神様にはなれなかったけど、
飾らない言葉で今を叫びたい
2023年に解散したBiSHのメンバーであるアユニ・Dによるバンドプロジェクト・PEDRO。「昔の方がよかったとか舐めんなよ」という痛烈なキャッチコピーを掲げた最新作『ちっぽけな夜明け』を9月にリリース。グループの解散、独り立ち。そしてPEDROとして歩んだ2年。もがきながら過去と現在に向き合った彼女が放つのは、決してちっぽけではない唯一無二の光だ。

見落としていた原点と、
今の自分に目を向けた作品に
編集部(以下・編) 最新作の『ちっぽけな夜明け』はどのような思いで作った作品でしょうか。
アユニ・D(以下・ア) これまでのバンド活動は、脇目も振らずにずっと全力疾走で駆け抜けてきたので、その分見落としてきたものや見て見ぬふりをしてきたものがすごく多かったと、今回の制作を始めたときに気が付いて。それにちゃんと目を向けようと自分に課した部分を作品に落とし込んだ結果、「原点回帰」をテーマにした一枚に仕上がりました。
編 見落としてきたことは、例えばどういったことがありましたか?
ア 家族や身近にいてくれる人の存在など、本当にたくさんのことがあります。これまでBiSHとしてアイドル活動をずっとしてきたときは、大きな舞台を用意してもらって、そこに挑むためにただがむしゃらに走ってきたけど、本当の自分がどこにあるのか分からないっていう感覚がずっとありました。だからこそ、気持ちを言語化して、本当の自分とすれ違いがないよう言葉を音にのせていきました。
編 いろんな経験を重ねてきて、今の自分に素直に向き合えた作品になったんですね。
ア 「自分に向き合う」っていう言葉に違和感というか、「自分は常に自分なんだから向き合っているはずじゃん」と思い込んでいたんです。でも、改めて考えてみると、今の自分がやりたいこととか、何を一番伝えたいのかってことを考えてこなかったんだと思って。だからこそ、新しい作品を作る際、何を音楽で表現したらいいか分からなくなってしまったんです。そんななか、9年前に初めて作詞した『本当本気』っていう曲と久しぶりに向き合ってみたんです。ずっと小っ恥ずかしくて聴けてなかったんですが……。
編 久しぶりに自身の曲を聴いてみてどうでした?
ア 変わってない部分も大きかったんですけど、今の自分と重なる部分もありました。当時は右も左も分からないけど、とにかくすごく大きな夢を抱いてて、「神になるんだ」っていう歌詞も素直に使えていました。
編 今作の1曲目『1999』では、その部分の歌詞をセルフサンプリングされていますよね。
ア 大人になって、昔のように素直な気持ちを使うのがすごく怖くなってしまった感覚もあるけど、周りの人に支えられて、今の自分にしか歌えないこともあるって気づかせてもらいました。『1999』のサビ部分の「神様なんかにはなれなかったけど、ありのままの自分で叫び続けるよ」っていう歌詞は、過去を踏まえて今の自分が歌いたいことを表現できたかなって思います。

その時の悩みや葛藤が現れる
ライブこそ、人生の生きがい
編 グループ解散後、仕事やライフスタイルはどのような変化がありましたか?
ア 自分の時間に余裕ができたので、集中してベースやバンドに向き合う時間が増えました。あとは、BiSHのときは生活をおざなりにしていた部分もあったので、今は朝起きたらまずカーテンをあけて、家の掃除もして、音楽制作も励んで、友達にも会えて。すごく生活が改善されたとは思います。
編 つまり、丁寧な暮らしに。
ア いや、丁寧ではないんですけど(笑)。でも、自分の世話は自分でしなきゃって。それこそサポートのメンバーとコミュニケーションがちゃんと取れるようになったのもこの数カ月の話ですし。
編 個人としてもバンドとしても良い状態になっているんですね。
ア 良くも悪くも、歌詞やライブパフォーマンスでのたたずまいにも、その時の自分が全部反映されるタイプなんです。なので、生活のリズムができたことで磨かれた人間性の部分が、ライブにも反映されているのかなと。
編 ライブといえば、今回の全国ツアーに向けていかがですか。
ア 人生で何が一番楽しいかって考えたときに、本当にライブが楽しくて。そのために曲も作るし、暮らしも営めるし。私はどれだけ憑依(ひょうい)させても、今悩んでることだったり葛藤していることが如実に舞台上に現れるので、そこはこれからも赤裸々に出していきたいです。あとはやっぱり、今回の作品で音楽にした情熱たちを、胸を張って伝えられる人間になりたい。来てくれた人には何か受け取ってもらえたらうれしいなって思ってます。
編 アユニさんの変化がステージに現れるって、観ている側からしたらとてもわくわくすることですね。
ア 最近はメンバーそれぞれが自分の役割を自然と担うようになってきて、バンドとしてバランスがすごくよくなってきたと思ってます。もし雰囲気が全然変わったとしても、それも今の私。大阪はファイナルなので、仕上がってると期待していてください!
編 最後に、そんなツアーファイナルとなる大阪のこれまでの思い出の場所といえば?
ア アメ村にある[びくドン(=びっくりドンキー)]はグループ時代、遠征やライブ終わりに一番よく行っていた思い出のお店です。「ブロッコリーの箱舟」は絶対注文します! 逆にそっちがメインってくらい好きかもです!(笑)
Profile
PEDRO アユニ・D
2023年に解散した“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバーであるアユニ・Dがベースボーカルに加え、作詞・作曲までを手がけるバンドプロジェクト。魂を削るように熱を発するライブパフォーマンスや、唯一無二のキャラクターと独特の世界観や感性が大きな支持を集める注目のアーティスト。
STAGE INFORMATION
『I am PEDRO TOUR』12月14日(日)

原点回帰を掲げ、飾らない今の言葉を吐き出した最新作『ちっぽけな夜明け』のリリースを経て、全国19公演のバンドツアーを現在開催中。「今のPEDROが一番いい状態であることを全国のライブハウスで証明する」とアユニ・Dの力強い宣言とツアータイトルのごとく、PEDROというバンドの新たな自己紹介となること間違いなし。
会場/大阪 GORILLA HALL
時間/16:00開場/17:00開演
料金/6,500円(ドリンク代別)
公式HP/PEDROオフィシャルサイト
写真/大西悠生 取材・文/関戸ナオヒロ
※この記事は2026年1月号からの転載です。記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。
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