このアーティスト、要チェック!
今月のNEWSな人・西岡 潔
作品制作でも東吉野での活動も、
鍵となる言葉は「マトマニ」。


西岡 潔(にしおか きよし)1976年生まれ。2015年から奈良・東吉野へ拠点を移し、2023年スタジオギャラリー「マトマニスタジオ」を開設。2025年11月には3回目となる「はじまりの東吉野オープンアトリエ」を開催、39組のクリエイターが参加した。Instagram @nishioka_kiyoshi
SAVVYでも神社や建築、絶景などを中心に撮影をし、また、ビルにまつわるシブい著作を連発しているBMC(ビルマニアカフェ。ビルの魅力を伝える5人組ユニット)との活動でも撮影を担当している西岡潔さん。商業カメラマンとして大活躍中だが、近年はアート作品としての作品発表も活発に。
「作品制作は、カメラマンとしての初仕事よりも前から実は始めていて、初個展も2001年。もともとは服飾デザインの勉強をしていたけど、海外で放浪してたときに撮影した自然や人物の写真を発表するところから今の道に転向したような形で、そこからだんだん商業的な仕事が増えていって。とはいえ、自分の感じたものもいかに加えるかという気持ちで仕事を続けてきました。自然でも建築でも同じように向き合って撮ってきたつもりだけど、建築はそれを造った人の意図をくむために頭を切り替える必要はあって。決して雰囲気だけでは撮ってないかな」
目で見るのとはまた違ったクローズアップや、俯瞰(ふかん)的でいて思いがけないところまで見せてくれる西岡さんのカメラ力は、ぜひBMCの最新作『特薦いいビル 千日前味園ビル』(大福書林)で見ていただくとして、今日は作品の話。今年は『KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭』の公募型アワード「KG+SELECT」ファイナリストにも選出され、数々の作品シリーズにオブジェクトまでを持ち込んだインスタレーション展示を行った。その中心にあったのが、写真にドローイングを施した作品群だ。
「写真の上に絵を描きたいという欲求は昔からあったけど、なかなかうまくいかなくて。それが昨年、撮った写真をフィルムにインクジェットでプリントして、それを薬剤を使って転写したものに描くというやり方なら、写真でもなく絵のようでもない、ちょうどいいなじみ具合になることが分かって、やっと作品として見せられるものになりました」
長年、「マトマニ」という言葉を掲げて制作を続ける中で、境界や際、間(あわい)への関心から写真へのドローイングという行為も生まれたという西岡さん。「KG+SELECT」では過去の撮影写真に描いていたが、12月の個展ではそのために撮り下ろした写真を使った新作を発表。
「普段、自分が暮らしている東吉野では植物の力が本当にすごくて。畑でも家屋でも人の手が入らないとあっという間に覆い尽くしてしまう。その様子に何かしらの意志を感じるくらいで、“モンスター”と題してそれを撮ってます。自分が『際』として表現したいことにも合っていたので」
自宅とスタジオを構える奈良・東吉野では、多くの作り手やクリエーターによる移住が相次いでいて、この11月には西岡さん自ら発起人となり、「オープンアトリエ」イベントも実施。西岡さんが村と移住者の間、山間地域と都心部の間をつなぐ存在にもなっている。言ってみれば、実生活においても「マトマニ」実践中なのだ。
「東吉野で作品を発表することも予定してるけど、こっちで制作したものを[Calo bookshop and cafe]のような街中で見てもらうことを大切にしたくて。やっぱりそこに意味があると思ってるので」


ここでチェック!
企画展:西岡 潔『Monster Nation 潜むものの国』
/『特薦いいビル 千日前味園ビル』刊行記念
「味園ビル」建築は宿す
期間:12月9日(火)~12月27日(土) ※最終日~17:00
場所:Calo Bookshop and Cafe
- 電話番号なし
- 住所大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル5F
- 営業時間12:00 ~ 19:00(土~18:00)
- 定休日日・月
- 料金なし
- アクセスOsaka Metro肥後橋駅から徒歩すぐ
取材・文/竹内 厚 写真/西岡 潔








