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今月のイチオシ作品を、20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けるフリーライター・吉永美和子が5作品をピックアップ!

文/吉永美和子
20年以上関西の演劇シーンを見つめ続けているフリーライター。地元の小劇団から伝統芸能まで、ジャンルを問わずに観劇している。趣味は旅行といろんなお茶をたしなむこと。

※チケットの販売状況、当日券については各HPやSNS等で最新の情報をご確認ください。

<今月の“超”劇推し!>
☑佐々木蔵之介ひとり芝居『ヨナ-Jonah』

ルーマニアの巨匠と作り上げた、
国境を超える一人芝居

ドラマや映画で主演作品が相次ぐ一方、自らのルーツである演劇にも精力的に取り組んでいる佐々木蔵之介。今年ルーマニアの劇場とのコラボレーションで制作され、同国の「ウォーク・オブ・フェイム」に選ばれるほど高く評価された一人芝居が、日本でも上演される。ヨナは旧約聖書に登場する預言者で、神の命令に背いたために鯨に飲み込まれ、三日後に脱出して生還する。その逸話を、絶望的な状況下で人間はいかに生き抜いていくか? という、普遍的な物語に変換した戯曲だ。さらにルーマニア演劇の巨匠で、佐々木とは2度タッグを組んだことがあるシルヴィウ・プルカレーテが、不穏な空気感の中にもユーモアをたたえた、独特の世界に演出。佐々木は怪しくもキュートだけど、間違いなく私たちと等身大の存在であるヨナを体現し、初演は東欧各地で絶賛された。
 「ルーマニアで稽古したことで、ここでしかできなかったような東欧の香りがある作品になりました。苦難の中でも笑いながら希望を持つという、楽しい舞台になったと思います」と語る佐々木。不条理な状況から脱出するために、あの手この手でもがくヨナを演じたことで、また一つ存在感を増した佐々木の勇姿を、ぜひその目に焼き付けよう。

佐々木蔵之介ひとり芝居『ヨナ-Jonah』
日程/11月22日(土)~24日(月・祝)
場所/COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
作/マリン・ソレスク 翻訳・修辞/ドリアン助川 
演出/シルヴィウ・プルカレーテ 出演/佐々木蔵之介
料金/一般11,500円(全席指定)
チケット情報/https://kyodo-osaka.co.jp/
問い合わせ/0570-200-888(キョードーインフォメーション)

☑KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』

妄想に妄想を重ねた、
あの名作の「最後のリメイク」

自分を騎士と思い込んだ老人が旅に出て、各地で珍騒動を巻き起こす古典小説『ドン・キホーテ』。多種多彩なコメディーに挑む劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の新作は、この冒険奇談に「人類最後のリメイク」(KERA談)をしたコメディーだ。ドン・キホーテの物語と、とある病院での出来事が並行する多重構造の舞台。笑いの中に人間の業のようなものが浮かび上がるストーリーを、映像や舞台美術や生演奏を効果的に用いた演出で見せる、まさに手だれの技を堪能して。ドン・キホーテ役は、KERAからの信頼が厚い大倉孝二。物語の鍵を握る、元宝塚歌劇団雪組トップ娘役の咲妃みゆの歌唱にも期待だ。

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』

日程/11月1日(土)~3日(月・祝)
場所/SkyシアターMBS
作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 
出演/大倉孝二、咲妃みゆ、山西 惇、音尾琢真、矢崎 広、須賀健太、高橋惠子 ほか
料金/一般11,500円(全席指定)ほか
チケット情報/https://stm-mle.jp/
問い合わせ/06-6676-8466(SkyシアターMBS)

☑EPOCH MAN『我ら宇宙の塵』

©小岩井ハナ

小劇場から生まれた
宇宙的な傑作が、大阪初登場

京都出身の俳優・小沢道成が主宰するユニットEPOCH MAN。2023年の初演が「第31回読売演劇大賞」の最優秀女優賞(池谷のぶえ)など数々の部門で受賞し、さらに今年行われたロンドン公演も「現代演劇の最高峰」とまで評された舞台が、初めて大阪で上演される。事故で死んだ父親を探す少年と、その少年を追う母親の物語を、パペットと舞台一面を覆うLEDディスプレーの映像を組み合わせた、ファンタジックなビジュアルで見せていく。まさに宇宙空間や、誰かの頭の中に入り込んだような風景に没入できると同時に「人は死んだらどこに行くのか」という疑問の答えと、そこから立ち直るすべを見つけ出せるかもしれない。

