CINEMA_HE-100

深掘りすればより面白い!シネマ予習帳

Vol.24『ロストランズ 闇を狩る者』
ダークな世界にどっぷり浸る

映画評論家・春岡勇二がさまざまな角度で作品を掘り下げる連載。
今回は、1月1日(木)公開『ロストランズ 闇を狩る者』深掘りします。
映画館に行く前に予習しよう!

文/春岡勇二

 『グラン・ブルー』(1988年)、『レオン』(1994年)などのフランスの才人、リュック・ベッソン監督の『フィフス・エレメント』(1997年)で、ジャン・ポール・ゴルチエデザインの先鋭的衣装に身を包み、地球を救う美女を演じたミラ・ジョヴォヴィッチを観たのは、もう30年近く前のこと。あの作品で、スケール感のあるSFヒロインのトップの座をつかみ取った彼女は、5年後、ポール・W・S・アンダーソン監督との共働で生み出した『バイオハザード』シリーズ(2002、04、07、10、12、16年)で、その地位を、特にダークな世界観を持つ広大な荒野で、他の追随を許さない不動のものとして君臨し続けた。2026年元日に公開される新作『ロストランズ 闇を狩る者』は、彼女がやはりアンダーソン監督と組んで放つアクション・ダーク・ファンタジー。2025年12月17日に50歳となった彼女が、果たしてどんなキャラクターを造形し、どんなアクションを見せるのか。
 
 原作は『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』などテレビドラマシリーズの原作者として、現代随一のファンタジー作家と称されるジョージ・R・R・マーティンの、初期の傑作小説『In The Lost Lands』。舞台となるのは遠い昔に文明が崩壊した世界。その多くは魔物が住むロストランズとなっていて、人々は一つの都に避難しているが、王家と教会の圧政を受けている。そこに現れるのがミラ演じる謎の魔女グレイ・アリスだ。代価さえ支払えばどんな望みもかなえてくれる、その存在は人々の希望のシンボルとなるが、教会からは異端者として命を狙われる。そんな彼女のもとに、欲望に憑(つ)かれた王妃が訪れある願いを託す。グレイ・アリスは願いをかなえるために百戦錬磨のハンターであり案内人のボイスを雇い、還ってきた者のないロストランズへと向かう……。
 
 瞳を見つめることで人を操る魔女、グレイ・アリスは、ミラが演じるのに遜色ない役どころ。そしてミラもまた、ダーク・ファンタジーのヒロインのクイーンとしてまだまだ健在だった。アクションも跳躍こそいささかおとなしめになったものの、体のキレは衰え知らず、しなやかでかっこ良く相手をぶった斬る。今回、ボイス役で彼女の相棒を務めるのがデイヴ・バウティスタ。世界最大のプロレス団体WWE所属のレスラーとして6度世界王者となり、2020年には殿堂入りも果たした元プロレスラーで、俳優として『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ(2014、17、22、23年)のドラックス役で知られる。本作ではミラと共にプロデューサーも兼任しているだけあって、ミラに劣らないカリスマ性と圧倒的なアクションを見せる。また、ボイス役のふん装や旅する二人が馬を駆っていく姿などアクション映画としてのタッチには、かつてのアメリカ製西部劇へのオマージュがあり、ウエスタンファンもニンマリだ。さらに本作で強い印象を残すのが、敵役の女性死刑執行人を演じるアーリー・ジョヴァー。ジャン・レノ主演の『エンパイア・オブ・ザ・ウルフ』(2005年)で注目されたが、それ以降、日本ではあまり知られることのなかった俳優だけれど、今回ミラを追い詰める敵役として見応えがある。アンダーソン監督は、背景の造形に、自身が好きなルネッサンス期の画家ヒエロニムス・ボスの絵画をイメージしたという。正月早々ダークな世界観にどっぷり浸るのも案外アリでは。

監督・ポール・W・S・アンダーソン

1965年生まれ、イギリス、ニューカッスル・アポン・タイン出身。脚本も手掛けた『ショッピング』(1994年)で監督デビュー。『バイオハザード』シリーズで、主演のミラ・ジョヴォヴィッチと共働。二人の間には3人の子どもがいる。

