淡路島での撮影は、貴重な経験となりました
人が生きるために最も大切なのが”食“。それらを支える日本の第一次産業の素晴らしさ、豊かさを映画を通して応援したいという作り手の思いで始まった『種まく旅人』シリーズ。5作目となる今作は2作目ぶりとなる淡路島を舞台に、日本酒造りと兵庫県の酒米、山田錦にフォーカスを当てた物語。主演を務める菊川 怜さんが語る作品への思いとは。
5年ぶりの映画撮影は、
暑さとの戦いでした!
編集部(以下・編) 15年ぶりの映画出演となりますが、いかがでしたか?
菊川怜(以下・菊) 本作の舞台は淡路島ということで、実在の千年一酒造という酒蔵で撮影させていただきました。初めて訪れた淡路島は本当にすてきな場所で、観光地でもあり、住んでらっしゃる人たちはとても地元を愛して暮らしてらっしゃって、さらに淡路島を盛り上げようとしてらしたのが印象的でした。撮影中は、千年一酒造さんや淡路市役所、(兵庫県立公園)あわじ花さじきと、限られていたんですが、移動する時に海がしっかり見えて、とにかく美しかったです。そしてなにより、淡路島っていう名前の響きがいいなって思うし、かっこよくないですか(笑)? 撮影中、あ、私、今淡路島にいるんだ! って、ずっと思ってました。この作品で、淡路島という土地に出合える機会を与えていただけたのがうれしいです。
編 『古事記』にも描かれている伊弉諾尊(イザナギノミコト)と伊弉冉尊(イザナミノミコト)が協力して日本で最初に作った島ですからね。
菊 島根県の出雲だと思ってました。なるほど! そういえば、私は行けてないんですけど、作中に登場する神社も雰囲気がとてもすてきでした。
編 [伊弉諾神宮]ですね。日本最古の宮と呼ばれている場所です。
菊 改めて知ることができてうれしいです。また行ってみたくなりますね。
編 撮影は2024年の9月ということで、酒米の仕込みの季節ではないですが、酒蔵で再現してくださったそうですね。
菊 そうなんです。実際の日本酒の仕込みの時季を避け9月だったんですが、仕込みは本来は冬の時期なので、撮影現場は、とにかく暑さとの戦いでしたね(笑)。特に日本酒のこうじ菌を仕込む麹室のシーンは、温度も38度に保たれているので、外以上に暑かったです。でも、酒米にこうじ菌を振りかける時に、本当にふわっと細かいパウダーのような菌が酒米に降りかかるはかない感じと美しさは、とても印象に残っていて、日本酒の原点を見たような気持ちで感動しました。私は杜氏(とうじ)の役ではなかったのでそこまで仕込みの手伝いをすることはなかったのですが、共演した清水くるみさんをはじめ、職人役の皆さんは実際に杜氏さんに工程を学んで、重い洗い米を運んだりという作業を再現していて、本当に大変そうで、日本酒造りの苦労を改めて感じました。
日本酒造りの工程は
知るほどに苦労の連続でした
編 今回は農水省の地域調査官の神崎理恵という役を通して、日本酒造りを目の当たりにしていかがでしたか?
菊 今回は前もって千年一酒造さんに見学に行ったり、映像や資料で日本酒造りの工程を勉強していたんですが、実際に作業風景を現場で見ると、一つ一つの作業がとても丁寧で繊細で、どの工程も手が込んでいて、いろんな人の手を介して温度管理が行われ、風味の基準をクリアしながら、最終的に私たちがいただける日本酒ができてるんだと、物作りの神髄を感じました。第一産業を応援するというテーマを受け継いだこの『種まく旅人』シリーズに携わらせてもらった意義があったなと思いました。
編 篠原監督や共演者の方たちなど初めての方も多かったと思いますが、一緒に撮影されていて印象に残っていることはありますか?
菊 篠原監督はすごく丁寧に作品を作られる方だなと思いました。気になる点があっても、分かりやすく優しく指示を出してくださいましたし、限られた撮影期間の中で、きちんと監督が描いている絵作りをされていました。それが結果、映像にも見事に反映されているなって思いましたね。出演者では升(毅)さん以外は初めてでした。久しぶりの映画の現場でしたので、何度か共演させていただいている升さんがいてくださって、頼もしく安心できる存在でした。
編 菊川さん演じる神崎は日本酒オタクと呼ばれているキャラクターでしたが、撮影中、淡路島で日本酒は飲まれましたか?
菊 お酒は好きなんですが、実は撮影期間中は毎日の撮影やせりふを覚えなくてはいけなかったので余裕がなく、飲めなくて……。
編 ちなみに、プライベートでお酒のアテとして”コレ“と決めているものはありますか?
菊 お刺し身ですね! 淡路島では[友明丸]というお店でお刺し身の定食を食べたんですけど、新鮮で本当においしくて。その時も日本酒を飲めないのが悔しかったので、また淡路島へ伺った時は、絶対にお酒とお刺し身の組み合わせで楽しみたいと思っています(笑)。
Profile
菊川 怜
REI KIKUKAWA
1978年、埼玉県出身。1998年、ファッション誌『Ray』専属モデルとしてデビュー。同年9月「’99年東レキャンペーンガール」に選出され、テレビドラマ『危険な関係』で女優デビューを果たす。情報番組のコメンテーターとしても活躍。
MOVIE INFORMATION
『種まく旅人 醪のささやき』
10月10日(金)公開
淡路島の老舗酒蔵へ視察に訪れた農林水産省の神崎理恵は、古き手法を守る蔵元の父親と、新しい手法を取り入れようとする息子の軋轢(あつれき)を知る。その姿を見て解決策を探ろうと、神崎は住み込みで手伝うことにするが……。
監督/篠原哲雄
出演/菊川 怜、金子隼也、清水くるみ、朝井大智、山口いづみ、たかお 鷹、白石加代子、升 毅、永島敏行 ほか
上映館/大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ 二条、TOHOシネマズ西宮OSほか
[映画『種まく旅人 〜醪のささやき~』公式サイト]
写真/コーダマサヒロ 取材・文/仲谷暢之
※この記事は2025年11月号からの転載です。記事をご覧になったタイミングでは変更となっている可能性があります。最新情報をご確認の上お出かけください。