツはまるでオブジェのよう。

炭化した野菜の端材を練り込んだ、薄墨色のピタパン生地。

ランチには、チキンとファラフェルミックス2,300円(写真)などのプレートほか、本日のデザート800円といったスイーツメニューも。いずれも長年フレンチで腕を振るってきた店主のセンスが光る。

カラフルなひと皿に心躍る。

大原野の自家農園で育った野菜たち。

昼下がり、天窓からこぼれる光が旅人たちの食卓をふわりと包み込む。まるで共に食に預かる者たちを祝福するかのような、その光景に店主が思い描いた〝楽園〟を見た。

ガラス越しに、123年前の土壁と出合う。
写真/竹田俊吾
※この記事は2022年4月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
店舗情報
京都・木屋町五条
  • 電話番号
    075-585-4224
  • 住所
    京都市下京区都市町149
  • 営業時間
    朝8:00〜9:45、昼11:00〜14:45共にLO
  • 定休日
  • アクセス
    京阪清水五条駅から徒歩5分
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