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ダルタニアンが飛行船で大暴れ
『三銃士/王妃の首飾りとダヴィンチの飛行船』(2011年)
ルイ13世に仕える三銃士と彼らに憧れる青年・ダルタニアンが、当時、驚異の武器だった飛行船をめぐる仏英の争いで奮闘する。両国をてんびんにかける美女怪盗役でミラ・ジョヴォヴィッチも出演。
監督/ポール・W・S・アンダーソン 
出演/ローガン・ラーマン、マシュー・マクファディン、マッツ・ミケルセン、オーランド・ブルーム、クリストフ・ヴァルツ、ミラ・ジョヴォヴィッチ ほか

俳優・ミラ・ジョヴォヴィッチ

1975年生まれ、ウクライナ出身、アメリカ育ち。リュック・ベッソン監督作『フィフス・エレメント』(1997年)で国際的評価を得て以来、ヴィム・ヴェンダース監督作『ミリオンダラー・ホテル』(2000年)など40本以上の作品に出演。最近の作品ではプロデューサーも務める。

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存在を世界に知らしめた出世作
『フィフス・エレメント』(1997年)
2214年、地球に5000年に1度の危機が迫るなか、その命運は元特殊部隊員とオレンジ色の髪を持つ宇宙人の女性リー・ルーに託された。元特殊部隊員を演じるのはブルース・ウィリス。
監督/リュック・ベッソン
出演/ブルース・ウィリス、ゲイリー・オールドマン、イアン・ホルム、ミラ・ジョヴォヴィッチ、クリス・タッカー、マチュー・カソヴィッツ ほか

俳優・デイヴ・バウティスタ

1969年生まれ、アメリカ・ワシントンD.C.出身。プロレス団体・WWE所属の元プロレスラーで6度の世界王者に輝く。俳優転身後は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズでドラックスを演じ、同じ役で『アベンジャーズ』(2012、15、18、19年)シリーズにも出演。

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ボンドを襲う巨漢の殺し屋
『007 スペクター』(2015年)
007シリーズ第24作で、ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じた4作目。名優、クリストフ・ヴァルツが秘密組織スペクターのボスを演じ、バウティスタはその忠実な殺し屋を演じた。
監督/サム・メンデス
出演/ダニエル・クレイグ、クリストフ・ヴァルツ、レイフ・ファインズ、レア・セドゥ、モニカ・ベルッチ、デイヴ・バウティスタ ほか

俳優・アーリー・ジョヴァー

1971年生まれ、スペイン領・メリリャ出身。マドリードでダンスを学び、15歳で渡米しマーサ・グラハムに師事。ウェズリー・スナイプス主演作『ブレイド』(1998年)で映画デビュー。以後、デビッド・フィンチャー監督作『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)などに出演。

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事件の鍵を握る女を好演
『エンパイア・オブ・ザ・ウルフ』 (2005年)
パリ10区のトルコ人街で起こった連続殺人の謎を追う、ジャン・レノ演じるはみ出し刑事の活躍を描くサスペンス。ジョヴァーは高級官僚の妻で記憶障害の症状を持つ女を演じて注目された。
監督/クリス・ナオン
出演/ジャン・レノ、アーリー・ジョヴァー、ジョスラン・キヴラン、ディディエ・ソーヴグラン、フィリップ・バス、ラウラ・モランテ ほか

MOVIE INFO.





『ロストランズ 闇を狩る者』2026年1月1日(木)公開


監督・脚本・製作/ポール・W・S・アンダーソン 
出演/ミラ・ジョヴォヴィッチ、
デイヴ・バウティスタ、アーリー・ジョヴァー ほか 
上映館/T・ジョイ京都、大阪ステーションシティシネマ、109シネマズHAT神戸 ほか


©2024 Constantin Film Produktion GmbH, Spark Productions AG

文/春岡勇二
映画評論家、大阪芸術大学客員教授。キネマ旬報の邦画ベストテンの選考を今年も務めた。この仕事も20年を超えた。

※この記事は2026年2月号からの転載です。記事に掲載の情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認ください。

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