kubosakiko_EC_12_1-100

イラストレーターの久保沙絵子が、毎月1冊をピックアップして、勝手にその本の表紙を制作するこの企画。イラストが描き上がるまでを追いかけます。12冊目は、星 新一の短編『ボッコちゃん』。酒場のロボットと人間の会話から、欲望と愚かさを浮かび上がらせる。軽さの裏に不気味さが潜む物語です。

久保沙絵子/イラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチが特徴。雑誌やウエブなどで活躍中。

この連載もラスト1冊。
いろんな本をたくさん読んできた後に、1周回って戻ってくるような1冊を選びたいと思いました。
ユーモア満載な、星 新一さんの『ボッコちゃん』です。
短編なので、一つひとつの話はとても短いのですが、教訓も織り込まれていて、読んだ後の心に後味が濃く残り、星さんの発想と文章にで、ページが進む1冊です。

『ボッコちゃん』
著/星 新一
新潮文庫

ボッコちゃんは、美しい顔をしたロボットの名前です。
バーの店主が作ったロボットで、カウンターの内側でお客さんの相手をします。
お客さんはボッコちゃんをロボットと知らずにお酒を飲ませておしゃべりし、店主はこっそりと、ボッコちゃんが飲んだお酒をボッコちゃんのボディーから取り出してまたお客さんに提供します。

美しいボッコちゃんにお客さんはみんなメロメロ。
その中で特にボッコちゃんに入れ込んだ青年がいました。
その青年は、実らない恋の苦しさからボッコちゃんに毒の入ったお酒を飲ませてしまいます。
青年が店を後にしたその夜、何も知らない店主は”今夜はわたしの奢りです”と、バーにいたお客さん全員にボッコちゃんのボディー内のお酒を振る舞ってしまいます……。
閉店が過ぎても鳴りやまないBGM、誰1人帰らないお客さん。
劇的には書かれない静かな最後の文章に、ゾゾッとします。

今回は、本屋さんの絵を描いていきます。
『ボッコちゃん』をこの本屋さんで購入したわけではないのですが……。
締めくくりの作品として、世の中にはたくさん本があって、選び放題で、なんて豊かなんでしょうということを絵にしていきたいです。
描くのは、以前鶴橋駅前にあった高坂書店さん。
2023年に閉店してしまった本屋さんですが、整然と雑然が混ざり合ったような雰囲気がとてもすてきで、いつか描きたいと思い閉店前に写真を撮って温めていました。
通い詰めていたわけでもないのに閉店してしまうのを悲しむのはなんだか自分勝手な気がしますが、コンビニが閉店するのと本屋さんが閉店するのは、そのことを受け取る気持ちの種類が違い、やっぱり悲しくなります。

少し斜め気味にまっすぐ1本描いた線から、程よい斜めにもう1本描いていきます。

看板部分を描きました。若干前に傾けています。

2023年のカレンダーが大きな箱にたくさん詰められて販売されています。台車に乗っているところが良いです。

台車の奥に、本を描きます。

奥の本を描き込みます。本がきれいに重なり過ぎると単調になるので少しずらしながら描きました。

小説『ボッコちゃん』には、人間が自分の欲や軽率な考えによって、自分の身に悲劇を引き寄せてしまう話がたくさん入っています。
きっとこの話も悲劇的なオチなんだろうな……。と分かりつつも、読み終わると”そうきたか〜!”と思わされてしまいます。

落語みたいにユーモラスで、説法みたいに悟りがあって面白い。
キッチンでお湯が沸くのを待つ間や、出かける前にちょっと早めに準備ができてしまった時などに、スマホを持つ手をこの1冊に変えるのはいかがでしょうか。
きっと、とてもいい時間を過ごせますよ。

WEB連載「久保沙絵子の勝手に表紙作ります。」は、毎週水曜更新!次回は、1/14(水)公開予定です!
著者

久保沙絵子

大阪在住、雑誌やウエブなどで活躍中のイラストレーター。風景画をはじめ、超絶細密なタッチの作風が特徴。線の質感にこだわり、作品はすべて一発書き! 制作は、生命保険の粗品のスヌーピーのコップで白湯を飲みながら。また、街中でスケッチすることも。もし、見かけたらぜひ声をかけてください。

  • Instagram
    @saeco2525

※過去記事は、ハッシュタグ #久保沙絵子の勝手に表紙作ります をクリック

※当サイトに掲載されている写真・文章・イラスト等、すべてのコンテンツの無断転載・複製・改変を禁じております。無断転用や無断引用が確認された場合は、プライバシーポリシーに基づき、対応を取らせていただきます。

Share
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
SAVVY2月号「神社とお寺」
発売日:2025年12月23日(火)定 価:900円(税込)