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いつも大事にしているのは、
自分が誇れる自分でいること

 並行する二つの世界の謎に迫る、村上春樹作品の中でも人気の高い長編『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が、世界で初めて舞台化される。「世界の終り」の主人公である「僕」役に抜擢されたのが、さまざまな映像作品で主演を務める駒木根葵汰だ。演劇作品初挑戦ながら、不安よりも期待の方がはるかに強いということを、明るく話してくれた。

「呼吸」を大切にしながら
アートな世界の一員になる

編集部(以下・編) 木根さんはオーディションで「僕」役を勝ち取りました。今は稽古中とのことですが、調子はいかがですか?
駒木根葵汰(以下・駒) 出演が決まった時は、漠然とした不安もあったんですが、これから自分がどう変化するのかという、楽しみやわくわくの方が大きかったです。実際の稽古場は、自分の想像をはるかに超えていました。今までなら「苦しいな、嫌だな」と思うようなことも、何だか分からないけどそれすらもすごく楽しめていて、自分でも驚いています。
編 原作はファンタジックな設定で、かつ二つの物語が同時進行していくという変わった構造なので、台本も一筋縄ではなかったのでは。
駒 小説も独特の雰囲気ですけど、台本もちょっと癖があります。「この『……』の意味は何だろう」とか「この『何か風が吹いた』という一文には、もっと深い意味があるのでは?」と、いつもより一つ一つ言葉を丁寧に注意して読みました。演じる難しさもありますけど、それ以上に「言葉」の美しさをとても感じましたし、日本語っていいな、芸術ってすごいなと思います。
編 演出のフィリップ・ドゥクフレさんは、サーカス芸を演劇に取り入れるなど、ユニークな身体表現とビジュアルの美しさで知られる方ですよね。
駒 最初にプロローグの場面の稽古を見た時は、アートの世界に一瞬で引き込まれて「ああ、この人に付いていこう」と思いました(笑)。フィリップさんからは、「僕」としての何か大事なものを忘れないようにと、ずっと言われています。僕は自分の記憶を持つ「影」(バレエダンサーの宮尾俊太郎)と行動を共にするのですが、影と動くことの親和性を深めていくには、すごく呼吸が大事だな、と。僕と影の関係もそうですし、ダンサーたちの動き一つとっても意味があるので、身体を研ぎ澄ませてそれらを汲み取っていかないと、世界が壊れてしまう可能性がある。今回のテーマは、僕の中では「呼吸」だと思って、課題点を一つずつ潰していってるところです。日々自分が成長できているなあと、実感しています。

細かい感情を伝えられる
役者になることが目標

編 駒木根さんは、本格的に役者になろうと決めたきっかけが、“初めての演技が上手くできなかったから”とお聞きしました。普通ならくじけて辞めてしまいそうなのに、すごいガッツですね。
駒 他の人はできるのに、自分にはできないことがあるというのが、昔から嫌だったんです。いつもかっこいい自分でいたい、自分が誇れる自分でいたいというのは、すごく大事にして生きています。今もこうやって、日々新しい芝居に挑戦させていただいてますけど、そういう自分の変なプライドが、いい方向につながっているんだなと思います。
編 特に感情表現には苦労されたそうで。
駒 言葉って、例えば「ごめんね」一つでも、いろいろな形があるじゃないですか? 謝る気のない「ごめんね」もあれば、本気の「ごめんね」もある。それをどんどん細かくすれば、もっといろんな表現ができるから、感情をより細かく伝えられる役者になりたいです。今回は感情の部分がなかなか難しいんですけど、せりふと感情がはまった時の素晴らしさ、美しさは僕の中で想像ができている段階なので、少しでもそこに近づけたいです。
編 舞台に備えて、何か生活習慣が変わったりしましたか?
駒 ごはんをいっぱい食べる! 稽古を始めてみると、意外と疲れが取れてなかったりとか、自分ではちゃんと食べているつもりが、実は栄養が取れていなかったことなどに気付かされました。今は体力を作るためにごはんをたくさん食べてるし、周りの皆さんにも「今日ごはんちゃんと食べた?」と言われます(笑)。
編 関西にはどこか、好きな場所とかお気に入りのお店はありますか?
駒 京都です。時代劇の撮影で、ずっと京都にいた頃に、街並みが本当に美しいと思いました。カメラを始めたんですけど、写真に撮ると改めて「こんなに美しいんだ」と感じて、もうとりこですね。特に、(京都のお店の)のれんの重厚感や品のある感じに見ほれることが多くて、自分の部屋にもちゃんとオーダーして導入しようかと思っています。
編 関西公演中に行けたらいいですね。改めて舞台の意気込みなどをお願いします。
駒 うぬぼれではないんですけど、この舞台は僕が最後のピースみたいな感覚なんです。周りの皆さんがすごい方ばかりだから、あとは自分がそこに追いつけば、きっと素晴らしい舞台になるはずだと。でもすごく不思議なのが、本当に理由のない自信みたいなものが、ふつふつと湧き上がる瞬間があるんです。だから今の僕は、100%期待しかないので、楽しみにしてください。
編 初めての舞台で、そう言えるのはすごいですね。
駒 ねえ。逆にそれが怖いです(笑)。


Profile
駒木根葵汰

2000年生まれ、茨城県出身。高校時代に始めたSNSで話題となり、高校卒業後にデビュー。2021年スーパー戦隊シリーズ『機界戦隊ゼンカイジャー』で主役の五色田介人を射止め注目される。主な主演作品に『天狗の台所』、『25時、赤坂で』シリーズなど。現在、NHK夜ドラ『替え玉ブラヴォー!』に出演中。

STAGE INFORMATION
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
2月19日(木)〜2月23日(月)  @兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

村上春樹の同名小説を、藤原竜也主演で舞台化。計算士の「私」(藤原)が自分に仕掛けられた謎を追う「ハードボイルド・ワンダーランド」と、影をなくした「僕」が自分の住む街のミステリーを読み解く「世界の終り」という、二つの世界の物語を同時に描く。「僕」役は、駒木根と島村龍乃介のWキャスト。

原作/村上春樹 
演出・振付/フィリップ・ドゥクフレ 
脚本/高橋亜子
出演/藤原竜也、森田望智、宮尾俊太郎、富田望生、駒木根葵汰・島村龍乃介(Wキャスト)、藤田ハル、松田慎也、池田成志 ほか
料金/13,000円(全席指定) 
チケット情報/www.umegei.com/schedule/1319/
問い合わせ/0570-077-039(梅田芸術劇場)

写真/中島真美 取材・文/吉永美和子

※この記事は2026年3月号からの転載です。記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
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