このアーティスト、要チェック!
今月のNEWSな人・鈴木なるみ
俯瞰して世界を見渡してみると、実はそこにはいろんな人がいて。


鈴木なるみ 2019年大阪教育大学大学院芸術文化専攻修了。西元町[ギャラリー プチポワン]での個展は定期的に開催していて、今回で5回目。 Instagram @greatkonbou
2019年からフリーのイラストレーターとして活躍する鈴木なるみさん。とりわけ特徴的なのは広い世界を俯瞰(ふかん)的に描いた作品だ。「学生時代に描いてたのはもっと人物にフォーカスして、ポーズとかも意識して描いてましたが、だんだん人が小さく群衆のようになっていって。私はひと目で全体を見たい、世界を把握したいという気持ちがどこかにあって、〝丘の上から街を見る〟みたいなことがすごく好きなんですね。そんな中で何かしてる人を観察したりするのも楽しくて」
俯瞰的に世界を描くという点では、絵本シリーズ『ウォーリーをさがせ!』や、画家の安野光雅の名前なども挙げてくれたが、たしかにそうした絵には全体を見渡す楽しさと、細部をクローズアップして見る喜びの両方がある。加えて、鈴木さんのイラストならではの注目ポイントも。
「構図の面白さやカラフルさというのもありますけど、それぞれの人や動物の振る舞いに注目してもらえたらと思っています。実はかなり変なことをしているのも多くて、なぜそこにこれがいるんだろうとか、そういう部分を探してもらえたら。やっぱり、ただ、かわいいだけじゃなくて、ちょっと変なところも見つけてほしいという気持ちがあります」
よく見ると鬼やオバケのようなキャラクターがいたり、動物園で動物の仮装をして観覧している人がいたり、海や雪から逆さまの足だけが突き出した『犬神家の一族』さながらの様子を描いたり。やり過ぎると奇妙な世界ともなりそうなところ、よくよく目を凝らして見ると「ちょっと変」というバランスを絶妙にキープ。なにより鈴木さん自身が楽しみながら描いてるのが伝わってくる。
「いつまでも描けてしまうので、〝もうここで描くのをやめようと思ってから、気づけば3時間経ってた〟とかは普通にあります(笑)」
個展ではこうした俯瞰で描いた大作イラスト数点とともに、その一部を切り出したような作品も展示。なお、次の個展のテーマは“贈りもの”。
「個展ごとにテーマを設けていて、これまでにもいろんな動物が描きたくて動物園にしたり、工場のラインで物ができていく過程を描いたりしました。けど、やっぱり描くのに時間はどうしてもかかります。この俯瞰的な感じだけでやっていくのは体力が持たないだろうから、他のテイストもやったほうがいいのではとアドバイスを受けることもありますね」
イラストレーションの仕事と同時進行で進める展覧会の制作。加えてさまざまなグッズ展開も行っていて、いまどきのイラストレーターは本当に大変だと感じる。
「私は学生時代にデザインの勉強をしていたのもあって、その経験が今に生きてます。ただ、私が物が好きなのでどんどんグッズの種類が増えて、在庫管理だけは大変で……」
個展では粘土による小さな立体作品も登場。広々とした俯瞰的なイラストを起点にして、その作品世界が広がっていくのも楽しいところだ。


ここでチェック!
企画展:鈴木なるみ個展『okurimono』
期間:10月28日(火)~11月2日(日)
場所:ギャラリー プチポワン
- 電話番号090-9111-6540
- 住所神戸市中央区北長狭通5-8-4
- 営業時間12:00~18:00(11月2日は~17:00)
- 定休日なし
- 料金無料
- アクセス各線元町駅から徒歩5分
取材・文/竹内 厚 写真/ 西島 渚







