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神戸・元町四丁目の本屋[本の栞]を営む、
田邉栞さんの日々のブックマーク

Vol.35 
「茹で落花生、あんみつ、みたらし団子」

text and photo/田邉 栞(たなべ しおり)
神戸で[本の栞]という本屋をやっています。Instagram@honnosiori

11.5 sat.

 朝から落花生を茹で、さつまいもごはんをセットする。落花生はなんと40分も茹でないといけないのだが、毎回それを忘れるので、季節が来るごとに調べてみては新鮮にびっくりする。じっくり茹でられた落花生はほくほくしておいしい。バターピーナッツと大豆のあいだの秋の味。今日はお客さんがほとんど途切れず。夏から秋口にかけては静かなものだったのでやや安心する。今日から元町映画館でひとり出版社・夏葉社の島田潤一郎さんを追ったドキュメンタリー映画『ジュンについて』の上映がはじまるのでそれに合わせてフェアをやっていて、その効果もあるんだろう。夏葉社のファンはみなさん熱心な方ばかりで、上映後のトークを目当てに朝から並ぶお客さんや、県外から来た方もたくさんいる様子だった。大阪から夏葉社トートにTシャツで駆けつけたお客さんに、[おひさまゆうびん舎]さんの展示の様子など見せてもらった。


元町映画館=ドキュメンタリーや旧作も意欲的に上映する元町商店街のミニシアター。
夏葉社=2009年設立の島田潤一郎さんによる出版社。「何度も、読み返される本を。」を掲げ、書籍『さよならのあとで』など詩や文芸のほか本屋や書籍、出版にまつわる随筆なども発行。
『ジュンについて』=映画監督の田野隆太郎が、本作りの背景と共に、島田潤一郎さんと夏葉社を追ったドキュメンタリー映画。
[おひさまゆうびん舎]=姫路にある古書店。絵本や児童書が多めで、夏葉社の書籍など新刊も扱う。


 ちょっとお客さんが途切れたのでもらったあんみつを食べていたら、『ジュンについて』の田野監督が申し訳なさそうに入ってきたのでおやつ中断。お食事中にすいませんと何度も恐縮されるので、いや、大丈夫なんです、おやつなので、あんみつなので、と言う。これからの上映予定のことや、次の映画の構想をすこし教えてもらった。
 島田さんも営業がてら立ち寄ってくださった。つかぬことをお聞きするんですが……と言われたのでなにか踏み込んだ話でもされるのかと思ったら、このあたりでみたらし団子を売っているところってないですかね、という質問で拍子抜けし笑う。お気に入りの店で買いそびれ、それから食べたくてたまらないらしい。あまり思いつかず、[二つ茶屋]にならもしかするとあるかもしれないです、と伝えた。はたして無事手に入れることはできたのだろうか。
 映画は完成時に観せていただいていたのと、用事があったこともあり上映には参加できなかったのだが、後日、夏葉社ファンの母が一人で観に行ったらしい。クレジットに店の名前が出ていたのも含めて感動したと話していた。島田さんは、[本の栞]が開店したばかりでまだ棚もすかすかのたよりない頃から関西に来ると立ち寄ってくれていて、たまたま開業の日付けも同じなので、いつもその存在を心強く思っている。

[二つ茶屋]=神戸元町商店街にある老舗和菓子店。季節の生菓子を中心に扱うほか甘味処も併設する。

 十二軒目は、本の栞。
 家の近所にあれば、ふらっと立ち寄ってしまうようなお店で、全面ガラス張りの間口が素敵だった。年季の入った本棚には古本が並べられ、店の中央にある薄茶色のテーブルには新刊が置かれている。そこには知り合いの編集者である森哲也さん担当の大橋裕之『ゾッキA』『ゾッキB』なども展開されていた。当たり前のことではあるが、東京の出版社の本が神戸で売られていることに感動する。この本もぼくと同じように大移動をして、この場にいるのだ。
(秋峰 善『夏葉社日記』秋月圓)

 かなしんでいる人に、言葉を届けたいというのとはまた違った。むしろ、言葉では全然足りなかった。読まなくても、テーブルのうえに、ベッドの脇に、置いておくだけでいい。そんな本を、ぼくはつくっていきたかった。
(島田潤一郎『あしたから出版社』筑摩書房)

※上映・フェアは終了しています。


店舗情報
神戸・元町
本の栞
  • 電話番号
    080-3855-6606
  • 住所
    神戸市中央区元町通4-6-26 元村ビル1F北
  • 営業時間
    12:00~19:00
  • 定休日
    水・木&不定
  • カード使用
※【連載】栞の栞の過去記事は、ハッシュタグ #栞の栞 をクリック

※この記事は2026年2月号からの転載です。記事に掲載されている店舗情報 (価格、営業時間、定休日など) は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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