EPOCH MAN『我ら宇宙の塵』
日程/11月6日(木)~10日(月)
場所/扇町ミュージアムキューブ CUBE01
脚本・演出・美術・出演/小沢道成 
出演/池谷のぶえ、渡邊りょう、異儀田夏葉、ぎたろー
料金/A席6,500円(全席指定) ほか
チケット情報/https://epochman.com/
問い合わせ/0570-200-888(キョードーインフォメーション)

☑ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団『Sweet Mambo』

©Karl-Heinz Krauskopf

ダンスの概念を変えた
振付家の作品、32年ぶりに京都へ

ダンスと演劇を融合した「タンツテアター」のスタイルで、人間の喜怒哀楽を舞台の上に全て注ぎ込んだかのようなダンス作品を生み出してきた、ドイツの振付家ピナ・バウシュ。2009年にピナが逝去した後も、彼女の作品を上演し続ける「ヴッパタール舞踊団」が、実に32年ぶりに京都で公演を行う。『Sweet Mambo』はピナの最晩年の作品で、初演から17年の時を経ての日本初上演。ダンサーたちは舞台に広がる大きなカーテンを巧みに使って、シュールでドリーミーで美しい光景を、次々に繰り広げる。音楽に合わせて体を動かすだけではない、それ以上の可能性を秘めるダンスを追求した、ピナの魂に今からでも出合ってほしい。

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団『Sweet Mambo』
日程/11月21日(金)・22日(土)
場所/ロームシアター京都 メインホール
演出・振付/ピナ・バウシュ 出演/ヴッパタール舞踊団
料金/S席12,000円(全席指定) ほか
チケット情報/https://rohmtheatrekyoto.jp/
問い合わせ/075-746-3201(ロームシアター京都チケットカウンター)

<今週の劇レア!>
☑ミュージカル『エリザベート』

完売注意につき前売り券を要CHECK! 11月2日(日)発売

愛と死に彩られた王妃の生涯を描く、必見の舞台

オーストリア=ハンガリー帝国の皇后・エリザベートを主役にしたミュージカルの、3年ぶりの上演が決定。類まれな美貌と自由な魂を持つエリザベートが、王家のしきたりや、黄泉の帝王・トートの「死の誘惑」に抵抗しながら、自分らしさを貫こうとするドラマチックな人生を、クラシカルな楽曲の数々にのせて描いていく。19世紀末の欧州の複雑な社会情勢、現在にも通じる家族の不和、そして「愛した時は死ぬ時」というトートとのスリリングな関係など、誰もがきっとどこかに引かれるテーマを持つ、一生に一度は見ておきたい名作。望海風斗と明日海りおが、Wキャストとしていずれも初めてエリザベート役に挑戦するのも見どころだ。

ミュージカル『エリザベート』
日程/12月29日(月)~2026年1月10日(土)
場所/梅田芸術劇場メインホール
脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ 
音楽・編曲/シルヴェスター・リーヴァイ 
演出・訳詞/小池修一郎 
出演/望海風斗・明日海りお(Wキャスト)、
古川雄大・山崎育三郎(Wキャスト) ほか
料金/S席19,000円(全席指定) ほか※土・日・祝は+500円
チケット情報/https://www.umegei.com/ 11月2日(日)発売
問い合わせ/0570-077-039(梅田芸術劇場)

※チケットの販売状況、当日券については各HPやSNS等で最新の情報をご確認ください。

※この記事は2025年12月号からの転載です。記事に掲載されている情報は掲載時のもので、記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。

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SAVVY1月号「関西の手みやげ」
発売日:2025年11月21日(金)定 価:900円(税込)